Eco Life Guide インタビュー ~考えてみよう!私たちのお金と社会のカンケイ~ 第1回 オイコクレジット・ジャパン 岡本眞理子代表

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エコ貯金プロジェクトでは昨年度、「Eco Life Guide」というパンフレットを作成しました。これは、「社会に優しいお金の使い方」と「ライフプランの立て方」について説明したものです。この冊子を手にした個人の方が、自分自身の資産運用を考えることと、より良い社会づくりに向けたお金の流れを考えることができる内容に仕上げています。
(詳しくはこちらのリンク(http://www.aseed.org/2018/06/6172/)をご覧ください。)

この冊子の中で、「個人で関わることができ」、「お金の流れが分かりやすく」、「持続可能な社会を作りうる」と私たちが考えた金融機関・団体を複数紹介しました。構成上、1つひとつを詳しく紹介することができなかったため、このたび個別にインタビューを行い、ウェブサイトで紹介させていただくことにしました。

第1回目は、オイコクレジット・ジャパンです。オイコクレジットは、オランダに本部を置く、社会的意義のある事業に投資して開発を促進するための国際的な協同組合です。オイコクレジット・ジャパンは、オイコクレジットの日本での唯一の支援組織として、出資者の募集やオイコクレジットの活動紹介、社会的投資についての広報活動を行っています。このたび、オイコクレジット・ジャパンの代表の岡本眞理子さんに、オイコクレジット・ジャパンの意義や現在の日本の課題、今後の金融のあり方などについてじっくりと伺いました!

オイコクレジット・ジャパン代表の岡本眞理子さん(左)と、同席いただいた事務局長の小吹岳志さん(右)

A SEED JAPANスタッフ(以下ASJ): オイコクレジット・ジャパンを始めたきっかけを教えていただけますか?

岡本眞理子さん(以下 岡本さん): かつて私は、インドの貧しい農村を支援するNGOに関わっていまして、「寄付」で井戸や学校を外部から支援した後も、どのようにその地域の人々が貧困を脱出していけるのかということに関心がありました。ネパールで村落開発の事例を見て回った時、村で資金をプールして貸し出す仕組みのあるコミュニティーを知り、金融の重要性を感じました。担保もコネもない人が、金融へのアクセスなしで貧困状況から這い上がることは難しいからです。当時は日本では先行研究は少なかったのですが、博士課程ではマイクロファイナンスをテーマにしました。マイクロファイナンスを提供する機関として望ましい形は何かを研究し、女性や村の人たちだけで作った信用組合のような形態がよいと考えました。

その頃、EDCS(オイコクレジットの前身)の支援組織を日本でもできないかと打診されていた京都のYWCA有志から相談を受けました。EDCSは1975年にオランダで設立された開発金融組織で、「キリスト教教会の多額の余剰資金を一般の銀行に預けて、戦争など不適切な分野に使われてしまうよりは、むしろ途上国の人々への投資で貧困打開を」という理念に基づいています。この理念と「協同組合」という組織形態は私にはぴったりでした。まとまった資金を用立てするには、多額の余剰資金を回す必要がありますが、それは寄付ではなく出資という形でなら持続します。また、非営利で株が市場で売買されない協同組合なら比較的安心だからです。そこで、こうした社会的投資に日本からも参加できるよう、日本の支援組織設立をお手伝いすることにしました。そして1996年に設立したのが「地球バンク」(オイコクレジット・ジャパンの前身)です。2008年より任意組合としてオイコクレジット・ジャパンに改組し、私が代表に就任しました。小吹さんには、この年に事務局長として参加してもらいました。

オイコクレジットは2017年12月末時点で融資残高は1000億円以上あり、マイクロファイナンス機関への民間融資機関としてはトップクラスですが、生産者組合やフェアトレードへの支援は古くからしており、最近は農業や持続可能なエネルギー開発にも力を入れています。

ASJ: 貧困を解決できない、お金を滞留させるという状況が、「現代の金融についての問題意識」だったのでしょうか?

岡本さん: 日本の一般市民(特に高齢者)は発想が預金に偏りがちで、お金が回っていません。将来何が起こるか分からないという不安感や、投資して損失が出ることに対する恐怖感、儲かると勧めてきた金融機関の担当者に振り回されたトラウマなどから、貯蓄ばかりに走っています。これはとても残念なことだと思います。預金以外でもきちんと計画を立てれば安定的に資産を形成することが可能なのに、そうしている人は少ないですね。資産が流動性の高い貯金というものに偏っているから、オレオレ詐欺でせっかく貯蓄していたものを一気に失ってしまうという事件にもつながると思うのです。せめて投資信託や株など流動性が低いものにしておけば、少しは被害を防げるのかもしれないですし、同様に、オイコクレジットのような機関に預けておけば、単純に増やすことを目的とせず社会の役に立っていると実感できると思うので、選択肢として提案したいですね。

ASJ: 岡本さんは現在大学で学生向けに講義をされていますが、現代の教育や既存の金融機関だと、一般市民の金融リテラシーの向上の一翼を担えないのでしょうか?

