Fair Finance Guide Japan 2周年記念シンポジウム② パネルディスカッション「消費者のチカラで銀行をエシカルにする意義と可能性」

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シンポジウムの後半では、国際的な農と食の問題に詳しいAMネットの松平尚也氏、日本のグリーンコンシューマー運動をけん引してきた環境市民の杦本育生氏にも登壇いただき、エシカルな消費と金融をいかに実現していくか、糸口を探りました。

コメント①:松平尚也氏(AMネット)

GMOについて、その種子の開発には膨大な時間と費用がかかるため、投融資の引き上げはインパクトがあります。ただ海外でのモンサントへの投融資には多国籍金融企業が名を連ねており、なぜGM技術が世界的に支持されているのか、GMに価値を与えている世界的な食と農のシステム・ガバナンス・政治力学を考慮すべきです。
GM企業の論理はエシカルからほど遠いところにあります。継続的な種子購入、耐性雑草の問題などがある大規模工業的農業であるにもかかわらず、GMOは環境に良い持続可能な農業と謳われているのです。また日本におけるGMOの問題として、安価であるために家畜飼料や甘味料などで表示もされずに大量使用されていることがあります。
世界での流れを見てみますと、欧米ではGM表示の義務化を求めるなどGMO消費への疑問の声があがっています。また2007年の食糧危機以降、持続可能な農業や小規模農家への投資の動きがあり、2008年の食料サミットで食糧安全保障に関して市民社会・農業組織の関われる構造改革が行われました。FFGでもこのような持続可能な農業に向けての取り組みについて考慮すべきではないでしょうか。
最後に、エシカルな金融を広げる運動と持続可能な食と農とをつなげることにおいて、毎日の食卓との関係させる重要性を感じます。というのも、日本の食費では外食・中食が大きな割合を占めますが、そこでは表示がされていない抜け穴である場合が多く、知らないうちにエシカルでないGMOを消費してしまっている可能性が高いためです。

コメントに対する回答:

(田辺氏)日本の投融資の改善だけではGMはとまりませんが、金融は一つのきっかけとなるアプローチですので、購買の選択と銀行の選択を同時に行えることが重要です

(König氏)EUやスウェーデンではGMOにすでに強い規制がかかっているので、消費者はその危険にさらされていません。しかし、もしそのような事実が示されれば、大きく批判がされるでしょう。また消費者は銀行からお金が流れているという問題の存在自体は知っているはずです。しかし重要なのは、銀行にいかにわかりやすく消費者からの関心を伝えるかということではないでしょうか。

コメント②:杦本育生氏(環境市民)

私は環境問題の根本的な解決のためには私たちの生活や経済を変える必要があると考え、1990年代からグリーンコンシューマー運動に関わってきました。しかし、当時は企業からの情報公開が乏しい状況にあったため、地域のスーパーなどの商品販売がどれだけ環境に影響があるかわかるように、地域版の情報を調査し、ガイドとして公開しました。その結果、日経新聞で大きく掲載されるなど大きな反響がありました。その後同様の取り組みが各地に広がり、それらをまとめて全国版のガイドを製作するに至りました。
現在の活動ですが、加工食品・お菓子・衣類など普段買うものを作っている企業の評価を行おうとしています。その評価を公表するために、スマホに対応したプラットフォームを作っているところです。
König氏へ一つ質問で、FFGで各銀行の評価を示しているとのことですが、それと同時に銀行口座の移し替えを推奨する活動も行ったのでしょうか。

コメントに対する回答:

(König氏)私たちは二つの行動を消費者に求めました。一つは銀行の評価や調査結果について意見を表明すること、そしてもう一つは口座を移し替えることです。ただ実際に移し替えが行われた可能性は少ないでしょう。しかし、口座を移し替えるかもしれない、と銀行側に伝えるだけでも十分銀行にとって脅威であり、効果があるのです。そのように銀行側に改善の意図があれば移し替えが行われなくても十分ですが、もしそうでない場合はより踏み込んで移し替えを推奨する必要があるでしょう。

(田辺氏)日本での現状としては、オルタナティブな銀行は投融資方針をほとんど掲げておらず評価ができていないので、まずろうきんへ投融資方針を掲げるよう働きかけを行っています。またもう一つの問題として、各銀行の評価は示しているものの、その上でどの銀行を選べばいいのか、その選び方も示せていません。今アドバイスするとすれば、スコアが高い銀行か、総投融資額が少なくインパクトの少ない銀行を選ぶのが良いのではないでしょうか。もしくはFFGJに頼らずに、ろうきんや信金を選ぶのもいいでしょう。

会場質問

Q.原発問題と同様に、金融に対する活動に対して政治的な圧力はかかっているのでしょうか。もしあるとすればどのように対応しているのでしょうか。

(König氏)スウェーデンでは、政治的圧力があるとわかった場合に国民が大きな批判的反応を見せるため、議員も市民からの票を獲得するためにそのような行動には出にくくなっています。ですので、日本で政治的圧力が存在してしまっているのは、国民の反発が不十分だからなのではないでしょうか。もしくは社会的な問題と私たち消費者とのつながりを明示しきれていないのだと思います。

(杦本氏)日本の風土では、一般市民の声が届かず、力のあるものの声のみが影響力を持ってしまっています。その解決にはアドボカシーを高める、また特定の市民が意見表明に対する圧力を受けないような仕組みを作ることが必要です。特に、NGO・NPOが力を持つのではなく、一市民が発言できる世の中にすべきです。

