新聞による広報の手順

市民団体や青年グループにとって、一番とりかかりやすく、且つ大きな効果を持つ媒体は、やはり新聞です。ここでは「いかに新聞に記事として載るか」について解説していきたいと思います。もちろん同じような活字のメディアである雑誌などにも応用は十分可能です。

いかに新聞に記事として載るか?(掲載へのステップ)

1)記者探し(コネを基本に)
2)プレスリリースの作成
3)プレスリリース送付
4)記者をプッシュする
5)取材を受ける
6)よければ掲載
7)フォローアップ
8)掲載日の対応
9)掲載紙を入手する

1) 記者探し(コネを基本に)

まず記者探しから始まります。記事にしてくれそうな記者を探すにはどうしたらいいのでしょうか。
この頃は環境問題や市民活動などに関心のある記者も増えてきており、日頃からそういう記者と仲良くなっておけば、後々大いに助けになります。

記者を知っている人や団体を見つけて、問題に関係した記者を紹介してもらう

初めての人が記者を探すのはなかなか簡単ではありませんよね。そこで一番いい方法は、既に周りで記者を知っている人や団体を見つけて、問題に関係した記者を紹介してもらうことです。普段お世話になっている団体に趣旨を説明すれば喜んで紹介してくれるでしょう。

紹介してくれた人との関係をまずはっきりと伝える

しかし、ここで注意してもらいたいことがあります。このようにして他の人からの紹介によって記者とコンタクトをとる時は、必ずその記者に、「誰々さんの紹介で来ました」や「誰々さんからの紹介でお電話しています」など、紹介してくれた人との関係をまずはっきりと伝えましょう。 これは必ず守ってください。なぜなら、あくまでも、その記者を紹介してくれた人・団体との日頃の関係に基づいて、自分たちがコンタクトをとることが可能になった訳ですから、その関係を尊重しなくては、どちらに対しても失礼と思われてしまい、大きな損をしてしまうことになるからです。

「これはすばらしい記事だ」と思うものを見つけたら、新聞社に電話をかけてみる

問い合わせイメージ記者と知り合いになるためのちょっと際どいやり方を教えましょう。自分が普段新聞を読んでいて、環境関係や社会問題など関心のある分野の記事で「これはすばらしい記事だ」と思うものを見つけたら、記事を掲載している新聞社に電話をして「○月○日の朝刊の○面のこの記事を書かれたのはどなたですか?差し支えなければ紹介して頂きたいのですが・・」と自分の身元をはっきりさせた上で聞いてみてください。成功率は低いかもしれませんが、読者からのよい反響というものは記者としても嬉しいということですから、試してみる価値はあります。この方法で記者に連絡を取る場合は、 最初から「記事にして欲しい」や「取材してください」という要望ではなく、まず、その記者の記事に共感した上で「ぜひ相談に乗って欲しい」というような姿勢でアプローチするといいでしょう。

また、すでに何人かの記者を知っていて、1度でも取材を受けたことがあるなら、そのコネは必ず使うべきです。たとえそれが1年ぐらい前だったとしても、名刺などを保存しておいて、それを基にまずコンタクトを取ることが重要です。 そのほか記者と会う色々な機会があると思います。そのような機会を逃さず、記者に会える時は名刺を必ず作って持っていく、企画のパンフレットを持参するなど、常日頃から用意をしておく心構えが、広報の成功を決めるのです。

2)プレスリリースの作成

プレリリースイメージ

常日頃から交流があり、よく知っている記者が、「必ず記事にするよ」といって取材してくれるような特別な場合をのぞいて、普通の広報はとにかく多くの記者・新聞・雑誌に地道にあたることが求められるので、企画の内容や団体の紹介などが簡潔にまとめてある「プレスリリース」というものが必要となってきます。

この「プレスリリース」の詳しい作り方は、後に述べます。

3)プレスリリースの送付

プレスリリースを作ったらFAXを使って送りましょう。送る際は、事前に「送らせて欲しいのですが・・」と電話で連絡し、送信後も「ご検討よろしくお願いします」と電話をするのが望ましいやり方です。送信前後のどちらかだけでもよいですが、全く電話しないのは印象を悪くしてしまうので、損をしてしまいます。それでなくても、記者という人たちは基本的に忙しいのです。できるだけ見てもらえるように注意を引く必要があります。ですから、がんばって電話してみましょう。

プレリリースを送るタイミング

またポイントとしては、プレスリリースを「送る時期」です。イベントなどの参加者募集をしたいのなら、そのイベントの1週間前ぐらいに載るようにするのがベストです。あんまり早く載ってしまうと、人は忘れてしまうからです。それ以外であれば、余裕をもって企画の1ヶ月ぐらい前に送り出すのがよいでしょう。

4)記者をプッシュする

プレスリリースを記者に送った後、2~3日の「いかがですか?記事にして頂けませんか?」、「できれば取材して頂きたいのですが・・」というような趣旨の「プッシュ」の電話をします。

