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エコ貯金フォーラム報告書 > 第2部 分科会(貯金型)

1:貯金型分科会

講師:山口郁子氏(中央労働金庫・営業推進部広報室) 

《労金とは》

今日のテーマである「エコ貯金」、つまり環境や社会に配慮して融資を行うことと定義されています。私たち労働金庫はどういう金融機関なのか、そのなかで捕らえている社会的役割とは何なのか、ということをお話したいと思います。

労働金庫は1952年に労働組合あるいは生活協同組合に加盟している方々がお金を出し合って作った労働機関です。一般の金融機関とどこが違うかと言うと、「働く人のお金は働く人の生活の為に使いたい、そのための自分たちの銀行を作ろう」というのが労金の出発です。ですから、企業に対してご融資をするということではなく、あくまで働く人たちの生活、例えば家を立てたい、車を買いたい、あるいはお子さんの教育資金を、というような当時まだ戦後間もない頃というのは、労働者の信用力が無い、お金がなかなか借りにくい時代でした。そういう信用力に乏しい人たちを応援するために労金は誕生しました。そういう点で一般の金融機関とはかなり異なっています。

まず、労金は労働者のための金融機関です。働く仲間、つまり労働組合や共同組合の人たちが作った協同組織、助け合いを理念とした金融機関なのです。次に、労金は営利を目的としません。一般の金融機関と違って営利を目的としない、いわゆる福祉金融機関というポジショニングを取っています。

《労金の新しい試み》

今日の主題でもありますNPO事業サポートローンという制度があります。市民活動の支援、促進を目的としたNPO法人のための融資制度で、2000年の4月から行っております。NPOだからとかボランティアだから良いというのではなく、労金の、勤労者の暮らしを守る、安心して暮らしていける社会をつくるという企業理念に照らし合わせ、地域の中での市民活動を通して地域の課題を解決していく、あるいは社会のさまざまな福祉的な問題を解決してくNPOを応援していく、それは結果として勤労者の暮らしの向上につながるという理念で行っています。労金と同じ理念をもったNPOを応援していきたいということで始めた制度です。それ以外に、預金の利息の一部をこうした市民活に助成を行う財源として寄付をしていただく「NPOサポーターズ」もあります。また金融という面以外では、助成プログラムをもっていまして、まだまだ融資の対象になりにくい、誕生して間も無い、けれども地域の中では非常に意義ある活動を行っている人たちを応援する助成プログラムがあります。金融機能を生かしながら、お金を中心とした支援をしています。

《社会的需要の変化》

皆さんが金融機関を選ぶ時に、良い金融商品があるから選ぶのではなく、その金融機関がどういう理念を持ち、事業全体をどういう方向に進めているのかが、預金者の金融機関を選ぶポイントになるのではないのでしょうか。今社会が大きく変わっています。少子高齢化だとか環境問題だとか、そういう中で預金者は不安を感じています。そういう不安を解決していくためには何が必要なのかという視点が必要です。個人の生き方、価値観、意識が変わってきています。経済的豊かさだけではなく、安心して暮らせる社会、自分が安心して毎日を暮らしたい、といった、物質的満足感から精神的満足感を求める時代になってきました。こういう個人のニーズにどう金融機関が対応するのかという視点が必要です。労働者という人々に対しての金融機関というものをもう少し社会に開いていくために、98年の12月から労金もNPO支援に着手しました。事業としてはまだ脆弱なNPOに対して融資をしようという厳しい道のりでした。金融機関としてはそういう事業体には融資をしたことがありませんでした。一年間かけてNPOというのはどういう組織なのか、どういう金融ニーズがあるのか、ということを一つ一つ研究をしました。NPOが抱えている課題をみてみましたが、ボランタリーな市民活動ということで期待はされているが、お金がない、人材が集まらない、組織力に乏しい、それから社会的地位にも乏しく、お金を貸してもえる信用がない。期待されているNPOですら金融機関から資金やサービスをうけられない。私たちは市民活動が行いやすい社会基盤を整えるために金融機関として何ができるのかを考え、やはり融資をしようと決心しました。