(松平氏)アメリカではGM反対運動が盛り上がっている一方で、その運動を行なっている団体に対して予算がつかないなど、批判的活動への圧力があります。そんな中、アメリカでは潮目が変わっており、全米でのムーブメントができつつあり、一層拡大するためにも、市民社会や研究者がいかに連携して未来社会のために声を上げるかを考えなければいけません。また、これまでの活動を通じて実は食品企業が消費者に敏感であるとわかったので、市民社会としての立場を明確にすれば何か変化を起こせるのではないでしょうか。

 

Q.FFGでは一般消費者に使ってもらう仕組みの整備に課題があると感じます。特に、FFGの普及・活用以前に、消費者に対する金融教育を行う必要があるのではないでしょうか。

(田辺氏)まず消費者への普及に向けた取り組みとして、まず意識の高い人々へケース調査を提供することで金融について問題意識を持ってもらい、そこから詳細に興味を持ってもらうようにしました。それについては一定の支持が得られています。一方で金融教育についてはまだ課題があります。

(西島)A SEED JAPANでは消費者へ基本からの金融教育の活動をしています。具体的には、エシカル消費への関心を持っていない人々向けに金融に関する小規模セミナーを定期的に開催しています。また現在学生向けの金融教育冊子を作成中で、来年の春頃に完成する予定です。

(König氏)まず、スウェーデンでは350をはじめとして、若い人々がよりエンゲージしているため、若い世代をターゲットとする日本の方針は正しいです。既に意識の高い人々はランキングなどわかりやすいツールを求めていたため、FFGはそれにマッチしており、自然と受け入れられるものでした。FFGの社会的な認知を高めるためにはトリクルダウンが必要です。つまり、意識の高い人々が消費者の取るべきロールモデルを形成し、それを一般市民へと広めていくのです。

 

Q.伝統的な消費者運動が続いていますが、今後どのように関わっていくのでしょうか。

(杦本氏)伝統的な消費者運動が残念ながら近年コア層の高齢化により弱くなってきている中で、今後どのように運動しようか考えています。かつてグリーンコンシューマー運動では目的や手法を明確に提示したことで伝統的な消費者運動の人々が主体的に協力してくれた経緯がありますので、今後もそんな手法が有効でしょう。また現在行なっている「消費から持続的な社会を作る市民ネットワーク」では、人身売買やフェアトレードなど様々な専門性を持った団体と、伝統的な消費者団体が参加しています。ということは、消費者運動は様々な層に受け入れる可能性が高いのではないでしょうか。

 

Q.大手銀行はグリーンウォッシュをはじめとしてイメージを作ることが上手なので、FFGのツールが銀行の良いイメージ作りに利用されてしまう恐れがないでしょうか。

(König氏)FFGの評価は2点において価値があると考えています。一つは銀行の約束のマッピングとして、これからのスタートポイントとなること、そしてもう一つは方針が実践に反映されているかどうか、監視を通して明らかにできることです。今後は銀行との対話において、約束に対する実践の有無の解釈に関する認識の差が現れて、議論が白熱するのではないかと予想しています。

 

Q.スウェーデンで銀行が消費者の意見を受け入れる風土が醸成されていたのはなぜでしょうか。また今後の一層取り組みを深めていくために、銀行同士の連携が有効ではないでしょうか。

(König氏)スウェーデンでは伝統的に、自分の決定に関する根拠や説明責任を、政治家だけでなく企業に対しても求める風土があります。また銀行が、私たちを敵対者ではなく協力者と捉えて、FFGを銀行のCSRを示すツール、今後のCSRに関する行動の指針として活用しているのも受け入れられた理由でしょう。銀行はCSRの強化が利益の増加につながり、また一方で持続可能性の無視は長期的なリスクになると認識しています。銀行は営利企業として、持続可能な事業モデルの確立と同時に黒字化を行うため、まずは顧客を最も重視しています。実際に銀行側に行動させるためには、顧客が持続可能な事業を求める意見を届けるなど、消費者の協力が必要です。
銀行同士の連携ですが、スウェーデンでは実際に行われています。それは金融業界全体でリスク認識を共有する必要があると考えているからです。

 

Q.スウェーデンにおけるFFGの成功は、ツールとしての優秀さに加え、FFGが消費者の代表であるとのコンセンサスがあったことによるのではないかと思います。一方日本においてはそんなコンセンサスがない上、そもそも市民が銀行を変えられないと無力感を持っていると感じます。その無力感を払拭し、市民の力を実感・強化するために、市民に向けた教育やキャンペーンをどう行っていけばいいでしょうか。

(松平氏)個々の団体や業界の中で考えるだけでなく、横の連携を持って、地域レベルでグローバルな問題について、オルタナティブを議論する場が必要だと思います。

(杦本氏)かつてのグリーンコンシューマー運動の際、企業・行政にない情報がNPOにあるとして、企業から多くの助言を求められました。これから社会を変えていくには、民間企業や行政でなく、市民社会による独自調査が重要でしょう。

(田辺氏)スウェーデンと程度の差がありますが、現在6銀行とは友好的に活動できてきています。こういった有効なツールをもってすれば他の分野でも変えられるとの確信を得ました。

(König氏)市民社会が持続可能性の実現のために大きな力をもっている、ということを情報として示し、単純な形で消費者を方向づけることが非常に有効です。また、世界的に銀行業界において持続可能性の重要性が認知・共有されている、という国際状況について、政治家から指摘させるのも有効でしょう。

 

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2016-12-31