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第1回ボランティアコーディネート術
第1章:A SEED JAPANの活動
第2章:A SEED JAPAN流ボランティアコーディネートの特徴
第3章:ボランティアコーディネートの実際の流れ
COLUMN

【第1章:A SEED JAPANの活動】

1.はじめに
あるコンサートに参加したA SEED JAPANのメンバー数人が、場内に散乱する大量のごみを目の当たりにし、「なんとかしたい」という動機から始まったのが、2004年で11年目を迎える、野外イベントの環境対策活動だ。これは、ボランティア関係団体を対象に、環境に負担をかけないイベントのボランティアコーディネートはどのように作られるのか、何を大切にしてボランティアのコーディネートを行っているのかを、私たちの経験を元にまとめ上げたものである。そしてボランティアコーディネートの紹介のみならず、ボランティア、来場者など、様々な視点からこの活動について感じることを率直に語ってもらった。

私たちは、大量生産・大量消費・大量廃棄を推進するイベントではなく、より多面的でオルタナティブな視点を大切に様々なイベントの環境対策、企画制作、運営やコーディネートを行ってきた。そして環境 NGO としての独立した立場から、主催者と対等な関係での共働制作を、第一のポリシーとしている。 イベント会場での環境対策は、会場で廃棄されるごみの削減やリサイクルを「参加型」で実践するものである。来場者やスタッフの代わりに「ごみ清掃」を行うのではなく、イベントに関わる全ての人々の間の、環境保全へ向けた協力体制をコーディネートすることが私たちの目的である。今後も、私たちは若者の行動力や主体性を引き出す「自分のことは、自分でできる」キャンペーンを実施することで地球に優しく、人に優しいイベントの創造に挑戦しようと思う。また、分別やリサイクルを非日常というイベント会場で行うだけでなく、来場者が日常に戻った時にも、環境に配慮したライフスタイルを実践することができるきっかけを、様々な方法で提示していきたい。 私たち人間の生活様式や消費形態を改めて問い直すとき、ごみというたった一つのテーマが、どれだけ多くの問題を浮かび上がらせてくれるのかということを、主催者や来場者と共にこれからも考えていけたらと願っている。



2.環境対策活動の紹介
日本に多くの野外イベントがある以上、その数の分、環境負荷はかかります。その対策を、清掃業者ではなくて、独立したNGOが担うことに意味がある。それが私達の主張であり、過去8年間の活動の中で、野外音楽コンサートを中心に大小合わせて50回以上に及ぶイベントで環境対策を行ってきた。主催企業との対等なパートナーシップを構築し、そのイベントをクリーンに、そしてすべての人が参加者足り得る仕組みを10人〜300人のボランティアと共に創造するのである。

6年前から協力関係を結び、日本最大の来場者規模を誇り世界一美しいと謳われる「フジロックフェスティバル」(主催:(株)スマッシュ・以下FRF)を例に挙げれば、150万平方メートルの会場に、5つのステージに6つのエリアがあり、音楽があり、食事があり、排泄物の処理があり、寝る場所があり、開催期間の3日間で10万人が訪れる、縮小された一つの社会ができるといっていい。その中で、当然発生するごみの問題は、来場者自らが取り組み、そして、主催者も、飲食屋台の出店者も、同じ町に暮らす者として一人一人が取り組んでいくべき当然のことであって、清掃業者だけに任せられるものではない。「自分のことは自分でできる」。つまり、イベントに関わるすべての人間がごみを考え、減らす努力をする手助けをしていくこと。それが私たちの活動である。
具体的に、私たちが行っていることは、ボランティアを数百人コーディネートし、イベント会場内に設置したごみ箱で、来場者にごみの分別を促し、そこで回収した資源ごみの7割はリサイクルをするものである。加えて、来場者参加型キャンペーンと題し、楽しみながらリサイクルに参加できるシステムを実現し、又、回収したペットボトルでリサイクルアートを創る。

音楽を楽しみながら活動を行うボランティアの存在。ボランティアはその多くが、音楽が好きな若者である。どのようなきっかけを持つにしろ、自主性を持って活動に参加したボランティアの存在が、同年代の若者を惹き付け、そして先頭に立って来場者の意識を動かして行く。 野外コンサートの主な来場者が、十代、二十代の若者であることを考えれば、彼等が自主性を持ってこれからの社会に参加していくことは不可欠だと言える。私たちは「参加型」という言葉を多用する。非日常空間である野外のイベントでは、来場者が主役になり、その為に彼、彼女たちがごみのことを自ら考えられる仕掛けに参加することで、自分たち一人ひとりが社会を創っていく市民だと認識できるに至るのである。 音楽のこと一つ取ったら提供する側と提供される側。だけど、ごみを考えるのは、みんな同じ。そのスタンスによって、イベント主催者と来場者との有機的な繋がりを生み出し、平和的な空間に会場を維持することを可能にしている。 野外イベントでの活動を通して私たちが伝えていくこと。それは、無限の可能性を秘めた未来の社会の参加者に、考え、実行に移すきっかけを与えていくことなのである。



3.著者の紹介

羽仁カンタ A SEED JAPAN:理事 
東京ボランティア・市民活動センター:運営委員
1964年東京都生まれ 東京都渋谷区在住

全米学生環境行動連合の派遣で1991年9月留学先の米国より帰国。地球サミットへ向けた国際青年協力キャンペーンの日本窓口としてA SEED JAPANを設立し、代表を務めた後、現在は理事として青年の活動をバックアップ。国内での青年環境活動の活性化を目的に様々な企画を行い、94年度には全国青年環境連盟の設立に貢献する。
96年〜98年度まで市民活動のサポートを行う民間非営利団体「POWER〜市民へ力を〜」を設立し代表を務める。POWERでは、草の根で活動するNPOを対象に活動のノウハウを中心にしたトレーニングなどを行う。
96年〜98年度まで環境庁が設立した環境パートナーシップオフィスのNGO側の職員としてとしてNPOサポートを担当した。98年より日本外国語専門学校の国際ボランティア学科の講師として「NGOの経営管理」「地球環境概論」の授業を持つ。
94年よりレゲエジャパンスプラッシュ、Rainbow2000、Fuji Rock Festivalなどの大規模野外フェスティバルにて、ボランティアを組織し、ごみの削減、リサイクルなどの環境対策事業を開始した。野外イベント界を環境に配慮した形にしていく活動の草分け的存在で、99年度から飲食容器の使い回しを行う「Dish Re-use Project」を開始した。日本各地で「ごみゼロイベントへの挑戦」と題した講演会を開催している。主な著書に「NGO運営の基礎知識」アルク出版がある。


