【報告ブログ】SDGsカンファレンス「誰一人取り残さない」ための気候変動対策②

Bookmark this on Google Bookmarks
はてなブックマーク - 【報告ブログ】SDGsカンファレンス「誰一人取り残さない」ための気候変動対策②
このエントリーをはてなブックマークに追加

第一部 講演 気候変動問題の「現状」と「対策」

パネリストの4方からそれぞれ貴重なお話を頂戴した。

<パリ協定のルールと日本の政策>

WWFジャパン 山岸尚之氏

DSC_0430


野生生物の保護をメインに世界100か国で活動するWWFから、山岸氏をお迎えした。日本のオフィスで気候変動問題を専門に活動されているという。

なぜ温暖化、気候変動問題がSDGsに関わってくるのか。2つポイントがあると山岸氏は話す。

まず1つ目として、気候変動は最初に弱者を襲う。温暖化によって感染症、干ばつによって食糧不足、水不足が起こる。そして温暖化の原因はCO2の排出であり、それは化石燃料を燃やすことが原因である。化石燃料を燃やすのはエネルギーを大量に使うためであり、エネルギーを大量に使うことができるのは裕福だから。つまり気候変動の原因を作っているのは先進国であるにも関わらずその被害をこうむっているのは途上国の
人々である。原因と結果の不平等を解決しなければいけない。

 

そして、2つ目として、どういうエネルギーを使うか考えることは、どういう社会を作りたいか考えることである。持続可能な社会はどういう社会かを問い直さなければいけない。世界ではパリ協定をベースに活動が続けられている。パリ協定とは世界で温暖化に取り組もうという国際的に合意されたルールで、ほぼ全部の国190か国以上が合意した。これは大事な点。アメリカのトランプ大統領が脱退すると宣言したことが話題となった。パリ協定の中では世界平均気温の上昇を2℃以内に収めたいとしている。できれば1.5℃。これを実行しようとすると今世紀後半以降化石燃料などは使えない。これを190か国が合意しているのはすごい事。今から家や工場を作ることは今世紀後半に残るものなので、今から作るものは化石燃料を使わない工夫をしなければいけない(化石燃料を使わない街づくり)。2015年にパリ協定が出来、2020年から本格的に稼働する。今はルールブック(細かいところ)を詰める作業を行っている。

こういった流れがある中で、山岸氏は国際社会の盛り上がりと日本のとの大きな差を感じているという。世界の経済リーダーが集まるダボス会議などでは気候変動の問題が中心で、グローバルリスク報告書でも気候変動はトップに来る問題。しかし日本では気候変動の問題はほとんど報道されない。世界の大きな潮流と、日本の間には大きなギャップがある。パリ協定まで、温暖化問題は「やらなければならないもの」だったが、最近はビジネスの人や自治会の人が率先してやりたいと言うようになってきたという。トランプ大統領の宣言を受け国際会議のアメリカ代表団の規模が小さくなったのに際し、カリフォルニアを中心とした自治体やApple等の企業が代表として積極的に名乗りをあげた。これは環境配慮の考えに加え、ビジネス戦略として気候変動問題に積極的に取り組んでいる方が絶対に有利だと考えているから。先に動けば、ルールを作ることが出来る。実はパリ協定の目標と今現実各国が掲げている目標を比べると大きな差があるが、同協定はそれも見越して作られている。パリ協定加盟国は5年ごとに目標を改善し、次の目標は前の目標より良いものでなければいけない。これによって理想と現実の差を少しずつ埋めていこうという考えだ。

先進国と途上国の間に対立があり、パリ協定が始動する2020年までに何をするかで国同士がもっと頑張れよと指さし合いをしている現状がある。先進国は途上国のモデルとなるような取り組みをしていかなくてはならないが、日本はむしろ逆行した動きをしている。3種類の化石燃料(石炭・石油・天然ガス)で石炭は一番CO2を排出するにも関わらず、過去20年で排出量は3倍に増えている状態。そしてさらに国内に石炭火力発電所建設計画が40基ほどあり、使用量が今後も増える可能性がある。全ての国の取り組みが足りていない中で、日本は今のまま火力発電所を作り続けることで2030年に達成しようとしている目標をオーバーしてしまう。日本が石炭を推進する理由としては、安価で輸入しやすい(オーストラリア等)ことや、日本の世界に誇る技術の象徴として輸出したいといったことがある。他の国に比べても額が大きい。日本は石炭をインフラ輸出戦略として推進しており、昨年の気候変動に関する国連会議でこれを発表し、バッシングを受けたことも。しかし日本の技術を使って石炭発電所を造っても、CO2排出量は50億トンで、目標の19憶トンをはるかに超えてしまう。弱者を救おうと思ってもこの技術は役に立たないのだ。このような技術に本当に投資すべきか?ということが国内でも国際的にも問われている。SDGsを解決するというところからも避けては通れない問題だ、と山岸氏は講演を締めくくった。

