Eco Life Guide インタビュー ~考えてみよう!私たちのお金と社会のカンケイ~ 第2回 さわかみ投信株式会社 前編

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エコ貯金プロジェクトで昨年度作成した「Eco Life Guide」。個別インタビューの第2回目は、さわかみ投信株式会社です!

さわかみ投信株式会社は、銀行や証券会社を通さずに投資信託を直接販売する独立系の投資信託運用会社です。現在約12万名のお客様の資産を預かり、残高は約3000億円にのぼります。今回は、さわかみ投信株式会社 代表取締役社長の澤上龍さんに、「投資ってなんだろう?」という素朴な疑問から、その意義や会社のこと、生き方や今後の金融のあり方などについて、ざっくばらんに伺いました!今回は、その前編をお届けします。



笑顔で迎えてくださった澤上龍社長

長期投資について…何のために投資するかが大事

ASJ:そもそも長期投資とは何ですか?短期的な投資と比較すると、どのような特徴があるのでしょうか?

澤上さん:逆に聞きますが、どのような違いがあると思いますか?

ASJ:明確に区分する数値的な違いはないと思いますが、短期的な投資は株価の変動を狙った利益目標で、長期投資は将来確実に上がるものを予想して投資するといった違いでしょうか?

澤上さん:では視点をずらして、「投資」というワードを含んだ一言葉として何が思いつきますか?

ASJ:「自己投資」です!

澤上さん:では「自己投資」の意味は何ですか?

ASJ:「自分磨き」は近い意味かもしれませんね。

澤上さん:そうですね、自己投資とは、時間とお金を将来の自分のために使うことです。将来こうなってほしいなというものに対して、本当にそうなるか分からない不確実性を持ちながらも、現在の時間とお金を注ぐことです。例えば周囲が飲んで遊んでいるときに、よりハイレベルな仕事を勝ち取るために英会話を習うことなどです。

長期投資も同じで、投資する相手に、こうなってほしいなという想いを持って、お金を投じるわけです。なので、短期の利益追求は「投機」であり、投資とは違います。投資はそもそも長期的なのです。ただ世の中は「投資」をそのような意味使っていないので、あえて長期投資という言葉を使っています。

加えて、なぜ長期である必要があるのかというと、一般的に何かを成し遂げるのは時間がかかるためです。もし不治の病を治す薬を作ろうと思っても数日でできるものではないですね。逆に想像より早く、例えば5年で完成してしまったということもありえます。期間はともあれ、それが叶えば皆がその薬の完成を喜び、そして買い、売上が増え、企業価値が上がり、株価も上がるのです。

重要なのは、その根本にある「なんのために」という想いがあるかどうかです。投資というのは、お金や時間以前に、「想い」を乗せることです。そしてその想いが達成するまで長期間かかるかもしれない。その長期間を待てるかどうか、それが長期投資のゆえんです。投資先の事業会社は時間と命を削って頑張ってくださっており、我々投資家はそのような企業に想いを乗せる運命共同体なのです。

さわかみ投信という会社について

ASJ:なるほど。これは個人的な見解も含んでいるのですが、株や投資信託というと、金融機関の窓口で押し売りされるイメージもあって、一部の人には恐怖心もあると思います。さわかみ投信さんとして、顧客との接点をどう工夫されていますか?

澤上さん:特段「工夫」はありません。さわかみ投信の存在意義に従ってお客さまと接しています。さわかみファンドは、一般の人の資産形成を通して、彼ら彼女らの不安を解消し夢を叶えることをお手伝いするためのものですが、それを理解しない人とは無理に接点を持ちません。短期の利益を求める人はお断りですし、お客さまに頭を下げてまで買ってくださいとは言いません。

とはいえ、こちらから積極的に理念や大義を伝えます。セミナーや勉強会はかなり多く開いています。お客さまのための相談会というよりは、長期投資のすばらしさや何のために資産運用・投資をするのかという軸の部分を伝える場という位置づけです。

昨年度は2~3日に一回のペースで、場合によっては朝から晩まで会場を開いてお客さんを迎えていたこともありました。開催時間は会社が終わった後の夜から始めてもよかったのですが、夜に出かけにくい主婦の方など、夜来られない人が出ることを考慮して一日中開場していましたね。

ASJ:説明会以外にも、Webなどメディアでの広報はされているのですか?

澤上さん:最近月に一度、Youtubeで生放送をはじめました。生放送には、自分の他に創業者の澤上篤人と、ファンドマネージャーの草刈が出演します。その時々のテーマについて話すだけではなく、募集した質問からピックアップして答えています。本当は電話で質問を受けつけてその場で答えてみたいですが、プライバシーの問題や技術的なハードルがあり、できていません。どんな質問にも答えたいので、早くハードルを越えないといけませんね。

ASJ:受益者の立場となる一般消費者が、投資先企業について深く理解するための仕組みがあれば教えてください。

澤上さん:レポートで包み隠さず全て報告すること以外に、少し珍しいものが二つあります。
一つは企業訪問ツアーです。ファンド仲間30人程度を対象に、例えばブリヂストンの工場を半日かけて見学するようなツアーです。企業全体を見るというよりは、目に見える生産現場だとか開発環境だとかを見学してもらいます。過去には、ANA、トヨタのレクサスの工場、商船三井の船やハンズマンのようなホームセンターの見学をしました。

もう一つは、全てのお客さまを招待しての運用報告会があります。投資先の企業のうち30社程度が、ブースで自社のことを説明する場で、お客さまは2~3000名程来場されます。一般的な投資イベントだと、投資家は優待や業績など目先の事象についての質問が多いようですが、当社のお客様は、その企業が持つ独自の技術やサービス、10年後の姿などに関心を寄せた質問をしています。本当の投資家の姿とはこうなのであって、企業の方にもそのことを体感してもらう良い機会になっていると思っています。

ASJ:日本のようにマーケットが成熟していると、消費者のニーズも目まぐるしく変わり、消費者自身も自分のニーズに気づいていないことが多いと思います。そのような事業環境では企業の長期的な事業性を評価するのは難しいかと思いますが、さわかみ投信さんのアナリストの皆様は具体的にどのようなマインド・視座で企業を見ているのでしょうか?