4.関係者へのインタビュー

・ 観客インタビュー
〜観客の人たちには、私たちのボランティア活動はどう映るのだろう? Fuji Rock Festival'99(以下FRF)の会場で聞いてみた〜
  • これから毎日分別するからね!! もう街でたばこ吸わないよ!! 僕たちもちゃんと携帯灰皿持ってるからね。レイバーの基本でしょ。落ちてるごみとか拾っちゃうしね。また来年もここ使えるように僕らも気をつけるんで、頑張りましょうよ、お互い。フェスティバルがあるのは、今のところアシードのおかげだからね。(FRF会場内ステージ「Field of Heaven」にて)

  • いま分別の種類が、めちゃめちゃあるじゃないですか。もっとちゃんとしなくちゃなって思うんですけど、普段はあまり分別してないですね。どれが燃えてどれが燃えないのかって分かりづらいですよ。だからボランティアがいてくれた方が助かりますね。でも今日、あれは持っておきたいなと思った、携帯灰皿。この間買おうと思って、高かったからやめたんですよ。でもここ来たら結構みんな持ってるじゃないですか。この前スマッシュ(主催企業)のホームページ見てたら、ごみは自分で片付けましょうってがんがん書いてあって、ほんとにやってるのかなって思ってたんだけど、ここまでちゃんとやってるとは実際思ってなかった。(ごみ箱前にて)

  • ボランティアの人達は、多分堅苦しいこと考えずに、ただみんなで一緒にやるって言うことに対しての達成感とかもあるだろうし、友達も出来たりして楽しいと思うんですよ。だから僕も興味があるし、やれればやってみたいと思ってるし。(FRF会場内Green Stageにて)

  • 自分は「ボランティア」って言う言葉は好きじゃないんですよ。なんかこう、自分の気持ちからやりたいとか、そう言うのが好きなんで…。ボランティアしてるんだっていう、そういうのは好きじゃないなって。(FRF会場内Green Stageにて)
・ ボランティア・インタビュー
〜高校生、大学生、そして社会人も参加したFuji Rock Festival'99のボランティア。それぞれが感じた自分のボランティア体験を話してもらった〜
  • お客さんのマナーがすごく良くて、驚いてます。朝になって会場の清掃をしたんですが、全部のごみが、ごみ箱の場所に固められていて、みんな協力的だなぁと思いました。今日も朝から、足でペットボトルをつぶしてるんですね。そうすることによって半分くらいの容量になるんですけど、それを若い16、17才くらいの男の子達がおもしろがって、一緒になって潰してくれたりして、みんなで楽しくリサイクルしています。すごくいい感じだと思います。(男性 37才 アースデイ2000呼びかけ人)

  • 最初は「ボランティア」って堅苦しいイメージあったんですけど、やってみると、結構仲間も多いんで、学校の修学旅行に行っているような感じです。「ボランティア精神」って言うのはよく分からないんですけど、楽しくやれて、しかもいいことができてると思うと、なんか楽しいなって思えてくる感じです。(男性 高校生)

  • はじめは音楽を聴こうと思ってきました。でもボランティアをやってみて、塵も積もれば山となるというか…。僕らがやって、周りのお客さんもそれを見て分別してくれたら嬉しいし、そういうの見ているの好きですし、やって良かったと思っています。ご苦労さんとか言われると、すごく嬉しいですよ。(男性 16才 高校生)

  • 友達に誘われて、軽いノリで来ました。説明会ではきついぞって脅されてたんですけど、実際はそこまでキツくはないんで…。(お客さんは分別を家で)実際はやらないと思いますけど、少しずつでもね、変えて行けたらなとおもって自分もやってます。見たいアーティストは見てないですけど、楽しいです。(男性 19才 高専)

  • ボランティアには、ホスピタリティーとか、相手を思いやる心の要素が不可欠だと思います。たとえば私たちが予定通りのボランティアを集めて、広い会場で計画通りのマニュアルに従って、円滑に進行したとしても、ボランティアやスタッフ同士の相互の心のふれあい、通い合いがなければ「盛り上がり」に欠けることになって、真の意味でイベントが成功したとは言えないと思うんですよね。(男性 1996−2000 ボランティアコーディネーター)

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【第2章:A SEED JAPAN流ボランティアコーディネートの特徴】

1.単なるイベントのためのボランティアではなく、思想的にしっかりとした活動母体がある
第一章で紹介したとおり、A SEED JAPAN・環境対策事業部のボランティア活動は野外で行われるイベント、フェスティバルにおけるボランティア活動である。もし、私たちがイベントだけのボランティア活動を行っていたら今のような成果は得られていないであろう。企業やボランティアとの対等な関係や観客参加型の企画を打ってこれたのはA SEED JAPANが環境団体としてしっかりとした活動を持っているからだ。単なるイベントのボランティアではなく、社会変革を担う青年を育て、長期的な戦略を視野に入れている。

また、様々な社会問題、とりわけ環境問題に取り組むときに、問題の症状に対して対症療法的な活動を行うのではなく、問題の根本的な原因を探り、その原因の解決に努めるという、母体組織の方針がある。又、国連などの国際会議への参加や発言、そして世界の青年と連帯する非暴力直接行動など国際的な運動を背景に、より持続可能で、対等な人間関係がある社会を視野に根本的な原因の解決を大切にしている。より斬新で画期的な企画を立案してこれた背景には、10年の歴史とA SEED JAPANの使命、理念がある。そして同じ志を持つ多くの仲間がいたからに他ならない。



2.単なる真面目な活動団体のボランティアではなく、イベントという楽しみがある(ずばり「楽しく」「カッコイイ」ボランティアである)
活動自体の姿勢や取り組みは至って「まじめ」かもしれない。しかし、私たちが活動の場に設定しているのは「楽しい」イベントという場だ。私たちの主張や企画は大変真面目で、決して対症療法的なことではない。会場が汚いからボランティアでごみを拾うという「他人がすべきことを」代わりにやって上げるような対症療法は行っていない。「代わりにやってあげない」をポリシーに当たり前の主張をしている。そんな中から生まれてきたのが「自分のことは、自分でできる」キャンペーンだ。

