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エコ貯金フォーラム報告書 > 第2部 分科会(投資型)

3:投資型分科会

講師: 速水禎氏(あすのはね朝日ライフアセットマネジメントファンドマネージャー)

私たちの会社はお客様から資金をお預りして、株式・債券・その他に資産運用する会社です。この業務をするにあたって3つの信条というものを持ってやっております。

1−事業を通して、世の中に価値連鎖をつける
私たちは、単純にお客様の資産を増やすということだけではなく、運用会社と投資家のお客様と投資先の企業とを、連鎖してつなげていこうというのが、本来の事業を超えたところの私たちの目標です。
2−品質の頂点を極める
最高の中の最高品質を極めていこうというのが私達の夢です。
3−投資家のために忠誠を尽くす

《What’s SRI》

SRIの定義は色々なことを言われていますが、、一番大切なのは、何がSRIなのかは、投資家本人が決めるということです。SRIは、そこが出発点になっています。SRIの基本中の基本というのは本人が決めるということです。

《朝日ライフアセットマネジメントの取り組み》

では、私共朝日ライフアセットマネジメントが考えるSRIのコンセプトとは何かというと、それは「つながる」ということです。理想と夢と現実の社会、そういうものと環境配慮と企業の利益、あるいは価値観とお金と投資、もしくは同じような価値観を共有されている人達、それらで人と人をつないでいく、それがSRIではないかと考えています。
そのために具体的には、主に3つのことに取り組んでいます。まず初めに、「あすのはね」というファンドを通じて、投資の流れ(「探す」→「見つける」→「調べる」→「さらに調べる」→「投資する」→「チェック」→「明るい未来へ」→「探す」 ※「あすのはね」商品説明用資料参照)を作っていきたいと考えています。

2番目として、NPOへのサポートを行っています。「あすのはね」の中の商品に組み入れられているのですが、ファンドから得られる会社の売上げの一部をNPOへの寄付という形で支援しています。社会的な課題が世の中に山積している中で、企業に投資をするだけではなく寄付をすることで、そういった課題に対して取り組んでいこうということです。

3番目として、毎月「SRIラウンジ」を開催しています。これは、SRIをより多くの人たちに理解していただくために、SRIを普段の生活と関連付けて様々な観点から話し合う、参加者主体のミーティングです。講師による一方向のセミナーではなく、参加者同士が一緒にリラックスした雰囲気の中で、SRIについて語り合うという趣旨から「ラウンジ」という名前を付けています。開催案内については、弊社のホームページをご覧ください。

《「あすのはね」ファンドの特徴》

1−経験
SRIファンドの運用にもっとも必要なことは経験です。私たちは、すでにこの分野で3年以上の経験を積んできています。

2−ボトムアップ&グラスルーツ(草の根)型
この3年間通して私たちは多くのことを学んできました。今まで300社ほどを調査してきたわけですけれども、年間70〜80の企業や工場などに訪問や見学を行い、生産現場の方々など、数百人とお話をしたりしてきました。企業の調査というのはひとつひとつ丁寧に調べていかないと結局何もわかりません。その中で私たちの調査では、トップダウンではなくてボトムアップで調べなくてはならない、1社1社歴史から理念から沿革から、どこに工場があって何人くらいの従業員が働いているのか、そういうことを丁寧に調べていくのが私達のスタイルです。

しかし、会社に色々聞いても本当のことはわからないケースも多くあります。そこで、第三者的な草の根的な声を入れていきます。具体的には、環境問題であれば環境関連のNGO、雇用であれば日本の場合は労働組合、そうしたことを考慮しながら調査しています。他にも消費者団体など、企業だけではなくて第三者の声を入れていく、そういうことによって企業の実態をみていくというのが私達のやり方です。SRI・CSRの世界では色々な規格化基準化というのが進んでいっていますが、あすのはねはこれに180度反対の方向に進んでいます。

3-「責任」よりもリーダーシップ
最近「社会責任」という言葉が非常に取り沙汰されていますが、我々は「責任」ということよりも「リーダーシップ」ということに注目しています。責任というと、言う方も言われる方もあまりいい気持はしませんが、私たちは、調査先企業の中に、「企業としてのリーダーシップ」というのを見つけ出そうとしています。これについては後で詳しく説明いたします。