澤上さん:確かに30年前と比べると、企業から物事を作り出す世の中から、消費者目線の世の中になってきました。それでも、どのような状況でも変わらないトレンドがありますよね。世界的な人口増加、食料・水・エネルギー問題など、長期的な社会問題は存在します。そのトレンドの中で消費者が必要とするものは自ずと予測できて、将来企業がそれらのニーズやウォンツに答えられるかが鍵になります。

逆に二年後どのような商品がヒットするか分からないですし、全く興味もないです。AndroidとiPhoneのどっちが売れようが、関係ありません。スマホが10年後どのように人々の生活に影響を与えるかという問題の方が大事です。

熱く語る澤上社長。投資って、そういうことだったんですね…

ASJ:なるほど。社会問題も世界と日本で少し内容が異なりますが、さわかみ投信さんの投資先のほとんどが日本企業であることを考えると、日本の課題解決に重点があるのでしょうか?

澤上さん:そうとは限りません。投資先企業の多くはグローバルで売上をあげています。ですので、注視する社会問題は地球レベルで、今後は地球という枠を超えるかもしれません。ただ、現在日本のマーケットで戦っている企業が悪いわけではありません。日本で起きている社会問題は、今後世界でも同じものが起こりうるわけです。日本で培った経験を輸出することができます。

ASJ:投資信託の領域もテクノロジーの波には無関係でいられないかと思います。さわかみ投信さんではFintech関連の取り組みはあるのでしょうか?長期投資の分野では一概にITに頼れないところが多いのでしょうか?

澤上さん:特にそういうものはないです。Fintechありきでの金融ではなく、金融のあるべき姿として、誰のために何をやるかが重要で、そこにITが必要なら使うだけです。

ASJ:そうなんですね。現在はAI(人工知能)を用いたロボアドバイザーも登場していますが、AIとの関係についてどう考えていらっしゃいますか?

澤上さん:お客さまにも質問されるので、AIについては非常に勉強しています。ただ、AIが投資そのものをすることはできないでしょう。運用はAIに任せられるかもしれませんが、投資は相手が人なので、AIができるものではありません。その前に、投資と運用の違いは分かりますか?

ASJ:説明をお願いしますm(__)m

澤上さん:それでは、「運用」と「投資」の両方につく言葉は何があるでしょうか?
例えば「システム」がありますね。「システム投資」「システム運用」と両方使う言葉ですが、意味は全然違うでしょう。「投資」というのは、将来こういうサービスが必要だろうとか、この分野を成長させたいと思い、お金を投じて開発をしていくことです。一方、「運用」というのは、開発されたものをいかにうまく回していくかです。

今やロボアドバイザー、AI、IT等はビッグデータを使って、個人に何が最適かをはじき出します。なので、過去のデータ処理能力がモノを言う運用という点において、人間はAIに勝てません。一方で、投資はAIにはできないと思います。なぜなら、投資は過去のデータではなく、人がこれから作り出す不確定なものに対して行うものだからです。

また、投資される人や企業にとって、「誰に」投資されているかということは大事なポイントです。新しい事業を立ち上げたその時、よくわからない人がオーナーだと緊張やプレッシャーが強く、短期で利益を出せと言われるんじゃないか、自分の夢を理解してくれないんじゃないか、という不安がつきまといます。しかし、お金の出し手から「5年でも10年でもいい、応援しているから頑張って」と言われるのでは、出せる結果が全然違うと思いますね。人間の投資家は企業を勇気づけてあげられることができるけど、AIにはできません。

質問にも熱が入ります。

ASJ:最近NISAやiDeCo等の税制優遇制度が充実してきました。積み立てNISAには反対だとの意見を聞いたことがありますが、詳しく教えてください。

澤上さん:当社は、一般NISAは始めましたが、積み立てNISAは現状取り扱っていません。理由は三つあります。

まず1つ目は、そもそも、投資は税制優遇のためにするものではないと考えるからです。また、ただ単に貯蓄から投資に回すことだけが目的で、「何に投資するか、意義がどこにあるのか」という議論に全くなっていないのは問題だと思っています。

次に、手数料が低いことを重視する点です。これも本質的ではなく、手数料が高くてもそれ以上の運用益を高く出せば問題はないでしょう。もちろん、手数料の多寡の問題は金融業界の慣習にあり、本当に受益者の方を向いているのかという考えが起点となっていますが・・・ここでは割愛します。

最後に、期間が制限されている点です。iDeCoは、60歳まで引き出しはできず老後のために運用するというしかるべき目的があるので、良い制度だと思います。しかし、積み立てNISAはどうでしょうか?例えば20歳に申し込んだ場合、40歳でその期間が切れてしまいます。長期的な資産形成が目的であれば、40歳で運用を終えたい人はいないでしょう。もっと長く運用したいはずです。そのうちNISA全体が恒久化される可能性も高いと思いますが、現状の制度にはまだまだ改善の余地があると思っています。

(後編に続く。)

2018-09-12