HOME >
キーワードを入力
 
 
 
 
 

 

 
 



エコ貯金フォーラム報告書 > 第2部 分科会

預貯金型分科会 講師:山口郁子氏(中央労働金庫・営業推進部広報室) 
出資型分科会 講師:田中優氏(未来バンク事業組合理事長)
投資型分科会 講師: 速水禎氏(あすのはね朝日ライフアセットマネジメントファンドマネージャー)


1:預貯金型分科会

1)中央労働金庫・営業推進部広報室 山口郁子氏

◆労金とは
今日のテーマである「エコ貯金」、つまり環境や社会に配慮して融資を行うことと定義されています。私たち労働金庫はどういう金融機関なのか、そのなかで捕らえている社会的役割とは何なのか、ということをお話したいと思います。

労働金庫は1952年に労働組合あるいは生活協同組合に加盟している方々がお金を出し合って作った労働機関です。一般の金融機関とどこが違うかと言うと、「働く人のお金は働く人の生活の為に使いたい、そのための自分たちの銀行を作ろう」というのが労金の出発です。ですから、企業に対してご融資をするということではなく、あくまで働く人たちの生活、例えば家を立てたい、車を買いたい、あるいはお子さんの教育資金を、というような当時まだ戦後間もない頃というのは、労働者の信用力が無い、お金がなかなか借りにくい時代でした。そういう信用力に乏しい人たちを応援するために労金は誕生しました。そういう点で一般の金融機関とはかなり異なっています。

まず、労金は労働者のための金融機関です。働く仲間、つまり労働組合や共同組合の人たちが作った協同組織、助け合いを理念とした金融機関なのです。次に、労金は営利を目的としません。一般の金融機関と違って営利を目的としない、いわゆる福祉金融機関というポジショニングを取っています。

◆労金の新しい試み
今日の主題でもありますNPO事業サポートローンという制度があります。市民活動の支援、促進を目的としたNPO法人のための融資制度で、2000年の4月から行っております。NPOだからとかボランティアだから良いというのではなく、労金の、勤労者の暮らしを守る、安心して暮らしていける社会をつくるという企業理念に照らし合わせ、地域の中での市民活動を通して地域の課題を解決していく、あるいは社会のさまざまな福祉的な問題を解決してくNPOを応援していく、それは結果として勤労者の暮らしの向上につながるという理念で行っています。労金と同じ理念をもったNPOを応援していきたいということで始めた制度です。それ以外に、預金の利息の一部をこうした市民活に助成を行う財源として寄付をしていただく「NPOサポーターズ」もあります。また金融という面以外では、助成プログラムをもっていまして、まだまだ融資の対象になりにくい、誕生して間も無い、けれども地域の中では非常に意義ある活動を行っている人たちを応援する助成プログラムがあります。金融機能を生かしながら、お金を中心とした支援をしています。

◆社会的需要の変化
皆さんが金融機関を選ぶ時に、良い金融商品があるから選ぶのではなく、その金融機関がどういう理念を持ち、事業全体をどういう方向に進めているのかが、預金者の金融機関を選ぶポイントになるのではないのでしょうか。今社会が大きく変わっています。少子高齢化だとか環境問題だとか、そういう中で預金者は不安を感じています。そういう不安を解決していくためには何が必要なのかという視点が必要です。個人の生き方、価値観、意識が変わってきています。経済的豊かさだけではなく、安心して暮らせる社会、自分が安心して毎日を暮らしたい、といった、物質的満足感から精神的満足感を求める時代になってきました。こういう個人のニーズにどう金融機関が対応するのかという視点が必要です。労働者という人々に対しての金融機関というものをもう少し社会に開いていくために、98年の12月から労金もNPO支援に着手しました。事業としてはまだ脆弱なNPOに対して融資をしようという厳しい道のりでした。金融機関としてはそういう事業体には融資をしたことがありませんでした。一年間かけてNPOというのはどういう組織なのか、どういう金融ニーズがあるのか、ということを一つ一つ研究をしました。NPOが抱えている課題をみてみましたが、ボランタリーな市民活動ということで期待はされているが、お金がない、人材が集まらない、組織力に乏しい、それから社会的地位にも乏しく、お金を貸してもえる信用がない。期待されているNPOですら金融機関から資金やサービスをうけられない。私たちは市民活動が行いやすい社会基盤を整えるために金融機関として何ができるのかを考え、やはり融資をしようと決心しました。