《サポートローンについて》

今労働金庫で進めている融資制度「NPO事業サポートローン」を簡単にお話します。NPOは事業体として非常に小さいものが多くあり、12月の時点でNPO法人という法人格を持っているのは1万5、6千となっています。事業規模として500万円を満たない事業団体が圧倒的に多いです。そういう小規模の団体に対して、投融資をしていくことをメインに考えています。ですから無担保ローンとしては500万円までのご融資です。また、そうではない事業団体では何億という大規模なものも多くなってきました。そういう点では、金融機関として、例えば預金や土地を担保としてもっと高額な融資を受けたい、福祉施設を作りたい、環境教育をしたい、などのさまざまなNPO活動に必要な資金を融資していきたい。預金や不動産を担保にした場合は最高で5千万円までの融資が可能です。

では、どういう需要があるのか。例えば、現在融資した事例として、ホームレスの問題があります。彼らは様々な事情で現在に至っています。例えば地域から出てきて不景気によって職を無くしている、働きたくともなかなか見つからない。地域の中で働き口がない、住む場所がない、路上で生活せざるを得ないなど、こういう人々の自立を支援しているNPOに対しての自立支援型の居住、住宅の建築資金が必要です。また、高齢者のための福祉活動、在宅介護などの地域の中での拠点。これは、ベネッセだとかの大企業が行っているものとは一線を引く、もう少しアットホームで小規模な、それから介護保険という保険制度だけには拘らない、本当にフェイス・トゥ・フェイスで地域の中で高齢者をケアするという志を持って取り組んでいる方々の建設資金、あるいは人件費に融資をしています。

融資をするとき拝見するポイントがいくつかあります。経営者の判断、例えばどのようなミッションを持っているのか。労金は、金融機関としては当たり前だけれども返せるのか返せないのか、儲かっているのか儲かっていないのかだけではなく、新しい融資の評価の視点としては、その団体がどのような社会的活動をしていきたいのか、ということを大事にしていきたいと考えます。社会性を計る基準を大きくわけると、経営評価、組織運営の評価、事業の社会性評価、そして財務内容の4点を上げています。経営評価は、その団体がどのような事業目的も持っているかです。組織運営は、理事会がきちんと民主的な運営形態をとり、働く人たちも運営に対して意見を言え、満足いく働き方をしているかです。それから事業そのものが地域の中で、地域のどのようなニーズに応えているか。市民活動がどのように社会に接しているか、という観点です。まだまだ試みの域を脱していませんが、中央労金の実績としては1億3千万円くらい、全国の労働金庫としては、5億円ぐらいの融資をしています。

《貸し手の意識》

NPOの様な社会では新しい組織を育てていくには、金融機関サイドでもまだ多くの課題があります。まず、「働く人の為のお金」という理念はありますが、この原点に立ち帰る必要があります。何の為に金融活動を行っているのか。労金の「勤労者を応援したい」という理念と、NPOの行っている活動とが一致しているということ。そして、貸し手がそれを意識すること。いくら企業が崇高な理念を掲げていても、融資をする側一人ひとりの意識がなく、本当に貸したいと思わなければ、絵に描いたもちになってしまう。貸し手として社会の中でどういう責任を持たなくてはいけないのか、という貸し手側の責任意識も求められています。社会に優しい、環境に配慮した金融ビジネスを行っていく際には、ますます貸し手の意識が問われてきます。

《新しい「目利き力」》

いわゆる担保至上主義と言われているように、「お金があれば貸す」「儲かっていれば貸す」というような必要な時に貸さない金融機関ではなく、社会的意義がある活動や、規模は小さくても経営基盤がしっかりしている団体を見極めて融資をしていく、「目利き」と言ったら分かりやすいと思いますが、金融機関としての融資ノウハウ、「目利き力」を金融機関はもっと蓄積していくべきではないでしょうか。NPOやボランティアグループのような組織は融資対象としてはまだ新しく、どう見極めていくかが課題です。

労働金庫という事業体だけでは地域でどのような活動が行われているかがわかりません。そこで労金は、地域の中間支援組織と言われるNPOを応援するためのNPOとの連携や、情報交換を行っています。水口さんは税理士や会計士とネットワークを作っていますが、労金でもNPOを応援する税理士や会計士と金融機関がコラボレートしていこうとしています。貸し手側も、単一のネットワークではできないことを求められています。労金はまだ2、3年しかこうした活動を行ってはいませんが、これからもそういった幅広いネットワークを広げて、地域のニーズは何なのか、そのニーズに対してきちんとした対応をしている事業体を地域の中で育てていくという視点を磨きます。そのなかで必要な融資ノウハウなどの金融機関としての新しいスキルの蓄積が求められています。