4−ダイレクト・コミュニケーション
こういったファンド運営をしていくのに一番大切なことは直接対話、「ダイレクトコミュニケーション」をしていくことだと考えています。過去は調査の上で企業へのアンケートをしていましたが、現在は、そういうのは一切やめまして、直接企業に電話で問合せをする、ダイレクトコミュニケーションをとるようにしています。またお客さまともなるべく直接コミュニケーションをとるようにしています。

《SRIの哲学(4か条)》

実際にSRIのお金を運営していく上で、どうしてそういう投資行動を取るのか、環境配慮をしながらもしくはその従業員の雇用を維持しながら、どうやって利益を上げていくのか。その相反する世界をどうやって渡り歩いていくのか、普段調査をしていると非常に迷うことがあります。そういう時は必ず次の4つの基本哲学に立ち返ります。これは全てのSRIに共通するものだと思っています。
 今まで色々な方とお会いして、日本だけではなくヨーロッパ・アメリカ・アジアの色々なSRI実業家のかたとお話して浮かび上がってきたのがこの4カ条です。

1−ビジネスを通じて、社会的課題へ積極的に取り組む(ビジョンのある)企業に、長期的投資を行います
企業は今まで製品やサービスについて社会に広く恩恵を与えてきたという、非常に大きな役割を担ってきました。製品サービスだけではなくて、従業員を雇用し育て、鍛え訓練し技術を習得させ、生活レベルを向上させてきたという実績があります。
 その一方で、最近注目されているのは、環境の面で言えば地球の温暖化問題・環境汚染・企業のリストラ・地域経済の荒廃、いろんな課題を企業が作り出してきたということも一つの事実なのです。SRIの哲学では、だからこそ企業がそういった問題解決の主役になるんじゃないか、原因を作っている企業が解決の主役になるという発想の転換がSRIの哲学です。だからこそ我々は企業に投資をする。優れた企業を投資によって応援していこうというのが基本ベースです。通常企業というのは社会責任を負っている義務がある、ということが会社のトップ、経営者のメッセージから出てきていますが、SRI側の立場としては企業が社会的課題に取り組むことによって人材や資本をスケールをアップして、そして問題解決へのスピードを速めることができるというのがSRIの哲学です。ですから責任よりもリーダーシップを求めていくのです。まあそうは言っても、実際は企業に利益が出ないと存続していかないので、我々は企業の収益性というものを重視しています。SRIといっても、投資をして企業の収益、リターンを上げていくのが我々の仕事なわけですから。

2−社会的責任と優れた競争戦略とのリンクが収益ドライバーになると考えます
企業の収益性というのは、単純な構造で考えると、ひとつはその企業が事業を行っている業界全体の魅力度、つまり業界全体の収益性です。もうひとつは業界内での競争優位性です。この2つによって決定されるのが企業の収益性であります。ここでは企業の収益性は後者を問題にしています。
 社会責任に取り組むここと、実際のビジネスの競争戦略がきっちりリンクしていくと、非常に大きな収益が上がるというのが今まで見てきた経験です。わかりやすい例でいうと、複写機メーカーでリサイクル事業というのがもうまもなく黒字化しようとしています。この会社では以前から取り組んできていますが、リサイクルすればするほど赤字が出るという状態だった。それが製品の設計を変えたり、生産工程の色々なものを変えるによってだんだん収益性が上がるようになった、実はこれが黒字になるということはこうした戦略上企業の1部門の利益が上がるということ以上のインパクトがあります。つまり製品回収することによって収益が上がるということで、リサイクル部門のモチベーションが非常に高まるのです。
 自分達の会社の新しい製品、環境に配慮されたリサイクルしやすい設計になっているので非常に品質の高い製品ができてきて、それが数年後に戻ってくる、そして戻ってくる頃には、設計上リサイクル性は非常に高く、またリサイクルの収益性も高くなっているので、その循環を繰り返すことによってますます利益が高まる、そういう仕組みを作ろうとしています。こうすることによって競合他社に対して優位に立つことができます。こうしたことで、単純に社会責任を問うということではなく、会社の生き残りをかけた競争戦略として非常に大きな意味があると思います。

