サンロケ多目的ダム・プロジェクト
最終更新日
概要
水力発電で、鉱山採掘や輸出農業、輸出工業、観光業等のために安定した電力を供給することがダムの主要な目的。水力発電以外の目的としては、パンガシナン平野87,000ヘクタールの灌漑、洪水の制御、鉱山からの廃水の水質改善、清潔な飲み水の提供などを挙げている。
場所
フィリピン、ルソン島、パンガシナン州、アグノ川上流
開発主体
サンロケパワー社。出資は丸紅(42.45%)、アメリカのサイスエナジー社(50.05%)、関西電力(7.5%)。なお、事業の総工費12億ドルのうち約7億ドルを日本の国際協力銀行(JBIC:当時は日本輸出入銀行)が融資している。
経緯
マルコス政権時の1970年代に計画されたものの、当時の経済・政治状況悪化のために実現せず、見送られた経緯がある。1998年10月、日本からの資金によって、膨大な費用を要するこの計画が復活することになった。2002年8月、ダム湖への貯水が開始され、2003年5月に発電部門の商業運転が開始されている。これに対し、2003年6月、反対運動を行なってきた地元の住民らや先住民族の団体がNGOとともに、融資者であるJBICへ、真の問題解決に向けた「独立評価調査の実施」と「同事業への残りの融資10%の拠出停止」を求める要望書を差し入れている。
問題点

現地住民やNGOなどが、流域住民の生活状況の悪化や土砂堆積による上流域の村への影響といったサンロケダムの問題点を訴え続けてきたが、それに対し事業者は、生活補償や生活再建計画などを提供し、それで問題の解決は十分としていた。しかし、ダム建設の着工以来5年が経った今でも、問題は解決されないまま残っている。

建設現場周辺や下流では、農地や砂金採取地の喪失により現金収入の手段を奪われた人々が、事業者の用意した再定住地で水・電気代を払えなくなり「再々定住」したり、学校に通 えない子供が増加するなどしている。

また、サンロケダム上流の町では、同町で暮らす先住民族の人権の保護や川の土砂堆積の防止などの条件が満たされていないことから、2003年3月、事業の承認を撤回する決議の採択を行なっているため、関連自治体の承認を事業推進の要件とする地方自治法にも違反している。

しかも、契約がフィリピンにとって非常に不利な内容となっており、フィリピン電力公社は不当に高い固定料金を維持管理費等としてサンロケパワー社に支払わなくてはならないので、大きな負担になっている 。

出典

FoEjapan「サンロケ・トップページ」
http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sr/index.html


FoEjapan「サンロケダムプロジェクトとは」
http://www.foejapan.org/old/aid/jbic02/sanroque/background.html#second

調査日:2003年6月28日

 
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