《労金ができる新しい取り組み方》

金融機関にとって最も悩ましい事は、リスク転換の問題です。NPOは事業体としてまだまだ脆弱です。また、営利を目的としない団体もあり、金融機関から見ると、分かりやすく言うとあぶなっかしい、いつ倒れてしまうかわからない存在です。そういう社会的には有用だけれどもいつ倒れてしまうかわからない団体を応援するためには、金融機関のみで担うリスクとしては非常に大きいので、分散の仕方を考えます。NPOを応援したいという人たちが、お金を出し合いファンドを作って、直接貸すのではなく、ファンドを債務保証するお金として金融機関に貸す、というような新しい研究も進めています。つまり、預貯金型、投資型とカチッとした区別ではなく、預貯金型と投資型のコラボレートが求められているのではないでしょうか。既存の金融機関もそういった新しい地域のニーズに答えていける金融商品を研究していくことや、その融資を進めていくために必要な、事業体としてのリスクをカバーするための、もう一つの金融のシステムを作ることが求められています。

金融機関としてもうひとつ求められている事は、地域の事業体を育てることです。直接金融サービスを提供するだけではなく、例えばマネジメント能力を鍛えるための場を提供する、あるいは同じような活動をしているNPO同士がネットワークをしていく場を作っていくなど、私たち企業が応援していく。市民活動を応援するという役割は、金融機関としての能力を私たちが発揮していくことと、企業としてできる社会貢献という領域なのではないでしょうか。

借りる側の問題もあります。世に出たばかりで、脆弱さのある市民団体の方々は、金融機関と対話の仕方や、金融機関からサービスを受けるために必要なポイントを、なかなか上手く話せません。自分達はどのような活動をしていて、どのように資金を集めて何に資金を使ったのか、これからの事業をどのように行っていくのか、そのために具体的に何にいくらの資金が必要なのか、ということをきちんと説明できないと、金融機関は審査できません。金融機関と対話をするためには共通の言語が必要です。労金では、融資の審査を専門的に行う審査部があります。私が広報室として担っているのは、そうした共通の言語を持っていないNPOの人たちと審査の人たちとの通訳の役割です。新しい金融機関の課題として、そうした貸し手と借り手の中間を担う人材を育成していくことが必要だと思います。労金でもまだまだそういった人材が足りない状況です。人材育成の問題は労金でも重要な課題となっています。通訳をする人たちが居ないと、自分たちに何が必要なのか金融機関に話せない。審査する側は、ちゃんと話せないと貸せませんよ、と距離が縮まらないのです。接着剤のような役割ですね。ですから、どのような活動をしているのかを、金融機関の欲しい情報に変換してあげる、そして始めて30件近くの融資が実現しているのです。私たち広報室のやっている仕事がなければ非常に難しい。今、労働金庫は全国で13労金がありますが、9つの金庫でNPO融資をしています。9つの全てで核となる人がいて、その人がコーディネートしています。

最後に、私たち金融機関はそういう志しをもって新しい領域に入っていきたいと思います。私たち金融機関も預金者の方々にきちんと伝えていかなければならない。そこで、ディスクロージャーの必要性があります。今ディスクローズしていることは、金融法で求められている基準がありますが、その基準通りに公表しただけではなかなか預金者の方々には分かりにくいのです。ですから、こういう冊子などを作って皆さまに分かりやすい言葉でご説明したい。また、特に労金の場合、働く人たちのお金を働く人たちのためだけに使うと約束してできた金融機関ですから、特にこうしたNPOへの融資は、どのように使われたのか、その事業体がその資金によってどのように成長していったのか、その融資した先の成長を皆さまにお伝えしていく、という独自のディスクローズも必要なのではないのかと思います。また、預金者の方々の力が、金融機関を育てていく、と私は考えています。つまり、預金者の皆さんがきちんと満足感を得られるディスクローズをしない金融機関には預金をしないという預金行動を起こせば、自ずから金融機関は選ばれていくと思います。ですから、トータルとして皆さん預金者が金融機関を選んでいく目きき力が、金融機関がいい金融サービスを提供する、いい金融商品を開発していく、ということに繋がっていくのかなと思います。