繰り返すようですが、記者はとにかく忙しいので、嫌われない程度に何回もあたってみることが肝心です。しつこく連絡すればたいてい興味を示してくれるはずです。

5)取材を受ける

いい感触がえられれば、取材してもらうことになり、掲載という運びとなるわけですが、ここでも注意することがあります。

記者と会う時は、企画に関する様々な資料はそろえておく

記者と会う時は、企画に関する様々な資料はそろえておく必要があります。例えば、企画書、団体紹介パンフレット、機関誌、団体紹介の写真、名刺、過去に発行した冊子、取材とは関係なくても現在行っている活動資料、相手が新人記者なら過去の報道採録(今回取材してもらう活動の記事がもし他の雑誌、新聞に載っていても持っていかないように注意して下さい。すでに他紙に掲載されていると記者のやる気がそがれます)など、色々資料があった方が、記者に対する説得力が増します。またイベントなどに取材に来てもらう時には、記者用に団体説明や企画の趣旨などを簡単にまとめてクリアーファイルなどにいれてある「プレスセット」を作っておくといいでしょう。

資料の例

新聞や雑誌の記者は原稿を締切までに書かなければならないので、なるべくそのまま使えるような文章や売り文句をこちらで用意しておくと、とても喜ばれます。

取材される時は団体の事務所に記者が出向いてくれる場合と、外で会う場合の2通りの方法があります。どちらにしても記者に連絡を取った広報担当者と取材してもらう企画の責任者、又は、団体の代表の2~3人位で対応しましょう。

特に団体や企画の募集の記事の場合は必ず団体の電話番号を載せてもらうようにしましょう。例え事前申し込みが必要でない場合でも、反響を見ることができますし、新聞の効果を確認できます。

6)掲載

取材を受けても、必ず掲載されるとは限りません。ここは新聞社内の色々な事情が影響してきますので、運を天に任せたような気持ちで待つほかありません。同じような時期に政界に大きな動きがあったり、大きな事件・事故が起こったりしたら、掲載される確率はぐっと低くなってしまいます。

掲載されることが決まったら喜ぶ暇もなく、掲載日と朝夕刊の区別を記者から聞いて、パイロット版などをFAXで送ってもらい(大抵の記者は言わないまでもやってくれます)、記事内容に掲載前に目を通しておくのがいいでしょう。なぜなら、時どきこちらが意図していなかったように書かれたり、事実と違っていたり、解釈がとんでもなかったり、連絡先が間違っていたりすることがあるからです。

以前、どこかの新聞の1つのまとまった記事内で、見出しにはAという団体の名前が使われ、記事内容は別のBという団体の活動についてのもので、使われている写真はまた別のCの団体の活動風景だった、ということがありました。いずれも環境問題を扱っている団体だから混乱してしまったのでしょうが、残念な失敗例です。

7)フォローアップ

掲載された後は、必ず記者にお礼の手紙を出したり電話を入れたりすることが大切です。人のつながりが成功を生むのです。また、社会の常識でもあります。

「記事にしていただいたおかげで、○○のような成果を出すことができました。」など一言を添えると、記者としても「記者冥利に尽きる」と感じて、「次もなにかあったら連絡してくださいね」など嬉しい言葉がかえってくるかもしれません。何においても人脈は大切です。

8)掲載日の対応

記事が掲載される日にちや面を事前に確認し、なるべく早い時期にその記事を入手しましょう。事前に記事内容を確認していても、編集の関係で字数が減っていたり、何面に載ったのかによっても読む人の感想は変わってきます。新聞のチェックは完璧に行いましょう。そして、特に募集関係の記事で電話番号が掲載される場合は、朝の8時か9時には必ず電話回線よりも多くのスタッフが事務所にいることが大切です。回線が1本なら2人以上、3本なら4人以上のスタッフが必要です。電話を受けるだけではなく、掛けてきてくれた人の連絡先を聞いてメモをとったり、会場の地図をFAXしたり、コピーを取ったり、やらなければならないことがたくさんあります。また、この電話対応をするスタッフは掲載された記事に必ず目を通しておきましょう。電話をかけてくる読者は内容をよく理解していないので、記事の言葉を使って電話をしてくるからです。

事前に記入用紙を作っておいたり、考えられる質問内容をマニュアルにしておく

私たちA SEED JAPANでは、数年前にハガキ大の大きさの記事が掲載され、1日に80本の電話がかかってきたことがありました。たまたま、事務所にいた2人のスタッフが対応しましたが、わからないことが多く事務所はパンク状態でした。事前に記入用紙を作っておいたり、考えられる質問内容をマニュアルにしておくことも広報担当の大切な仕事といえるでしょう。

9)掲載紙を入手する

掲載紙イメージ

後日報道採録(掲載された記事のパンフレット)を作るため、必ず原本を入手しましょう。(○○新聞200○年○月○日○面が書いてある紙面の上の淵の部分も含めて)

地方版に載ったものなどを送ってもらう場合は、コピーではなく原本を送ってもらうことを強調しましょう。コピーは取り方が悪いと全然使いものになりませんし、ましてや記事の部分をペンで囲ったりしないようお願いする方がいいでしょう。原本も、記事のある面を1ページ丸ごとそのまま送ってもらったほうが無難です。

報道採録は、例えば何かの折に記者に見せる場合は、その記者の所属する新聞社の記事があればそれをはじめのページにもってくるのが礼儀です。

報道採録は、団体の社会的な信用を見せるために非常に重要な物です。特に助成団体や企業などの協力を得るためには大変重要なツールになりますので必ず企画ごとや団体として年度ごとに作成しましょう。もし、報告書を作成するのなら最後の方に参考資料として出すのもいいでしょう。