◆サポートローンについて
今労働金庫で進めている融資制度「NPO事業サポートローン」を簡単にお話します。NPOは事業体として非常に小さいものが多くあり、12月の時点でNPO法人という法人格を持っているのは1万5、6千となっています。事業規模として500万円を満たない事業団体が圧倒的に多いです。そういう小規模の団体に対して、投融資をしていくことをメインに考えています。ですから無担保ローンとしては500万円までのご融資です。また、そうではない事業団体では何億という大規模なものも多くなってきました。そういう点では、金融機関として、例えば預金や土地を担保としてもっと高額な融資を受けたい、福祉施設を作りたい、環境教育をしたい、などのさまざまなNPO活動に必要な資金を融資していきたい。預金や不動産を担保にした場合は最高で5千万円までの融資が可能です。

では、どういう需要があるのか。例えば、現在融資した事例として、ホームレスの問題があります。彼らは様々な事情で現在に至っています。例えば地域から出てきて不景気によって職を無くしている、働きたくともなかなか見つからない。地域の中で働き口がない、住む場所がない、路上で生活せざるを得ないなど、こういう人々の自立を支援しているNPOに対しての自立支援型の居住、住宅の建築資金が必要です。また、高齢者のための福祉活動、在宅介護などの地域の中での拠点。これは、ベネッセだとかの大企業が行っているものとは一線を引く、もう少しアットホームで小規模な、それから介護保険という保険制度だけには拘らない、本当にフェイス・トゥ・フェイスで地域の中で高齢者をケアするという志を持って取り組んでいる方々の建設資金、あるいは人件費に融資をしています。

融資をするとき拝見するポイントがいくつかあります。経営者の判断、例えばどのようなミッションを持っているのか。労金は、金融機関としては当たり前だけれども返せるのか返せないのか、儲かっているのか儲かっていないのかだけではなく、新しい融資の評価の視点としては、その団体がどのような社会的活動をしていきたいのか、ということを大事にしていきたいと考えます。社会性を計る基準を大きくわけると、経営評価、組織運営の評価、事業の社会性評価、そして財務内容の4点を上げています。経営評価は、その団体がどのような事業目的も持っているかです。組織運営は、理事会がきちんと民主的な運営形態をとり、働く人たちも運営に対して意見を言え、満足いく働き方をしているかです。それから事業そのものが地域の中で、地域のどのようなニーズに応えているか。市民活動がどのように社会に接しているか、という観点です。まだまだ試みの域を脱していませんが、中央労金の実績としては1億3千万円くらい、全国の労働金庫としては、5億円ぐらいの融資をしています。

◆貸し手の意識
NPOの様な社会では新しい組織を育てていくには、金融機関サイドでもまだ多くの課題があります。まず、「働く人の為のお金」という理念はありますが、この原点に立ち帰る必要があります。何の為に金融活動を行っているのか。労金の「勤労者を応援したい」という理念と、NPOの行っている活動とが一致しているということ。そして、貸し手がそれを意識すること。いくら企業が崇高な理念を掲げていても、融資をする側一人ひとりの意識がなく、本当に貸したいと思わなければ、絵に描いたもちになってしまう。貸し手として社会の中でどういう責任を持たなくてはいけないのか、という貸し手側の責任意識も求められています。社会に優しい、環境に配慮した金融ビジネスを行っていく際には、ますます貸し手の意識が問われてきます。

◆新しい「目利き力」
いわゆる担保至上主義と言われているように、「お金があれば貸す」「儲かっていれば貸す」というような必要な時に貸さない金融機関ではなく、社会的意義がある活動や、規模は小さくても経営基盤がしっかりしている団体を見極めて融資をしていく、「目利き」と言ったら分かりやすいと思いますが、金融機関としての融資ノウハウ、「目利き力」を金融機関はもっと蓄積していくべきではないでしょうか。NPOやボランティアグループのような組織は融資対象としてはまだ新しく、どう見極めていくかが課題です。

労働金庫という事業体だけでは地域でどのような活動が行われているかがわかりません。そこで労金は、地域の中間支援組織と言われるNPOを応援するためのNPOとの連携や、情報交換を行っています。水口さんは税理士や会計士とネットワークを作っていますが、労金でもNPOを応援する税理士や会計士と金融機関がコラボレートしていこうとしています。貸し手側も、単一のネットワークではできないことを求められています。労金はまだ2、3年しかこうした活動を行ってはいませんが、これからもそういった幅広いネットワークを広げて、地域のニーズは何なのか、そのニーズに対してきちんとした対応をしている事業体を地域の中で育てていくという視点を磨きます。そのなかで必要な融資ノウハウなどの金融機関としての新しいスキルの蓄積が求められています。