ホームページ:https://www.wwf.or.jp/

 

<気候難民問題の影響と責任>

国際環境NGO FoE Japan 深草 亜悠美 氏

DSC_0443

FoE Japanは長年日本の公的資金の流れを監視してきた団体である。発展途上国に対し日本からはODAを使って開発を進めるわけだが、中には現地住民の声を無視した開発や環境破壊を引き起こすものがある。そういった観点から、日本のプロジェクトをモニタリングしている。今回は、その一つ、インドネシア西ジャワ州にあるチレボン石炭火力発電所を例に、日本が輸出している石炭火力の案件が現場で何を引き起こしているのかについてを講演していただいた。

 

山岸の講演でも述べられていたように、日本は国策として石炭火力発電所を輸出している。2012年から操業しているチレボン火力発電所1号基は、丸紅から出資、JBICから融資されている。このJBICというのは、日本政府が100%出資している、つまり国民の税金を含む公的資金を使っている国際銀行である。拡張案件である2号基も、JBICや三大メガバンクが融資している。

この事業には、大きく二つの問題が生じている。一つは大気汚染、もう一つは住民の生計手段の問題だ。発電所立地に際して、石炭を輸入するために海岸線を整備するわけだが、そこでは小規模でも漁業を営んで暮らしている人がいる。発電所のための土地収用の過程において、そういった漁業民の人達は生計手段を失ってしまった。本来は、必ず生計回復手段や移転計画が作成されるが、それら含む補償が十分になされていないのが現状である。JBICが融資する際、環境・社会配慮ガイドラインにのっとって、環境破壊が起こらないか、起こるとしたら適切な対策が取られているか、先住民族がその地域にいれば、彼らの権利は守られているかなど確認して融資決定する。FoE Japanは、JBICがそのガイドラインに違反しているのではないかと訴えている。

こういった事業実施の際、インドネシア政府は環境許認可を出す。実は、この許認可が不正に出されているのではないかと住民の方は裁判を起こしたことがある。2017年4月19日、地裁で住民側は見事に勝訴した。しかし判決前日に、JBICは融資することを決定した。提訴はずっと前に行われたのでJBICも判決日を知っているはずだし、国会の審議でもその判決に従うといったことが話されていたが、JBICはその前日に判断したのである。これは住民の声を無視しており、ガイドライン違反であるとしてFoEは訴えている。国際的にも非難の声が浴びせられる事件となった。

発電所から飛んでくる煤塵が指についている写真。塩を手ですくっている写真。煤塵の影響で近くの白い塩田の質が下がり、売り上げが下がったそうだ。

日本が推進する高効率石炭火力発電所はどれほど高効率なのか。亜臨界:約900g/kWh,超臨界:850g/kWh,超超臨界:800g/kWhと種類があるわけだが、超超臨界のものであっても、温室効果ガスの量は石油や天然ガスを燃料とする火力発電から出る量を上回る。JBIC支援の海外石炭火力発電所と日本の発電所の環境対策技術を比較してみると驚くべきことが発覚する。日本の発電所から排出されるSOx(硫黄酸化物)や NOx(窒素酸化物)・PM(「Particulate Matter(粒子状物質)」の頭文字をとったもので、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、SOxなどの大気汚染の原因となる粒子状の物質のこと)の濃度は低めだが、JBIC融資の東南アジアに建設されている発電所から排出されるものの濃度は全く低くない。これは脱硫装置などの策が取られていないためである。これをもって、日本は質の高い高効率発電を輸出していると主張しているわけだが、本当にそうだろうか?答えは明らかである。東南アジアでは、石炭火力発電所による大気汚染によって年間二万人が早期に死亡しているというデータもある。

輸出信用機関(政府が運営し、日本の産業が海外で活躍するための、輸出を推進するための公的機関)の在り方にも深草氏は触れていた。チレボン火力発電所の事業などにおいて、インドネシア自身のガバナンスの問題も指摘されているが、こういった大きなインフラを輸出する際、公的資金の融資なくしてことは進まないので、融資機関の責任は大きい。赤道原則、IFC Performance Standardsなど、融資者の人権や環境に対する責任を認める原則は存在する。日本としてはパリ協定、SDGsを批准しているので、そういった状況で公的資金を使って石炭火力発電所事業に融資するのは矛盾している。