環境団体などが主張することがあまりに真面目すぎるために、多くの人々に受け入れられない、ということがよくある。主張はまじめで結構だが、それを伝える手法には工夫が必要だ。主張することに意味があるのではなく、その主張を社会に届けてはじめて意味がでてくるのである。社会に届くと言うことは、その情報や主張を受け入れる側が理解するように、理解しやすいように加工し、工夫するのが大切だ。私たちは、イベント、特に音楽イベントという「楽しい」場をこのまじめな主張をする場に選び、様々仕掛けや協力を得て、実施している。


3.成果が見えやすい、絵になる
この活動の特徴のひとつに「成果が見えやすい、絵になる」という点がある。
ボランティア活動で重要なことは、ボランティア活動に参加する人が、ボランティア活動を通じて何に満足し、何を得るかということだ。もし、ボランティアをすることの意味や成果を、ボランティアに伝えられないとしたら、ボランティア活動は単なる無償の労働とになってしまうのではないだろうか。A SEED JAPANでは、ボランティアが活動した成果を、はっきりとボランティア自身にも、主催者にも示していくようにしている。たまたま野外におけるコンサートでの環境対策というのが派手だというだけではなく、さまざまな手法を通してボランティア活動の成果を見えやすくしている。

例えば、回収したペットボトルを透明なポリ袋にいれて、山のように積み上げていく。初日の午前中はたいして目立たないものであるが、時間がたつにつれ、その山が大きくなっていく。その大きさを見るだけで、自分たちが「これだけやったんだ」という成果を確認することができるわけだ。普通は、「ごみは隠すもの」と考えるところだが、これは資源。あえて大きくみせ、コンサートが行われているステージからも見えるように積み上げていく。ときおり、アーティストから励ましの言葉をもらったりもする。これはボランティアにとっても励みになるのだ。

また、活動が一段落したところで、ボランティアが回収・分別化した資源の量を、はっきりと数値化したり、金銭的に換算して公表することをしているし、リサイクルをすることで、どれほどの環境負荷が低減するのかということを説明するようにしている。

「ボランティアがやった活動はこれだけの意味があるんだ」ということを社会化しているわけだ。絵になるという意味では、ボランティアの格好についても気にかけている。こそこそと隠れてボランティアをするのではなく、お揃いのかっこいいTシャツを全員が身につけることで、自然と会場内でのアピールとなっていく。元気のいい若いボランティアが、資源を回収して歩くこと自体を「かっこいい」活動として演出することにより、「私もやってみたい」という気軽なノリで参加できるようにしている。また、かっこいいと自然とマスコミにとりあげられやすくなる。これもまた、成果を社会化していくことになるのだ。


4.ボランティアが若い
ボランティアの年齢が若いということも私たちの活動の特徴だ。20代前半の大学生やフリーターが多いが、若くは高校生で16才から、30才ちかい人もいる。学生、主婦、シニアは「ボランティアの3大市場」などといわれるが、まさにその学生・青年層が中心となっている。青年はなんといっても、元気がある。素直だし、妙にへりくだったりすることもない。ボランティアを苦行としてとらえるのではなく、いっしょに楽しみながら活動をすすめることができている。

また、環境問題という側面から考えると、青年層は、これからも地球の上で暮らしていく世代であり、今、引き起こされている環境破壊の影響を直接受けて生きていく世代なのだ。その世代自らが、環境問題の解決に取り組んでいくことこそが、求められている。旧来の考え方やしがらみをとっぱらい、素直で元気な若者が社会を変えていくスタート地点としての活動機会をA SEED JAPANは提供している。
ボランティアコーディネーターも若い
A SEED JAPANのボランティアコーディネーターはボランティアと同じ年齢層の青年が中心である。下は18才の大学生から30代の社会人がコーディネートを担っている。私たちのコーディネーターはボランティアと同じ目線を持ち、共に活動を作るパートナーだ。ボランティアコーディネートにはそれなりの技術がいる。熟練者だからこそ技術があるのではなく、本人のやる気、プライドで技術力を上げ、徹底した情報共有と民主的な意志決定で活動を作っている。私たちの活動を体験したボランティアが次にはコーディネーターとなっていく仕組みを絶えず作っているのも一つの特徴かもしれない。

5.多くは初めてのボランティア体験、なのに一定のクオリティーを保っている
私たちの活動に参加する若者の多くは、いわゆる「ボランティアおたく」ではない。むしろ「ボランティアなんてはじめてです」という人の方が多い。だからといって、活動のクオリティーを下げるわけにはいかない。コンサートにはお金を払っている来場者もいるし、そのイベントのクオリティーを維持するための多くのスタッフがいる。ボランティアがやりたいことを、やれるだけやればよいという訳にはいかないのだ。ごみ箱があふれるわけにはいかないし、いいかげんな分別をするわけにはいかない。ボランティアといえどもスタッフTシャツを着て、来場者と対峙している以上は、それなりの態度で来場者と向かい合う必要がある。もし「やっぱりボランティアだから質はよくないよね」とか「あのボランティアの態度が悪かった」という話でトラブルに発展してしまったら、今後の活動にも支障がでてくるのだ。

A SEED JAPANのボランティア活動の特徴は、若くて経験の少ないボランティアが参加していながら、このようなクオリティーを維持し続けている点にある。クオリティーを維持するに、ボランティア説明会への参加を必須としていること、経験豊富なボランティアをリーダーにしたチーム制を引くことなどで、クオリティーを維持している。(説明会やチーム制の詳細については次章でふれる)