3−「成長の限界」を乗り越えて行く事業を発掘します
次は成長の限界という話ですが、1972年にアメリカの環境学者のドネラ・メドウズという方が『成長の限界―人類の危機レポート』という著書を書きました。ここでは食糧の問題、人口の問題、環境汚染、そういった様々な要因によって地球は限界に達する、21世紀中に制御しきれない状況になり、人口が減り成長は止まるという警告を発しています。SRIの世界ではこういった成長の限界を乗越える事業を、今一生懸命探しているところです。
 今日本は非常に景気が低迷していまして世の中真っ暗に見えるけれども、例えば風力発電、もしくは燃料電池、また宇宙開発も含めて、こういった非常に大きな産業が立ち上がっているのが今の状態です。あんまり不況だ不況だといってそういう芽をつぶしてしまうのは非常に大きな損失になる、そこで我々は今一生懸命模索しています。

4−自然環境の保全、社会的公平、新しい雇用を生み出す活力のある経済を同時に実現する社会を目指します
最後に、これが一番の基本哲学になるかと思いますが、生態系の保存、社会的な正義・公平性、そして新しい雇用をどんどん生み出す活力ある経済を同時に実現するという社会を目指しています。今まではバランスをとるんだというという話だったと思うのですが、そうでなく同時に実現していく、環境をやることで利益が増していく、それでいて新しいビジネスを生んで雇用を生み出す、そういうようなサイクルを作り出していくことが、SRIの大きな目的です。事例はたくさんあるのですが、風力発電とうのは非常にわかりやすい例かもしれません。風力発電を普及させることによって二酸化炭素の排出量が地球の温暖化をおさえ、それにと同時に風さえ吹けばどこにだってエネルギーはありますので、地域の活性化にもつながります。なおかつ化石燃料を重視している現在、化石燃料は紛争の火種となっているので、世界の平和にも貢献する。これからこうした雇用は10倍にふえていき2020年には100〜190万人を超える、こうした状況を探してきてどんどん作り出していく、それがSRIの哲学です。

《企業を評価する》

ではこのような哲学に対して企業はどういう評価をしているかというのがこのマトリックスです。私共は自社で企業の調査をすると共に、ストックアットステイク(→以下SaS)という会社と同時に調査を進めています。彼らは企業を評価する指標を持っていまして、その指標にそってABCのランクをつける。我々はどういう評価をしているかといいますと、グッドカンパニー、リーダー、カタリストの3部門に分かれています。グッドカンパニーは文字通り良い会社ということで、基本的に企業がどういう会社であってもほとんどの会社がこれにあたります。リーダーというのは何かといいますと、社会責任を追及することによってますます競合会社よりもっと利益が上がる、例えばその会社が環境問題や従業員の教育に取り組むことによってどんどん格差を広げていく、そういう仕組みを作り上げた企業がリーダーです。カタリストというのはさらに上の、自分達の事業の変革をしていこう、業界の変革者になるという姿勢があらわれているのがカタリストです。カタリストは非常に少ないです。リーダーも非常に少ないですが、ここ過去3年間の企業の動きをみていて、いろんな企業がグットカンパニーからリーダーに上がろうとしています。そういった企業をくまなく探し出してきて投資するというのが私共の投資姿勢です。ちなみに今現在300社ほどの調査を終えた状態で、今年はさらに110社ほど調査する予定です。今年は大型ではない小さい企業を取り上げて、できるだけ調査していく予定です。
 私達の評価というのは非常に厳しいです。私共は、カタリストでありSaSでA・Bランク、またリーダーでありAランクという企業に、重点的に投資をしていっています。カタリストのCランク、リーダーのBCランクの企業にも投資しますが、グッドカンパニーには株価が非常に割安な時に投資し業績が上がってきたら売却していきます。

《協力調査機関》

最後に、私共に協力して頂いている調査機関の話になります。私共はスタート当時から調査体制を変えていっていますが、これからも品質の向上を目指して調査の体制というものはどんどん変えていきます。基本的にはSRIの哲学を守っていくための手段である調査方法というのはどんどん変えていくつもりであります。