石炭火力推進派の主張としては、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を根拠に、電力の供給の中で石炭火力が必要と言っている。実際、今も5人に1人が電気に十分アクセスできずに暮らしている。一方、世界で3億人が屋内で暖房・調理に石炭などを使用しているために多くの方が大気汚染でなくなっている。クリーンなエネルギーへのアクセスというのは開発の大きな課題である。

「一つ言えるとするなら、石炭はエネルギーアクセスを解決しない。」

終盤、深草氏は強く言い放つ。「個人的意見として」と付け加えつつ、深草氏がこう主張するのには実態を踏まえてであった。2016年以降(パリ協定成立以降)、日本は(インドネシアにおいて)新たに3つの石炭火力発電所への融資を決定した。5千メガワット(原発5基分)の電力を供給するのであるが、ジャワ島ではすでに30%の電力が使用されていない。インドでは、現在2億4千万人の人が電力へのアクセスなく暮らしている。しかしGreenpeaceの試算によると、2022年には、石炭火力発電所のつくりすぎで、9割が使われないと推定されている。実際、インドの石炭火力発電所は6割しか使われておらず、3割が送電ロスとなっている(2016年)。

一方アジア・アフリカのエネルギー貧困層の8割がグリッドへのアクセスがない。つまり、今ある送電線に電力を流しても、そのグリッドへアクセスできない人には届かない。電力がすでにあるところに供給しようとしているが、これはエネルギーアクセスを解決するのだろうか。

中央集権的で高価な原発や石炭火力発電所に投資するのか、分散型(発電所と使用者が近い)で、持続可能な再生可能エネルギーに投資するのか、SDGsやパリ協定の観点から見てどちらが良いのか。そういった状況の中に私たちはいる。

分かりやすく堂々とした声で実態を訴えた後、深草さんはReclaim Powerという2013年からNGOが参加しているアクションの動画を流して、講演を終えた。

ホームページ:http://www.foejapan.org/

 

<民間金融機関の石炭火力投融資の実態>

国際青年環境NGO A SEED JAPAN理事 田川 道子

DSC_0449

Fair Finance Guideで活躍する田川が講演を務めた。今回は、石炭火力への投融資の実態についての話だった。

 

そもそも銀行の役割とは、決済や貯金もあるが、投融資の面も大きい。そして注目すべきは、私たちが預けたお金が、石炭火力にかかわるプロジェクトにお金が流れる可能性があるということだ。従来、配慮が欠けていたため公害問題や環境問題を深刻化させてきた過去があるので、Fair Finance Guideでは市民の皆様に啓蒙活動を行っている。

2005年以降に判明している海外石炭火力発電所プロジェクト23件について、日本のメガバンクからどれくらい融資しているかを調べるにあたり、インドネシア、ベトナム、チリ、インドなど様々な地域のケースを集計した。すると、総額約6200億円とわかった。

石炭火力に流れるお金を食い止めるための方法として、二つある。一つはダイベストメント(Divestment)だ。投資(Investment)の対義語で、すでに投資している金融資産を引き揚げることを意味する言葉だ。今日では、株式の売却、自社事業の売却、融資の引き揚げ・停止などがダイベストメントの形式に含まれる。ドイツ銀行は新規石炭火力発電プロジェクトへの融資を禁止するなど、海外では、銀行・金融機関自体がダイベストメント宣言を発表しているところもある。しかしながら、日本は石炭火力発電のダイベストメントに関する投融資方針を発表していない。果たしてこのままでいいのだろうかという問いが投げられる。

私たちの一人ひとりが銀行に直接「投資しないでほしい」とお願いすることも方法の一つだ。オーストラリアでは、NGO団体がお願いした結果それが考慮されるという事例もある。銀行が預金者からの声を聞いて方針を変えていくということもありうる。Fair Finance Guideでは、これまで計780通届けてきた。

「信頼できる決済機能と投融資を通じた富の再分配によって、持続的社会を創造することにこそある。つまり金融にとって顧客とは、預金者や融資先、投資家や保険契約者にとどまらず、社会のものではないか。」

スクリーンに映る鎌倉投信株式会社代表取締役社長の鎌田さんの言葉。若者からご年配の方まで、これから稼ぐものからすでに多くを稼いでいる方まで、お金の使い方と社会とのつながりについて考えさせられる講演であった。

 