6.ボランティアを大切にする(移動、宿泊、休憩、つらい思いをさせない)
私たちはボランティアを大切にしている。イベントの主催企業や行政が重要なパートナーなのはもちろんだが、活動自体のパートナーはボランティアだと考えている。ボランティアを無償の労働力にしないためにも最高の待遇を約束している。ボランティアが活動に参加する為には、交通費がかかる。都内で行われる活動の場合は、最低限の交通費の一定額を支払うようにしている。会場が遠方の場合は、首都圏(中心部)からボランティア専用のバスをチャーターし、会場までの移動費をボランティアには負担させていない。イベントが複数日にかかり、且つ遠方で開催される場合は、会場付近で宿泊することが必要になってくる。毎年苗場スキー場で開催しているフジロックフェスティバルでは、最低2泊の宿泊が必要になる。この宿泊費も主催者に掛け合い、負担していただいているアルバイトのスタッフならば当然このような交通費や宿泊費は主催者から支払われる。ボランティアといえども、イベント会場ではスタッフとして活動してもらうためこのようにしている。

アルバイトならば労働の対価として賃金が払われる代わりにコンサートなどを見る時間はほとんどないし、楽しみながら仕事をする事に重きはおかれない。私たちのボランティアには賃金が払われない。その代わりに「楽しさ」がついてくる。ボランティアの活動はシフト制を導入しており、1日約8時間の活動を行って頂くが、必ずコンサートを楽しむ時間(自由時間)を設けている。一般のお客さんと同じ目線でコンサートを楽しむことができる。活動時間中もボランティアの安全、体調には最善の注意を払い、疲れたら休むことを奨励している。時には炎天下での活動が数時間続いたら、悪天候の中でも活動を行うためにボランティアコーディネーター、リーダーには10人一組のチームで体調をチェックするのではなく、あくまでも個人個人の体調を把握し、疲れたら休めるように心がけている。雨の中でも活動は行うが、雨が降ったら一旦活動を中止し、本部テントに集合し、各自雨具の確認を行い、持参していないボランティアには、当団体の雨具を貸し出し、チームメンバー全員の意志を確認してから活動を再開させるようにしている。

ボランティアが活動しやすいように休憩時間、食事時間、雨天の時などボランティア全員が収容できるボランティア専用の休憩テントを用意している。活動時間中には必ずすべての食事を提供している。

炎天下での作業に欠かせないのが水の供給である。広い会場内にボランティアの拠点となるテントを数カ所に配置し、必ず冷たい水を用意している。また、活動時間中にテントに戻って休めないときには、車で冷水タンクを活動場所まで運び、日陰で休みを取りなが、冷たい水を供給するように勤めている。

活動がハードな分だけ、ボランティアには最高の待遇を持ってもてなす、それが私たちの活動の姿勢である。


7.個人参加のボランティアに寂しい思いをさせない
ボランティアを多人数集めると仲間同士で申し込んでくる人々と個人で申し込んでくる人々に分かれる。ボランティア申込用紙に代表者名を記入していただければ仲間同士で活動が当日できるように配慮している。グループや仲間同士で申し込んでくる人々は同じ班にしてあげれば、楽しんで活動を行ってくれる。個人で申し込んでくる人々に寂しい思いをさせない用に細心の注意を払っている。私たちの当日の活動はすべて約10人一組のチームで行うので、このチーム編成を行う際に構成メンバー一人一人の参加経験、個人・団体での申し込みなどを配慮しながら決めていく。まず、個人参加者はできるだけ個人参加者同士のチームを編成し、性別も偏らないように男女比まで気を配る、そして活動経験のあるリーダーを付けることで活動への不安を取り除くようにしている。そして、別に記してあるとおりチームで活動することにより、仲間意識の向上などに努めている。当日、イベント会場に集まった後チームの顔合わせを行い、時間をとって、チーム内の自己紹介、連帯を深めるゲームなどを行う。

そして、あとはコアスタッフが個人参加の多いチームでみんながうち解けて活動しているかに注意を払う、ようにしている。


8.主催者の理解を得て、きちんと機材や経費を頂いている
簡単にいってしまえば主催企業からの環境対策事業の業務委託である。イベントの主催者は私たちA SEED JAPANに会場の環境対策活動に対して経費を支払っている。時には足りない分を自力で資金調達する場合もある。活動の目的は会場の自然環境を破壊せずに、ボランティアという力でごみの散乱を防ぐことだ。その目的の達成が、会場のピースな雰囲気をも創り出している。

この業務を遂行するのに多くの経費が必要である。「ボランティア活動」といっても普段アルバイトの部分がボランティアに変わるだけで、ボランティアをコーディネートするスタッフや事前の企画制作を行うスタッフの人件費、会場で使用する様々な備品や機材のレンタル費、ボランティア用のチャーターバス、宿泊、食事などの経費を合計すると百万円〜数百万円のお金が必要であり、その多くをイベントの主催者(企業や行政)から委託されてこの活動は成り立っている。もちろん、営利が目的ではない市民団体が主催で趣旨に賛同できれば、人件費も取らずに、且つ独自に資金調達して取り組むこともある。


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【第3章:ボランティアコーディネートの実際の流れ】

1.コンセプト企画づくり(ボランティアの役割、ねらい)
94年にこの活動を始めてから数年はボランティアがイベント会場内で発生する資源物である「缶、ペットボトル、発泡スチロール製品」を拾って回収することを目的に行ってきた。ところが数年経つと来場者がその光景になれ「ボランティアが回収してくれるから、自分は何もしなくていい」という声が聞かれるようになり基本的なコンセプトを変更せざるを得えなくなった。97年から会場内をボランティアが巡回して資源を集める事をやめ、ごみ箱前での分別を促す活動へと切り替わってきた。来場者が自分のごみをいっさいがっさいに入れごみ箱に捨てに行くとボランティアがごみ箱の中で笑顔で踊っており、来場者に袋の中のごみを分別するように促すナビゲート活動がメインの作業になってきた。そして、翌年の98年からは来場者へ自分のことは、自分でやって貰おうと入場ゲートでのごみ袋の配布を始めた。そうすると主催者やメディアの評価が変わってきた。ボランティアが他のスタッフや警備員と違って、元気で、明るく、楽しみながら活動していることで会場全体の雰囲気を和やかにさせている、というのである。ボランティアが会場にいることで、主催者と来場者の橋渡しをしているというものであった。この橋渡しは、スタッフや警備員には到底できないものであった。

ボランティアの役割は資源の回収ではなく、ピースキーパーである。資源回収やリサイクルはツール、手段でしかない。10万人が集まるこのイベント会場のごみがすべてリサイクルされても日本のごみ問題の解決にはつながらない、しかし、10万人の人びとが変われば、それは社会変革の大きな一歩である。