《声の伝え方》

最後に、実は笑い話のような話がございまして、労金がこうした市民活動を応援している金融機関だ、ということで、ある環境NGOの方がですね、労金の口座を作りにきていただいて、もっと福祉の分野だけではなくて、環境の面も応援してほしいということを窓口の者にとうとうと話したそうなんですね。そうすると窓口の人間はびっくりするわけですね、確かにNPOを応援している、ボランティアも応援している、だけど窓口に来ていきなり捕鯨が問題だとか言われるとびっくりしてしまう訳ですね。水口先生のお話にもありました。一人の声を一人にぶつけても駄目なんですね。それを私たち金融機関に対して、もっとこういうサービスを作ってくれ、もっとこういう金融機関であってほしいという声はどこかでまとめてほしい。それが、アシードがあったり、その他の団体があったりするのかもしれません。このフォーラムは、まさにその一人ひとりの声を大きくする場なのだと思います。それは、預金者が金融機関と対話するときの声の伝え方、というものがあると思います。預金者として、金融機関としてこうあってほしいという意見を積極的に伝えていただければと思います。

<事例紹介>

〔ゲスト発表〕
 
[サイバーシルクロード八王子推進協議会 原田親一氏]

八王子をはじめとする東京の多摩地域、埼玉県南部及び神奈川県中央部まで含めた南北に長いエリア(国道16号線に沿った地域)は、エレクトロニクスをはじめとする先端技術産業、研究開発型企業が数多く集積しており、アメリカ・シリコンバレーの2倍のGDPを有するといわれております。しかし、これだけすごい中小企業の宝庫でありながらしっかりした評価がされていない。どこに問題があるのかと考えたときに、互いに結びついていない、互いに知り得ていないという課題を抱えていることも判明しました。そこで、八王子および周辺地域における「企業のネットワーク作り」から取り組み始めたのが、「サイバーシルクロード・八王子」構想推進協議会です。

地域の企業、大学、八王子及び八王子商工会議所が一体となった取り組みであり、経済産業省の応援もいただき、その財源は、国と地元八王子市から2分の1づつの補助により運営されています。現在、3年目を迎え、活動もようやく軌道に乗りつつあり、来年度(4年目)以降の財源をどうしていくか、運営主体の自立化に向けどのように発展させていくかといろいろ苦心しながら、日夜まい進しております。

場合によっては、法人化することも一法と考えられます。構想を推進するにあたり、直接収益を得ることは難しいことも事実ですが、我々の取り組みにより、企業が更に発展し、地域の活性化に繋がると考えております。一方、「何でやらなきゃいけないんだ」ということの周知の苦労については、多分皆さまと同じだと思います。

ところで、「最近、金融機関も変わってきた」、「地域貢献ということに関し、とても積極的になってきた」と感じております。昨年も多磨中央信用金庫が地域にいかに貢献していくかということを検討される中で、地域貢献の1つとしてサイバーシルクロードの活動を全面的に支援(具体的には、活動拠点の提供)したいと持ちかけてくださいました。交通至便の広い場所を使わせていただく中で、地域に熱い思いを持つ方が集まる場所なっております。更には、八王子信用金庫、西武信用金庫、みずほ銀行、UFJ銀行等、どうしたら地域に貢献できるかを真剣に検討されております。皆さまの預金と関連深い金融機関が地域に目を向けてきていることは、大変に良いことであると考えます。

 
[日本政策投資銀行 藤田寛氏]

日本政策投資銀行は、いわゆる政府系金融機関です。日本政策投資銀行という名前は知らなくても、日本開発銀行という名前を聞いたことがある人は、いるかも知れませんね。4年と少し前に、いわゆる行政改革の一環で新しい銀行になりました。
新しい銀行になった時に、三つ理念を掲げました。一つは経済活力の拡張で、新しい技術の開発や、専門技術の入手などです。最近ですと、企業のリストラも入ります。経済を元気にするためにやらなきゃいけないこともある訳です。もう一つの理念は、豊かな国民生活の実現です。その一つの要素が環境でして、環境への取り組みをしている企業の格付を試みています。CSRとかSRIが話題になっている中で、企業と環境、あるいは地域社会などに対してどういうことができるかということが、非常に重要になってきます。三つ目の理念は自立型の地域の創造です。日本の地域というのは、国からいわゆる財政トランスファーによってお金をもらうことによってしか自立できない地域が在り過ぎるといえます。北海道、四国、九州など、数多くの地域があてはまります。国にも地方政府にもお金がありませんし、民間にもありません。そういうところがどうやったら自立できるのか、そこを考えるのが我々の仕事です。原発や不動産を扱いますし、六本木ヒルズなんかも相当我々の金が入ってます。日本経済というものは、高いところにある世界と地域に密着したところにある世界の両方があって、我々は1300人しかいませんが、その全てを何とかしようとしている訳です。