<ESG投資の指標と気候変動対策を踏まえた今後の深化について>

三井住友信託銀行 経営企画部 金井 司 氏

DSC_0452

脱炭素の潮流を推進する方々が多くいる中、石炭火力に投資している三井住友信託銀行から、金井さんをお招きした。金井さんは、NGOの方からの相談はできる限り受け入れ、またその声を会議できちんと展開なさっていて、A SEED JAPANもお世話になっている。市民の声を聞き入れなければ生き残れないといった現実があるのも事実だそうだ。

 

本題に入る前に、金井さんは一つ、投資と融資の意味の違いを明確にされた。私たち市民の預金は融資には使われるが投資とは関連がない。そして最近流行り始めたESG投資も、投資の方で、有価証券取引が中心だ。また、融資には二通りあり、一つはプロジェクトファイナンス、もう一つはコーポレートファイナンスだ。日本では圧倒的にコーポレートファイナンスが大きい。(それ故石炭投融資などから手を引きたくても引けない状況であるのだろう。)

ESG投資の発端はそもそも何か。Environment(環境)Society(社会)Governance(ガバナンス)の頭文字をとっているわけだが、これは、2006年に制定されたPRI(責任投資原則)の中にある造語なのだ。世界のESG市場は2500兆円と天文学的数字の額が運用されており、うち欧州が52.6%、アメリカが38.1%を占める。日本はどうかというと、実はESG投資とは無縁の世界だったが、ここ数年で急増している。

ESG市場拡大の要因は主に二つある。一つは、無形資産の存在だ。株価が上昇すれば、業績が上昇するわけだが、どうして株価が上昇するか、根本的な要因を探り、長期的利益を目指していくとき、コーポレートガバナンスや人的資源などの無形資産が実は大事で、投資家の価値判断は無形資産になってきている。もう一つの要因はユニバーサル・オーナーの台頭だ。近年、何十兆円の規模の資金を持つ資産投資家が、世界中の株式に分散して投資している。例えば、A社が途上国でビジネスをしていて、そこで環境破壊を起こしたとする。その際現地のB社やC社が不利益を被るとする。すると、A社だけがよくても、全体で見たら悪い業績かもしれない。さらに長期的に見れば、AもBもCも資産価値下がっているかもしれない。そうなってきたとき、気候変動問題は外せない視点なのである。気候変動だけでなく生態環境の問題で経済活動ができない状況に陥るので、積極的にお金の力を使って環境破壊する事業にプレッシャーをかけている動きがある。

「ダイベストメントが全てではない」。投資活動にはエンゲージメントやインテグレーションといった行為もある。ダイベストメントがブームになっているが、それは投資対象からその企業を抜くわけであり、つまりその企業には何も言えなくなるということだ。それよりも、エンゲージメントという、株主の議決権の行使によって、相手の企業に影響を与える・気候変動問題に取り組みさせる方が効果的ではないかという議論がある。

そうは言っても、世界第二位の機関投資家であるノルウェー政府年金基金は非常に厳しく、ダイベストメントに乗り出している。いくつかの日本の電力会社も、2016年にダイベストメントされた。ちなみに、世界で最大の年金機構は日本のGPIFで、150兆円ほど運用している。日本のGPIFがユニバーサル・オーナーシップを標榜し、ESGをやれば、非常に大きな影響力を持つ。そのせいか、ESGが急速に日本でも広がった。問題は、GPIF以外のアセットオーナーが動かない点にあるといったこぼれ話もあった。さらに日本に関して、実はESGは安倍内閣の国家戦略である。ESGを国家戦略に入れている国は他にない。

(ESGには二つのアプローチがあるといったが、その二つはなかなかかみ合っていなかった。しかし)移行リスクという考え方も出てきている。特に気候変動問題に関しては、あっという間に経済環境が変わってしまう。例えば、EVシフトを2040年にやると宣言した際、既存の自動車会社の株が下落、すでにEVをやっている会社の株は急上昇した。経済は常に先読みをし、それが20年後30年後であっても今起こる。このように会社の環境が一気に変わる可能性があり、金融安定理事会(FSB)は気候変動問題を金融リスクと認識した。そして世界中の金融機関が動き始めたのだ。三井住友信託銀行は、ダイベストメントはやっていないがエンゲージメントをやるなど気候変動問題に対策を打ち出している。金井さんのように市民へ金融教育普及に努めつつ、市民の声を会社に取り入れ、地球のため、社会のために行動を貫ける人がもっと出てきてほしいと思う。

ホームページ:http://www.smtb.jp/

2018-03-08