2.主催者・制作関係者への理解をもとめる
イベント開催前の4ヶ月前から数回にわたるミーティングを主催者、制作関係者と持つ。この作業は私の役割だ。まず、個人的な信頼関係を作るようにしている。担当者というよりもそのイベントの最高責任者と対等な関係で話ができるよう心がけている。この段階で下請け業者に成り下がらないように肩肘張って対応している。そして、次に行うのが管理や命令で動くアルバイトではなく、自発的に活動するボランティアというジャンルについて理解していただくことだ。商業イベントの世界に数百人のボランティアが入ることは今までなかった。アルバイトでもない、観客でもない、全く新しいタイプのポジティブスピリットを持ったスタッフ、それがボランティアだ。


3.ボランティア受け入れの準備(人数、待遇)
主催者と交渉する前に具体的な提案を団体内で議論しながら作成する。
特に大きな商業イベントの場合を例にとって見よう。

必要なボランティアの人数を決め込む。野外イベントの環境対策活動を行うボランティアの人数は、来場者数の1%がおおよその目安である。3万人なら300人といった具合だ。正確には会場の大きさ、広さ、来場者数、演奏時間、実務作業とアピール度との兼ね合い、ボランティアの活動時間などを考慮して人数を決める。正確な募集定員は会場の下見をすることで活動のイメージを膨らませ決めていく。

次にボランティアの待遇だ。ボランティアといえども会場運営スタッフとして活動していただくのが私たちの活動の特徴なので、基本は、交通費、食事、宿泊は当団体で持つというものだ。交通費から見ていこう。会場までの交通手段の確保を考える。FRFの場合は、会場が新潟県湯沢町なので東京・新宿駅からの専用バスを往復の手段として考える。都内などの中心都市での開催の場合、会場までの公共交通機関がある場合は交通費は支給しないが、公共交通機関がない場合は大抵チャーターバスを主催者の負担で用意していただく。会場に到着してから出発までの間に必要な食事はすべて支給する。イベントにおけるスタッフの食事の基本は弁当だが、可能であれば、暖かいものを提供したいのとボランティア自らが選べるように会場内飲食ブースで使用できる「食券」を主催者にお願いする。

ちゃんとした宿泊所に泊まる場合は社員食堂などで食事ができるように配慮している。食堂か、弁当か、食券かは正直言ってケースバイケースだ。何が一番というものはない。弁当の場合は、暖かくない反面ボリュームがあるし、活動を共にしたチームごとに食事ができるというメリットがある。食券の場合は1枚¥500という券の金額が決まっているため何でも好きなものが食べられるというわけでもない上に来場者と一緒に並んで買うことになり、時間がかかり、チームのメンバーがバラバラになってしまうというデメリットもでてくる。
宿泊を伴うというケースも最近は増えてきている。2つのケースがある。数日間の日程で行なわれるものと、オールナイトで行われるものだ。フジロックフェスティバルなどのように会場が苗場プリンスの敷地内にあるような場合は、近隣の民宿か、社員宿舎を利用し、4人一部屋の宿泊を用意している。また、オールナイトでぶっ通し音楽がなっているような場合は、会場内に仮設のテントを立て、そこに畳を敷き、寝袋を持参して頂くか、会場内にあるスタッフ用の宿泊設備を利用している。活動内容がハードな分だけ、以上のような移動手段、食事、宿泊を必ず用意している。

待遇というわけでもないが、ボランティア活動を行ったという証に記念品を出すようにしている。多くの場合はボランティアが着るスタッフTシャツだ。当然、販売されていないものなのである意味プレミアグッズになる。フジロックフェスティバルの場合はリーバイス提供のTシャツで、フジロックフェスティバル、リーバイス、そしてA SEED JAPANのロゴが入るカッコイイものを着ていただき、差し上げている。
 ボランティアに活動を楽しんで貰う為には音楽が聞ける自由時間をしっかり取るようにしているが、このことは募集要項などには明記していない。


4.ボランティアの活動内容
フジロックフェスティバル(以下FRF)などの大きな商業音楽イベントを例にとって活動内容を紹介しよう。私たちの活動は大きく分けて、でてしまったごみの分別リサイクルとでる前にごみを減らす二つの活動がある。


A. 観客への分別の呼びかけ(通称:ごみゼロナビゲーター)
総勢300人のボランティアを会場内にある25カ所のごみ箱前に配置し、来場者やスタッフなどが捨てに来るごみの分別を呼びかけている。来場者の代わりにやってあげるのではなく、あくまでも捨てに来た人々に分別を促す。そして、リサイクルの重要性を呼びかけ、ペットボトルのキャップを外すなどのアドバイスを直接行う。各ごみ箱で収集されたペットボトルや空き缶、発泡スチロール製トレー(以下発泡トレー)などの資源物は、環境対策本部に集められ、その後リサイクルされる。

B. ごみ袋の配布
タワーレコード(株)の協力により作成した特製ごみ袋を会場入口で来場者に配布し、会場を立ち去るときにごみ袋として利用してもらえるように呼びかけている。また、このごみ袋にメッセージを印刷し、リサイクルの重要性や資源回収キャンペーンへの来場者の自主的な参加を呼びかけている。イベント期間中の3日間で15万枚配布をする。

C. 「自分のことは、自分でできる」キャンペーンブースの運営
来場者の主体的な参加を促し、資源リサイクルの意識を高めるための参加型キャンペーンを行っている。ここでは特製ごみ袋にペットボトルを5本以上入れてキャンペーンブースに持参し、簡単な環境問題のクイズに答えるとTシャツやバンダナなどのグッズが当たるという仕掛けを用意することで、来場者が楽しみながら自然にリサイクルに参加できるようなシステムを実現させている。3日間で3,000人以上がこのキャンペーンに参加する。

D. リサイクルする
A SEED JAPAN環境対策本部の設置されているテントの一角に、環境問題に取り組む企業が、デモンストレーションを行うスペースを設けた。企業の協力で、発泡トレーのリサイクルを行う減容器を設置し、ボランティアが分別回収してきた発泡スチロール製容器を軽く水洗いした後、柑橘系の果物から抽出した液を使ってその場でゲル状にするという作業を実演してもらう。この水洗いの作業が結構大変であるが、リサイクルに必要な重要な作業である。同じように会場内で集めてきた使用済み割り箸から竹製品を取り除き、箱に詰めるという作業もある