地域の問題を考えた時、お金の流れというものが非常に大事です。我々の原資は、自分たちで債券出して一般から集めることもしてますけれども、いわゆる財政投融資という国のお金が主です。我々はその意味では、自分で集めてない。「入り口」をほとんどやっていない。国が集めたお金を出す方、「出口」だけを専門にやっている。ある意味では金融機関としては、完全な機能を備えていない金融機関です。出口の方が、色々問題あります。エコ貯金というのは、多分入り口の問題なんですね。我々は出口をどうするか、儲かるかどうかが大事になってきます。NPOにはお金が回らないという発言がありました。皆さんに良く理解していただきたいのは、動機が非営利であるという点です。我々も政府系金融機関ですから別に営利を目的としません。しかし、やることは基本的に融資です。

融資とは、お金を使ってもらうために、金利をもらいながら元本を返してもらうことです。あげてしまうのは融資ではない、それは寄付です。「非営利の融資」とは、「返ってこなくてもいい融資」とは全く違います。ここをまず理解してほしい。良いことをやっていれば、返ってこなくてもしょうがないというわけでは決してない。それは絶対に組織として、金融機関として、持続できません。

この判断をどうするかが、最大の問題です。NPOというのは小さいというのもある。情報が十分に伝える能力もない。労金さんのように地域に密着して、こうしたネットワークを持っている組織ですら難しい。

偉そうなことを言っても、我々は1300人しかいません。1300人で北海道から鹿児島までカバーできる訳が無い。普通の人は、わからなかったらお金貸しません。信頼感があるから貸すのです。もちろん銀行はデータを見ますが、でもまずそれ以前に信用できるかどうかが全ての基本です。

「神戸コミュニティクレジット」という事例があります。神戸の震災でひどい目にあった企業の皆さまが集まってできた仕組みです。お互いにわからないから貸せないという問題は、なかなか解決しにくい問題です。特に小さな会社は、わかってもらうようにするためにお金もかかるし、ノウハウも要るし、人も要ります。そこで、その人たちでグループを作りましょう、まずお金を出し合いましょうと決めました。ここでは、震災にあった会社さんが15社集まってみんなで合計5千万円出し合っています。

信託勘定という「金庫」のようなものだと思ってください。この中に5千万を入れます。で、15社ですが、このうち6社だけがお金を今、必要としています。6社合計で1億円必要でした。そして融資を必要とする6社に、この信託勘定が金を出すという形を取りました。ここで貸す・貸さないという判断を誰がするかというと、この15社がするのです。15社が自分たちでする。この15社は当然同じ神戸でひどい目にあって商売をしてきた人たちですから、お互いがお互いを知っている訳です。この15社はお互いに決算を見せ合ってるんです。このような信頼関係つかって、この信託勘定に利益が戻ってくるって仕組みができました。

もう一つ大事なことは、融資後のサポートです。やっぱり小さな会社っていうのは駄目なところもある訳ですよ。だから色々サポートしなければいけない。そのサポートをこの15社の中で考えざるを得ない。それは自分達の5千万を無くしたくないからです。自分のお金を守るためには6社にしっかり事業をやってもらって返してもらわなければいけない。それができるように、お互いに支え合うような、ただ甘いことだけではなく厳しいことも言いながら、なんとかお金を返せるような仕組みを作って、最終的には銀行にお金が返ってくるのです。当然金利を銀行に払いますから、資金を出した側には、利息がちゃんとついて戻ってきます。奇麗事だけじゃなくて、お金の話でもあるということです。