SaSというのはベルギーのエティベル社というNGOの傘下にある調査会社です。パブリックリソースセンターというのは、昨年モーニングスター社のインデックスで業界では有名になりましたけれども、ファンド設立当初からお世話になっています。
 こういった調査機関と企業と私共運用会社と、投資家のお客様と、全員で1つの力を持って価値連鎖を作っていくというのが私共の取り組みであります。

〔ゲスト発表〕
 
[未来証券ソーシャルアントレプレナーファンド 小椋広太郎氏]

当社での私の担当は審査ですので、私自身はファンドについての最終的な投資の決定を行っていません。

はじめにソーシャルアントレプレナーファンドというのはどういうものかという話をさせて頂きます。通常のSRIファンドやエコファンドは、日本においては5つの証券取引所とJASDAQで取引されている約3600社(株式公開企業)を対象に、その中から社会的側面とか環境側面及び経済的側面等のスクリーニングを実施して、だいたい100社くらいを投資対象としてピックアップし投資しています。私共のファンドは投資対象が違いまして、株式公開していない未公開企業100万社以上を対象とし、ソーシャルベンチャーやソーシャルアントレプレナーといったような私共として社会にとって意味のある必要とされている、もしくは将来的に社会責任を負える会社に成り得る会社なのかということを判断して投資を行っています。

ここの判断をどうやっているのかというところが皆さんの関心の集まるところだと思います。判断の方法としては、様々なステークホルダーに対する取組みを行っている社会的に信頼できる企業を色々な側面から判断するように思われますが、私共のファンドではもっとストレートに、主観的な基準として、「まずその会社を信頼できるかどうか」というものをもっています。そういうものを根本的な要素として大事にしています。社会的な観点というものはみる人により色々な問題・側面が浮かび上がるもので、私共のファンドの投資する会社が他の人から見れば、本当に社会性なのか社会的責任なのかと疑問に思う会社であるかもしれませんが、それでも私共としてその会社が社会に必要である、もしくは必要になってくるという判断を行えば投資を行います。

ここで重要なことは投資を行った後、どうするのかというところです。投資先企業は証券市場で値段がついているというものではないので、投資後に自由に売買ができるというものではありません。また、投資先企業の状態として良くわからないという部分や不足している点など様々な問題があるかと思います。その中でファンドとしては原則として会社に新規に株式を発行していただき、その新規発行株式に対してファンドが購入するということを行っています。その結果、直接ファンドから投資先企業に資金が入ることになります。通常のエコファンドやSRIファンドですと証券市場から株式を購入することになるので、残念ながら投資先企業に直接、資金が入るということはありません。私共のファンドはそこに最大の違いがあり、企業にしっかり資金が入り、金額についても結構な額で数千万、多ければ億単位の資金になることもあります。これにより、具体的な投資先企業の成長資金となるという効果の他に、ファンドが高いシェアを有する株主になることにより、投資先企業への問題点改善の要請・支援および継続的なモニタリングを行っていきます。

SRIの分類には、スクリーニング・株主行動・コミュニティ投資というのがあるかとは思いますが、私共のファンドとしては、今述べてきた一連の株主行動を重要視することになります。というよりも、投資をするだけではファンドが社会的におよび経済的に何かを生み出すということはほとんどありませんので、様々な場面において株主行動を行っていくことで、投資先企業には未公開企業から株式公開企業になるように支援していきます。その後、広く社会からの評価をいただき、同時にファンド保有株式を証券市場にて売却ができた時に、ファンドの存在意義を確認できるでしょうし、同時に経済的なリターンについても得られるものと考えています。

最後に、私共のファンドは投資先企業だけでなく、ファンド出資者とも密接な関係にあります。通常のSRIファンドのように目に見えない大人数の投資家を集めてファンドを組成しているのではなく、目で見える範囲のごく少数の投資家とともにファンドが組成されています。未公開企業100万社をすべて調査することは物理的に不可能なわけですが、この中から私共の持てうるリソースを使って、継続的にアプローチを続け、その過程において、ファンド出資者にもご同行・ご検討をしていただくことで、会社の技術や信頼性、成長性等を一緒に見つめていくという取組みをしています。このことにより、投資に際してはファンド出資者の意見についても参照しながら、また投資後には投資先企業、ファンド出資者、当社の3者が連携しながら、どうやって成長していき、なおかつ社会的なインパクトをどう与えていけるのかを考え・実践していくという取組みがなされます。この取組みはファンド出資者の意向を極力反映させたファンドであり、今後、一般の方々にも、それぞれの方の投資スタンスをベースとしたオーダーメード型ファンドが組成できればと考えています。