5.ボランティア募集の広報
ボランティアの募集はイベント開催のおよそ3ヶ月前から行うようにしている。FRFの場合は、開催が7月末日なので4月中旬からだ。イベント自体の開催が決定すると、事務所に問い合わせの電話がなり始め、昨年参加したボランティアからの問い合わせも増え始める。参考資料(1)にあるように活動概要、イベントの紹介、活動内容、団体紹介、申し込みのステップ、説明会、打ち上げパーティ、注意事項、そして申し込み書を記載したA3サイズ裏表4ページの募集要項を作成する。中途半端な状態で募集をかけないようにしている。必要な情報をすべてそろえてから募集要項を作成し、A SEED JAPANの会員に優先的に郵送する。そして、数週間後に過去に参加したボランティアや一般に公開募集する。これだけでも十分ボランティアは集まるが、新しい参加者が加わった方が感動も生まれやすいことからA SEED JAPANの活動会員が友人などに手渡しする。これだけの募集で定員180人に対し3倍以上の応募がある。会員に優先的に情報を送ってもその会員が募集要項をコピーして非会員にあげてしまうので、今年から会員用と非会員用の募集要項を作る方向で検討している。最終的に決定通知を出すのはイベント開催のおよそ一ヶ月前である。新規の応募者が6割に対し、4割程度がリピーターである。

イベント自体の知名度が高いことも理由の一つだが、楽しいボランティア活動とボランティアの充実感を提供できていれば口コミでボランティアは集まる。福祉介護ボランティアなども重要なボランティア活動だが、私たちのようにボランティア活動の入り口的な企画もボランティアという言葉が普及していく中に必要な側面である。


6.ボランティア説明会でつたえるメッセージ
私たちは活動前の説明会をいくつかの理由から大変重要視している。私たちの活動はイベントのためのボランティアではなく、イベントという楽しい場を使ったボランティア活動である。まず、事前の説明会を行うことで活動自体のクオリティーの確保とボランティアの安全面の確保ができる。当日イベント会場に来ていきなり活動に参加するのでは、アルバイトと同じで指示されて行う活動になってしまう。説明会では、活動の目的、趣旨をしっかりと理解していただき、ボランティアとしての「自発性」「自主性」を引き出した活動へとつなげることができる。逆にボランティアの立場で見ていくと、事前にしっかりとした活動計画や主催団体を知ることでの安心感を得ることができるであろう。そして、説明会に参加することで、他の多くのボランティアと出合う機会も得られる。私たちとしても活動前から顔の見える関係を作ることができるのだ。また、イベントに無料で参加できるという遊び的な考えは通用せず、しっかりとした活動計画があることを知ってもらい、遊ぶ時間と活動自体の住み分けを提示できる。十分に取ってある自由時間を知ってもらい、その代わり活動自体はボランティアというスタッフとして、イベントに参加するという心構えを持ってもらうのである。


7.ボランティアリーダー、コアスタッフの役割(ボランティアコーディネーター)
ボランティアをとりしきるボランティアコーディネーターを私たちは「コアスタッフ」(ボランティアの上にいるのではなく、中心にいるという意味で「コア」)と呼んでおり、そのコアスタッフには3つの役割がある。
1つは、クオリティの確保だ。ボランティアだからといっていいかげんにやるわけにはいかない。A SEED JAPANの活動のコンセプトを理解し、ともに作り上げ、はじめて参加するボランティアたちに、その意味を伝えていく。直接来場者と関わり合いをもつボランティアのすぐ後ろにいる存在で、まさに、コーディネーター役だ。

また、コアスタッフはコミュニケーション役でもある。私たちの活動にはトランシーバーが欠かせない。トランシーバーは意志疎通の重要なツールだ。広い会場のなかで唯一コミュニケーションできるツールだ。コアスタッフとはいえ、まだまだ社会経験は少ない。情報を共有し、即時に判断しないといけない。「ほうれんそう」、という言葉をA SEED JAPANの活動では徹底されている。「ほうれんそう」とは報告(ほう)、連絡(れん)相談(そう)のことだ。また、トランシーバーはコアスタッフのほとんど全員が聞くことになる。会場のどこがピンチで、どこにゆとりがあるのか、だれがどの状況でどういう判断をしているのかについて、全員が知ることになる。トランシーバーを聞くだけでも新人コアスタッフは充分に勉強になる人材育成のツールとしても重要なのだ。私たちはかならず主催者にかけあって、コアスタッフ分の業務用トランシーバーを確保し、コミュニケーションツールとして存分に活用している。

もう1つは、ボランティアとともにあるということだ。ボランティアのお兄さん、お姉さん役である。ほとんど同い年で、わけへだても少ない。ボランティアの声を直接聞き、安心させてあげる大切な役割だ。コアスタッフには、ボランティアと同じ目線でいられる姿勢が重要だ。ボランティアが踊っていたら、コアスタッフもいっしょに踊ってしまうぐらいのノリでいるからこの活動は面白い。


ちなみに私たちA SEED JAPANのコアスタッフの半分は女性だ。これは、イベント業界ではありえないことだ。イベント業界の特質もあるだろうし、日本の社会の背景も反映してのことだと思うが、A SEED JAPANはこの状況を変えていこうと考えている。「人を見下さない社会」「男と女が対等な関係を築ける社会」を私たちは目指しており、2001年度の活動テーマは「Respect ! Others」(他人を尊重する)だ。


8.チームで動くということ
ボランティアには、かならずチームで動いてもらうようにしている。チームを組むことの意味は大きい。なにより、チームで動くことで連帯感や仲間意識がうまれる。同じ困難や同じ作業を体験することで、大きな充実感を生むことができる。僕たちの活動は単にごみを処理することが目的ではない。こうやってボランティアに参加した人たちが各地で活発に活動していけるようになることも目的だ。そのためにチームに参加してもらい、ともに活動していく状況をつくる。