2:フロアディスカッション

司会: 残りの時間では二つの話がしたいと思います。一つは融資先に(行くお金を)増やす、出口を広げるためには何が必要か。もう一つは預金者の信頼を増やし、入り口を広げること。まあ、分けなくても良いかもしれませんが、この入り口と出口との二つを広げるためにアイデアなどがあったらお願いします。
藤田氏: あまり入り口の話をしてないのかなと思います。エコ貯金とは、自分の預金がどういうものに使われるかを考えることでしょう。自分のお金の行き場に対して皆興味を持ち始めている。最近はミニ公募債やエコファンドというものがあります。要するに、皆が自分のお金の行き先に興味を持ち始めている。今日はその中でかなり関心の高い人たちが集まっているのだと思います。間違ってほしくないのは、誰もそのお金が無くなっていいと思ってないということです。無くなっていいというのは、寄付です。そのお金って個々人の問題ですね。税金だって個々人のお金であって、国から出ている訳ではないです。そのお金はどこに行けばよいのでしょうか?エコ貯金をする人が、良い事だからとどんどん流してしまうと、無くなってしまう訳です。
司会: 良い事だからと、無くなってしまった例があるのでしょうか?
藤田氏: いくつかのNPOで、債券の形で関係者を中心にお金を集めています。債券の期限が来たときにきちんとお金を返せたかというと、そんなにお金になる活動ではありませんから、半分以上は返しましたが、残りはお金を出した人が返さなくても良い、ということで寄付になりました。これは、返ってこないと困るお金だったのか、そうではなかったのか、非常に曖昧な領域のお金だったんだと思います。
藤田氏: お金を必要とする人に、信頼が無い状態をどうしていけるのかについてご意見をお願いします。神戸の話は経済的、経営的に信頼を作る仕組みだったと思います。そういった人情に訴えない信頼の作り方って他にあるのでしょうか。
司会: お金を必要とする人に、信頼が無い状態をどうしていけるのかについてご意見をお願いします。神戸の話は経済的、経営的に信頼を作る仕組みだったと思います。そういった人情に訴えない信頼の作り方って他にあるのでしょうか。
山口氏:

良いところに貸しているから労金は良い、というのは違いますよね。労金がNPOに融資しているのは全体のごく小額の融資しかしていないのです。具体的にいうと、13兆円中の30件です。本当に数字にならない数字でして、私たちはそれで良いことをしているとは思っていません。新しい地域のニーズに答えていくお金の流れを作るためにNPO融資がある訳ですが、逆に住宅ローンとか車を買うためのローンなどこそが、人が生活していく上で絶対必要なお金の流れだと思います。ですから、NPO融資だけがSRIではなくて、働く人のための家を建てるお金だって私たちにとってはSRIだと思っています。こちらは良い仕事、こちらはそうでもない仕事というボーダーを引いていません。

最近私たちが着目しているのは、高齢社会というキーワードです。高齢者が地域に対して働ける場所としてNPOはあると思います。高齢者になって自分が住みやすい地域で、住みながら働ける町づくりに労金も応援したい。そのための金融力と職業能力を高めていくための社会貢献が、何かできないかなと考えています。

大企業がやる大きなビジネスだけではなく、コミュニティービジネス、SOHOとか、いわゆる市民事業などの要求に答えて、自分の生活に、あるいは人にとって必要なソーシャルサービスを自分で作っていくという社会を応援する金融機関でありたいと思います。

原田氏:

エコ貯金は良いことだけれども、良いことで終わってしまってはいけないと考えます。大事なことは、可能なことから一歩一歩着実に進めていくことです。それには、先程の話にもあったように、ATMなどの利便性も必要ではないでしょうか。脆弱だからお金を貸そうじゃなくて、脆弱なNPOを例えば法令等で支持していくとか。小さなNPOも大きな企業も社会を良くしようという思いは全く変わらないと思います。ただ、思いはあってもお金がない、人がいない、といった理由で、出来ないいというのが、中小の現状です。

解決に向けて、入り口も大きくし、出口も大きくしなくてはいけないと思います。出口を大きくするためには、二つあると思います。一つは金融機関側の課題、具体的には金融機関が目の利く体制を確立するということです。宝の山は一杯あるのですが、貸し先のビジネスモデルや技術等がわからないのでお金が回らない。二つ目に、中小企業の存在が十分に世の中で知られていないことだと思います。例えばSONYのウォークマンは、ほとんど中小企業の技術によって成り立っております。技術を持っているのは、実はあまり知られていない中小企業ということが多々見受けられます。この事実を世間(金融機関)に幅広く周知していくことが重要となり、そのためのネットワーク作りが重要と考えます。

藤田氏: エコファンドもかなり売れましたが、対象となっている会社はほとんど大きい会社です。でもそれは、余裕があるからできるのです。日々の資金繰りに追いやられている中小企業に環境配慮なんて言っても、「それよりもまず明日の金が」というのが世の中です。できる人がやればいい、できる人が始めていって、それをみんなに広げていけばいい、というのが非常に大事なのです。

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