岡本さん: そうですね。大学生は、預金しか考えたことがない人が大半で、中にはクレジットカードが怖いと言う学生がいることに驚きました。住宅ローンや奨学金など、使い方次第では全体的な効用は上がるはずなのに、ひとくくりで「借金は怖い」と、商品のメリットを理解してもらえない場合も多いです。学生には借金全般に恐怖心がある一方で、クレジットカードがあれば何でも買えると、勘違いしてしまうようなガードの弱い人もいます。背景には、親からそのように教えられているケースもあるようです。目的によってベストな選択肢は変わってくることを教えられる、良心的な金融機関やアドバイザーが必要だと思います。
学生たちには授業の中で、将来どんなライフイベントがありいくら金額がかかるかなど資産保全の仕方を考え、保険会社の提供しているツールやゲームなどを活用しながら有効なお金の使い道を学んでもらおうと工夫しています。

ASJ: 子供たちの金融リテラシーは、親の影響が大きいんですね。子供たちへは、どの段階から金融についての教育をしていけば良いのでしょうか?

岡本さん: 日本では、子供の前でお金の話をすることを避けがちですが、お金の教育は早い方が望ましいと思います。お小遣いの管理など、小さい頃から経験させながら育てていくのがよいのではないでしょうか。何も、目の中に$(ドル)マークや¥(円)マークを出すような子供を育てるわけではありません(笑)。ただ、すべての人が学ぶ時期である義務教育を終える前に、利息とは何か、投資とは何か、経済とは何か、など、お金に関する基礎知識をマスターできればよいと思います。

ASJ: 本当にそうですね。今後、 金融業界はどのような方向に進んでいくのが理想的でしょうか?

岡本さん: 確かに最近は良い方向に進んでいると思います。ダイベストメントは、進めていけば徐々に成果が現れてくるものだと思いますが、ダイベストしたお金のシフトする行き先が不明確ですね。積極的に応援したい、と思う投資先を含めたポートフォリオを提示できるような仕組みができればよいと思います。たとえばファイナンシャル・プランナーは個人の資産形成にのみ注目しがちですが、社会的観点も踏まえたより広い視野で提案していけるようなスキルを併せ持つことができれば良いですね。

また、金融の仕組みは、その国の習慣によってうまく働く場合とそうでない場合があります。海外の成功事例が、日本でも成功するとは限りません。その国に合った方法を作り出していく必要があります。

ASJ: オイコクレジット・ジャパンの意義と、将来像をどのようにお考えですか?

岡本さん: 意思のあるお金の受け皿としての存在が、オイコクレジットの意義の一つだと思っています。セミナー等で当団体を知った中高年世代の方が、親の遺産を自分のためだけに使う訳にはいかないと思い出資してくださったり、社会を変えたかったという昔の想いを思い出して出資してくださったりする方、グラミン銀行のユヌスさんに共感して、出資してくださった方などがいらっしゃいます。
一方で、出資者や出資額は少々伸び悩んでいます(2018年3月末時点で、出資者約100名、出資額約4000万円)。(オイコクレジット・ジャパンの場合は、現状法制度上配当を支払えないので)リターンがないなら投資ではないと主張する人もいて、社会的リターンという考え方を理解してもらうのは難しいです。最近はふるさと納税やクラウドファンディングのように、製品をもらえるような仕組みが増えている中、オイコクレジット・ジャパンの社会的意義をどのように分かりやすく伝えていくかということが重要だと思っています。特に若い人や、セミナーに直接来られないような方へも、インターネット等を使って訴えていきたいなと思います。


アースデイ東京では、オイコクレジット・ジャパンさん、350.orgさん、東京CPBさん、
A SEED JAPANエコ貯金プロジェクトで「エコ金融エリア」にブース出展しています!

海外のオイコクレジットの総会は、各国の宗教のお祈りから始まります。オイコクレジットが融資する際のベースには、「倫理的かどうか」という考えがあります。日本でも、金融を考えるにあたって「お金を回す」という意識と、「倫理的使い方」という観点を持つ人が増えることが、望ましい姿だと思っています。


インタビューを終えて
岡本さん、小吹さんとも、大変穏やかな印象でありながら、内面はとても熱い情熱を持った方々でした。今回お話を伺い、子供の頃からお金の仕組みについて考えることや、大人でも金融の社会的意義について知ることの大切さを改めて実感しました。日本に住む私たちの多くは、少子高齢化や終身雇用の崩壊等に備え、将来のために資産形成について真剣に考えます。しかし、お金が社会に与える影響までを想像する機会は多くはありません。自分自身の将来を考えつつも、社会の将来も考えてお金の預け先や投資先を選んでいくことが、本当の意味での豊かな社会につながっていくのではないかと思います。
この記事をご覧になって、オイコクレジット・ジャパンさんの取り組みに興味をお持ちになった方は、ぜひウェブサイトを訪れてみてください!
【オイコクレジット・ジャパン ウェブサイト】
http://www.oikocredit.jp/

 

2018-08-25