チームを組むときには色々なことを気にかける。人間関係や、年齢、ボランティアの経験、男女比などを考えながらチーム編成を考えていくのだ。時には、社会人のチームに学生のリーダーをつけることもある。社会人だからといって、必ずしもリーダーに適しているわけではない。年齢だけがリーダーにとっての重要なファクターでないことを伝えるという意味をもたせることもある。これもひとつのこだわりだ。チームに属することで出会いが生まれてくる。その出会いが生涯の友に発展することもあれば、恋人に発展することもある。フジロックフェスティバルなどのイベントが終わった後に、チームごとに集まって飲み会を開いたんですよ、などという話しを聞くこともある。僕たちが呼んでもらえるわけではないのだが、そんなしらせを聞くととてもうれしくなる。まさに私たちはそういう場を提供しているのだ。

ボランティアでもなんでもそうだが、「楽しい」というのは、一人だけで楽しいわけではない。仲間は困難や悲しみを半分にし、楽しみや喜びを倍にしてくれる。チーム制を敷くことでもちろん、運営側がコーディネートしやすいという側面もあるが、チームが引き出すさまざまなよい点こそが、私たちの活動を面白くしているんだと思う。


9.活動シフトをつくる
実際の活動は全員のボランティアが同時に行うわけではなく、シフトを作り、早番、遅番に分けて行う。フジロックフェスティバルの場合は会場自体が大変広く、且つ、全体の活動時間が長いためかなり複雑になる。他のイベントでも必ず2つ以上のシフトを作り、ボランティアを割り振る。シフト(A)が活動しているときは、シフト(B)は休憩や自由時間で、シフト(B)が活動しているときは、シフト(A)が休憩や自由時間となるようにしている。コンサート自体の時間にもよるがイベントの開始から終了まで必ずボランティアがごみ箱前に付けるように工夫をしている。また、早番の人々は朝の6時から夕方の4時くらいまで活動を行う。途中に休憩や食事時間はもちろんのこと、自由時間も4時間以上作り、疲れさせないような活動づくりに勤めている。遅番の場合は、10時から20時という感じになる。フジロックフェスティバルの場合だけだが、「ナイトスタッフ」という夜動く班を作り、昼間は自由時間として遊んでいてもいいが、夜の20時から朝の4時くらいまで活動していただくというシフトもある。このシフトに当てはめる前に総勢200人以上のボランティアを男女比、年齢比、個人・団体参加を考慮しながら約10人一組のチームを編成する。


10.ゴミ箱の位置とボランティアのメリット
入場ゲートから一番遠いステージまで歩いて40分はかかる約150万平方メートルの会場に28カ所のごみ箱が置かれ、そのごみ箱前で分別ナビゲートの活動が行われる。ごみ箱は目立つところに配置する。当然、来場者から見える位置に配置しないと意味がない上に私たちの活動のアピールになる。もう一つこだわっているのは、そのごみ箱に立つボランティアのメリットだ。例えば、ごみ箱からステージが見えればボランティアの活動は一層楽しくなる。ボランティアが活動を楽しくでき、来場者とのコミュニケーションが図れるようにごみ箱の位置もこだわりを持っている。


11.安全管理
ボランティアが沢山集まると、けがをすることもある。300人いれば2〜3人は病院につれていくはめになる。日射病、日焼け、刺し傷、擦り傷、ころんでけがをするなど野外においておこるけがは数多い。ときには酔っぱらいのけんかにまきこまれる可能性もある。自然のなかで炎天下のなかで、ごみをさわるので、どうしてもけがが起こったり、炎症が激しくなることもある。できるだけ安全管理には気を配っている。安全管理のステップとしては、かならずコアスタッフが下見をしておくということだ。

また、ボランティアが会場にはいってからも下見をする。救護テントがどこにあって、どこに水道、トイレがあるかなどを確認するわけだ。また、ボランティア説明会では、細かく危険性について伝える。どこでどんな危険がひそんでいるのかを具体的に伝えるのだ。たとえば、空き缶やペットボトルを足で踏んでつぶす作業などもでてくる。そのために持ち物として、軽登山靴や丈夫なスニーカーなど、足回りを充実させるようにアナウンスしている。また、雨具や防寒具、日焼け止め、に、水筒、サングラスなどなど持ち物にも気を付けるように注意をうながす。もちろん万一けがをしたときのために、ボランティア保険に入っていることを伝え、安心感を伝えている。

チーム制をしいているが、チームリーダーがかならずしもチーム全員の疲れを判断できるわけではない。その気配りをコアスタッフが行うのである。スキューバダイビングなどからヒントを得たシステムだが、私たちは「弱い人」に会わせた安全管理を行うようにしている。ボランティアには、必ず無理をさせず、疲れが見え始めたら全員を休ませることもある。特に、雨がふりそうなときや、急に気温が低くなってきたときなどは健康を第一に考え、すべてのシフトを中断して、全員を休ませることがある。夜はさわがずしっかりと眠るように促している。一日だけの活動ならまだ我慢できることもあるだろうが、3日間もつづく場合もあるので、体調管理には、その日ごとの休憩や睡眠がとても大切だ。ボランティアのみならず、コアスタッフも同様だが、体調が悪くなって「楽しい」と感じられる人はいない。僕たちが大切にしているのは、楽しむことへのこだわりなのかもしれない。


12.ともに達成感を味わう
数百人で行うボランティア活動の重要な結果として欠かせないのが達成感や充実感だ。「ちりも積もれば山となる」一人ひとりのボランティアの地道な活動の成果が集まって、本来廃棄されるはずのごみの40%〜70%をリサイクルすることができるのである。この事をボランティア自身が気が付けるように様々な配慮している。

必ず、朝みんなで「おはよう」を言い、活動開始時にみんなでかけ声をかける。各チームが勝手に流れ解散することなく、終了時の「お疲れさま」もみんなが集まって全員で行うようにしている。そうすることでボランティア全体の連帯感が増し、一人ではなく、みんなで行っているという気分になる。そして、この活動をコーディネートする側の責任として、みんなの成果を数字に表し、どれくらいの量が資源に回りリサイクルされたのか、何人の観客数に対して、何人のボランティアが何時間活動したのかを明確に伝えるようにしている。