 
[損保ジャパン環境財団 山中千花氏]

普段の私の仕事は、環境分野で活動する若い世代の方やNPOを支援することです。
さて、損保ジャパンでは、合併前の安田火災時代であった99年に「ぶなの森」という愛称のエコファンドを発売しました。エコファンドとは、多くの投資家の方から資金を集めて、そのお金を環境経営を積極的に行っている企業に投資し、その成果を持ち分に応じて投資家の方に還元する投資信託です。

92年から当社は環境問題に取り組んできましたが、社会貢献だけではなく、金融機関の本業である金融機能を生かして、環境問題への取り組みを促進することができないかと考えていました。そこで、エコファンドの日本への導入を思いつくのですが、欧米ではエコファンドやSRIの歴史は長いものの、日本で本当に売れるのかという懸念が、いつ発売するかを決定する最大のネックだったと聞いています。

エコファンドの仮説は、環境問題に積極的に取り組んでいる会社は、中長期的に成長する可能性が高い、企業の価値が上がってくる可能性が高いというもので、この仮説に従って、エコファンドに組み入れる対象銘柄が選定されています。

ご参考までに「ぶなの森」の銘柄選定プロセスを紹介すると、最初にまず環境分析をします。環境経営をがんばっている上場企業を最初に選び、その中から次に財務的な観点から見て、投資する可能性がある企業を選び、最終的には、投資対象として500銘柄程度をあげ、その時々の割安銘柄などを中心に60〜80社を投資信託に組み込みます。
「ぶなの森」の環境評価プロセスは、@広く色々な会社の環境報告書や各種新聞・雑誌などからまず情報収集を行います。報告書は、最初は環境のみを出している企業が多かったのですが、最近は社会性など幅広く情報開示をされる傾向にあります。A情報収集した中から、頑張っていると思われる企業にアンケートをお願いします。インターネットでも回答が可能で、約300社から回答が返ってきます。Bその中から年間に約50社を目標にヒアリングをさせて頂きます。それらの情報を元に、業種内での相対評価をします。

次に、評価項目ですが、まず1つは環境マネジメントの展開度です。経営者の姿勢を見ます。環境経営を進めていくには、企業のトップが環境取組に対して信念を持っていないと、どうしても社内で進めていくのは難しいという現実があります。そして環境方針を定めているか、実行するためのシステムが組まれているかを見ます。2つ目は、環境情報の開示・コミュニケーション、すなわち、環境レポートなどを発行し情報開示しているか、これをもとに社内外とコミュニケーションを取ろうとしているかを見ます。3つ目は、環境負荷・環境効率の改善を見ます。99年のファンド設定時はこの3点を同じウエイトで見ていましたが、最近は1つ目の環境マネジメントは多くの企業で取り組みが進んできており、現在は、3つ目の「その成果が出ているのか」にウエイトを置いて見ています。

エコファンドを設定した時の「環境問題に積極的に取り組んでいる会社は、中長期的に成長する可能性が高い」という仮説には、@環境経営をすると、コスト削減、人材確保、ブランド力向上などにより将来的に競争力が強くなって企業価値も上昇する、A環境経営をすると環境リスクの低減になり、予防の概念も働いて、価値の低下を防ぐといった考え方が背景あります。

一つの事例としてキャノンがあります。キャノンは環境憲章を改定して、「資源生産性を最大にする」ことを明記しています。資源効率の向上は無駄の排除に結びつき、生産活動全体のコストダウンになります。かつてはベルトコンベアー式だったものを、セル方式(1つの製品の組み立てを、1人または数人のグループで完成まで受け持つ)にしたことで、需要に細かく対応できるようになり、需要を見越して生産した半製品の在庫・廃棄が少なくて済むようになり、環境負荷の改善とコスト削減の両方で大きな成果が得られたそうです。このように環境経営がなされる企業の株式でファンドが構成されている「ぶなの森」がTOPIXより良いパフォーマンスを示しているように、仮説が徐々に証明されていくだろうと思います。