もちろん活動を終了したら必ず数週間以内にボランティアの為の打ち上げパーティを企画実施している。この打ち上げ時にも、リサイクルされた資源の量、主催者やマスコミの評価などを伝え、ボランティアのみなさんあっての活動であることへの感謝の気持ちを伝えている。私たちは、本当に、心から、主役はボランティア一人一人であると考えているからだ。


13.交流会と次なる活動へのいざない
私たちは、ボランティアに来てくれる人を対象に、当日の事前・事後に交流会を開くことにしている。説明会という緊張した場とは違い、交流会ではうちとけた雰囲気をつくることができる。交流会はたいてい、いわゆるクラブでのパーティが多い。クラブとは音楽を聴いて踊る場だ。私たちの活動と音楽とは切り離せない。クラブには音楽を流す機材がそろっているし、イベント会場では走り回っているコアスタッフが、DJとして皿を回す(CDやレコードをかける)こともある。こういう演出をすることで、イベント会場ではゆっくりと話しができないコアスタッフとボランティアが仲良くなったり、うちとけることができる。僕たちの活動は基本的に信頼関係を大切にしている。こうやって事前に顔が見える関係をつくることで、当日気持ちよく活動ができるのだ。

また、A SEED JAPANがもつ「こだわり」や「メッセージ」を知ってもらうよい機会にもなる。たとえば無農薬の野菜や、健康や環境にこだわった食べ物や飲み物を出すことで、ふだんはそんなことを気にかけていないボランティアの若者に、少しなりともメッセージが伝えることがでる。無農薬の野菜を勉強会を通じてつたえていくのではなく、実際に食べてみて「うまい!」と思ってもらうことで、本当の理解がえらえるんだと考えている。そのためにも、クラブという音楽があり、食べ物にこだわりをもてる場所で開催しているのだ。もちろんクラブのマネージャーに事前に話をし、自分たちのこだわりを伝えておくことは忘れない。

また、ボランティアのなかには、友人などといっしょに申し込んでくる人もいるが、けっこうひとりで申し込んでくるひとも多い。彼らを孤立しないようにきっかけをつくってあげる必要がある。ボランティア同士が、仲良くなり、出会う場として交流会を企画するのだ。たとえば、イベント当日の写真などを持ち寄って交換する場所としたり、再会し、さらなる次の活動を生み出す場としても交流会は機能している。


14.対等な関係が大切
【私たちのパートナーとは!】
これからの社会を担う若者の意識が変わらないことには、今私たちの目の前に立ちはだかっているさまざまな問題を乗り切ることはできない。では、その若者を惹き付け、主体性を引き出すためには、どうすれば良いか。

まずは、若者自らが参加して楽しいと感じる場でなければならない。そこで私たちが活動のフィールドとして選んだのが、音楽イベントである。音楽のある場で、しかも野外という開放的な場でアピールできることは多くある。音楽イベントもそのコンセプトはさまざまだが、現代の主流文化に対してオルタナティブ(代替の方法/もう一つの道)を提案するようなイベントを対象としているのも、私たちの活動の特徴である。

【主催者とのパートナーシップ】
多くのNGO、NPOにとって行政や企業との対等な関係を作ることは重要となる。イベントの主催者の多くは企業・行政などであることから、私達はイベントにおける環境対策の実施のみならず、それぞれの企業とのパートナーシップの実現を目指している。それには環境という視点にとらわれず、その企画の経済側面やイベント全体のコンセプトはもちろん、多方面における互いの協力・配慮・理解が必要になる。多くの場合、主催者である企業の責任者と直接会い、互いの関心事、目的、制作におけるポリシーなどの意見交換を念入りに行い、部分的なコミットメントに終わるのではなく、共に事業を作り上げるパートナーとして互いを尊重できる関係を築くよう努力している。

【ボランティアとのパートナーシップ】
私たちの環境対策活動は沢山のボランティアに支えられている。多くは無料でイベントに参加できるという動機から参加を希望する人が多いが、そのような動機でも私たちの活動の重要なパートナーであり、そのボランティアと楽しみながらイベントに貢献できる仕組みを私たちは作り続けている。

ボランティアが行う作業はごみに直接触れる「3K」(きつい、きたない、くさい)の仕事だが、音楽イベントではこの様な作業も全員で行う楽しい活動へと変化させることが出来る。またその中で、ボランティアというものに対する抵抗感を取り払うことも私たちの狙いである。



COLUMNボランティアに参加を断られ、説得に回る

普段は一人のボランティアにこんなに時間をかけない。2000年のFRFのボランティア定員は150人であったが、その3倍以上の500人近い応募あり、いつものことながら音楽イベントの偉大さに驚かされる。私たちの活動は先着順ではなく、ある程度の選考を行って、ボランティアの決定通知を出す。発送後数日たったある日のことだった。

事務所で電話を取ると決定通知を受け取った高知県から参加を希望していたボランティアの女の子からであった。「親を説得できないからキャンセルしたい」という内容のものであった。

ボランティアの代わりは沢山いる。お断りの手紙を300人以上に送っていたからだ。しかし、私は彼女の意志に反して「なぜ親を説得できないのか?」「親御さんは何を心配しているのか?」などを聞き、何とかしたいと思った。本人は参加したいのだが、親御さんは「ボランティア活動」も「A SEED JAPAN」も「フジロックフェスティバル」も信用できない。そして、なにより自分の娘がボランティア活動を行うこと自体信じがたいというのであった。私は数日間待つように伝え、すぐにA SEED JAPANの報道採録(新聞などの掲載記事をまとめたもの)をコピーし、親御さんに向けた手紙を書き始めた。自分の活動や団体には自信があるし、16才の高校生が初めてやってみたいと思ったボランティア活動であっただけに、何とか親御さんの理解を経て、この子を参加させたいと思った。本人がやってみたい、参加してみたいという明確な「自発性」と「自主性」があること、そして、この活動が「社会的」で「開拓的」であることから、両親の信頼を勝ち取りたいと考えたからだ。

特に青年層を扱うボランティア活動の場合、親からの信頼は大変重要である。ボランティアを行う本人の社会的な意義とは裏腹に「夜遊び」と同じように考えている親御さんが少なくない現状をA SEED JAPANを長年やってきて痛感していたからだ。一週間経って、その女の子から連絡が入った。親御さんからの許可が取れたと聞き、大変うれしく思った。

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