では、これだけ良い商品ならば売れているのだろうと思われるかもしれませんが、株式・投資信託残高に占めるSRIの割合は0.4〜0.5%で約700億円程度(’03年3月末、’04年3月末では約900億円)で、そのうち「ぶなの森」が約80億円(‘’04年4月は約90億円)の残高です。ちなみに、日本の家計の資産構成から見ると、資産合計が1,385兆円(’03年3月末)、そのうち預貯金が56%強(782兆円)と大きく、債券・株式は11.4%(157兆円)と割合が小さく、その中にSRIの700億円(’03年3月末)が含まれています。全資産合計から見ると非常に少ないというのが現在です。

しかし、エコファンドに意義はあります。投資家の方にとっては、環境経営に取り組んでいる企業に投資ができることです。「ぶなの森」発売当初、30億円も売れれば良いと思っていた所、約200億円にものぼり、グリーンインベスター、環境に配慮する投資家が存在することを明確に示しました。また、企業にとっては、環境という尺度で評価されることを意識する機会になったと思います。さらに、金融機関である当社にとっては、SRIファンドを日本に紹介できたこと、本業を通して環境に取り組むことができました。

一方、意義もあれば課題もあります。投資家には、SRIファンドを積極的に活用してほしいと思いますし、企業はもっと「企業の社会的責任」に関する情報公開が必要と思います。2003年に環境省が発表したSRIについて日米英の比較調査でも、「SRIに興味がある」と回答した人は80%以上いるものの、「ファンドに関する情報が不足している」とした人が65%強いました。また、金融機関は、投資家の方から支持されるような商品・サービスの開発が必要だと思います。そして、私達は個人として、明日からどうしていったらいいのでしょうか。これは今日のフォーラムで、皆さんも私達も考えていかなくてはならないと思います。


〔フロアからの質疑応答〕
   
Q, ゲストの方々の、プライベートのお金をどう運用されているのか、差し支えなければ教えて下さい
  速水氏:
自分の運用しているファンドに毎月投資しています。それはお客様と同じ船に乗る状況を作り出しています。ファンドの品質を上げていこうというのが私共の長期の目標ですが、実際のファンドのいい部分も悪い部分もお客様と一緒に経験しようという状況を作り出しています。
  小椋氏:
証券会社に務めている以上証券のことをもっとよく知る・勉強するという意味で、株式・外貨預金であるとか一通り金融機関も分散させて小額ずつ買っています。
  山中氏:
「ぶなの森」と自社株は買っております。その他どういう観点で選んでいるかというと、子どもの頃父の田舎でよく遊んでいまして、その地域を応援するという意味で地銀に預けております。
   
Q, ファンドの銘柄になることによって企業の価値があがり、それによって株価が上がるというようなケースはありますか。
  速水氏:
私の持論としては、そこはほとんど関係がないと思います。企業の株価はどうして変動するのかというと、1つは企業の業績、2つ目は、今まで低い成長しかしないと思われていたのが高い成長率を示した時、3つ目は需給、買い手より売り手が多ければ株価は下がるし逆なら上がる、という3つのパターンに分けられると思います。
 SRIに組み込まれて上がるというのは、確かに3つ目の部分では上がるかもしれませんが、例えば大きな年金基金などそういう市場に大きなインパクトを与えるようなところがSRIの投資哲学を組み入れて買い入れれば株価は上がるかもしれませんが、それは業績を反映して上がるということではない。むしろ社会責任的な経営が企業の生き残りのための企業戦略に組み込まれて、業績としてあらわれてそれが最終的に長期的利益となると思います。直接的には関係がないと思います。
  小椋氏:
ソーシャルアントレプレナーファンドではありませんが、別のファンドでそのようなことはあるようです。我々が運用することによって、その企業にとって今までにない大きな資金が入り、そこで例えばフェアトレードですとか店舗展開というような体制が整えられ、結果的に上場するというプロセスになっています。

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