◆労金ができる新しい取り組み方
金融機関にとって最も悩ましい事は、リスク転換の問題です。NPOは事業体としてまだまだ脆弱です。また、営利を目的としない団体もあり、金融機関から見ると、分かりやすく言うとあぶなっかしい、いつ倒れてしまうかわからない存在です。そういう社会的には有用だけれどもいつ倒れてしまうかわからない団体を応援するためには、金融機関のみで担うリスクとしては非常に大きいので、分散の仕方を考えます。NPOを応援したいという人たちが、お金を出し合いファンドを作って、直接貸すのではなく、ファンドを債務保証するお金として金融機関に貸す、というような新しい研究も進めています。つまり、預貯金型、投資型とカチッとした区別ではなく、預貯金型と投資型のコラボレートが求められているのではないでしょうか。既存の金融機関もそういった新しい地域のニーズに答えていける金融商品を研究していくことや、その融資を進めていくために必要な、事業体としてのリスクをカバーするための、もう一つの金融のシステムを作ることが求められています。

金融機関としてもうひとつ求められている事は、地域の事業体を育てることです。直接金融サービスを提供するだけではなく、例えばマネジメント能力を鍛えるための場を提供する、あるいは同じような活動をしているNPO同士がネットワークをしていく場を作っていくなど、私たち企業が応援していく。市民活動を応援するという役割は、金融機関としての能力を私たちが発揮していくことと、企業としてできる社会貢献という領域なのではないでしょうか。

借りる側の問題もあります。世に出たばかりで、脆弱さのある市民団体の方々は、金融機関と対話の仕方や、金融機関からサービスを受けるために必要なポイントを、なかなか上手く話せません。自分達はどのような活動をしていて、どのように資金を集めて何に資金を使ったのか、これからの事業をどのように行っていくのか、そのために具体的に何にいくらの資金が必要なのか、ということをきちんと説明できないと、金融機関は審査できません。金融機関と対話をするためには共通の言語が必要です。労金では、融資の審査を専門的に行う審査部があります。私が広報室として担っているのは、そうした共通の言語を持っていないNPOの人たちと審査の人たちとの通訳の役割です。新しい金融機関の課題として、そうした貸し手と借り手の中間を担う人材を育成していくことが必要だと思います。労金でもまだまだそういった人材が足りない状況です。人材育成の問題は労金でも重要な課題となっています。通訳をする人たちが居ないと、自分たちに何が必要なのか金融機関に話せない。審査する側は、ちゃんと話せないと貸せませんよ、と距離が縮まらないのです。接着剤のような役割ですね。ですから、どのような活動をしているのかを、金融機関の欲しい情報に変換してあげる、そして始めて30件近くの融資が実現しているのです。私たち広報室のやっている仕事がなければ非常に難しい。今、労働金庫は全国で13労金がありますが、9つの金庫でNPO融資をしています。9つの全てで核となる人がいて、その人がコーディネートしています。

最後に、私たち金融機関はそういう志しをもって新しい領域に入っていきたいと思います。私たち金融機関も預金者の方々にきちんと伝えていかなければならない。そこで、ディスクロージャーの必要性があります。今ディスクローズしていることは、金融法で求められている基準がありますが、その基準通りに公表しただけではなかなか預金者の方々には分かりにくいのです。ですから、こういう冊子などを作って皆さまに分かりやすい言葉でご説明したい。また、特に労金の場合、働く人たちのお金を働く人たちのためだけに使うと約束してできた金融機関ですから、特にこうしたNPOへの融資は、どのように使われたのか、その事業体がその資金によってどのように成長していったのか、その融資した先の成長を皆さまにお伝えしていく、という独自のディスクローズも必要なのではないのかと思います。また、預金者の方々の力が、金融機関を育てていく、と私は考えています。つまり、預金者の皆さんがきちんと満足感を得られるディスクローズをしない金融機関には預金をしないという預金行動を起こせば、自ずから金融機関は選ばれていくと思います。ですから、トータルとして皆さん預金者が金融機関を選んでいく目きき力が、金融機関がいい金融サービスを提供する、いい金融商品を開発していく、ということに繋がっていくのかなと思います。

◆声の伝え方
最後に、実は笑い話のような話がございまして、労金がこうした市民活動を応援している金融機関だ、ということで、ある環境NGOの方がですね、労金の口座を作りにきていただいて、もっと福祉の分野だけではなくて、環境の面も応援してほしいということを窓口の者にとうとうと話したそうなんですね。そうすると窓口の人間はびっくりするわけですね、確かにNPOを応援している、ボランティアも応援している、だけど窓口に来ていきなり捕鯨が問題だとか言われるとびっくりしてしまう訳ですね。水口先生のお話にもありました。一人の声を一人にぶつけても駄目なんですね。それを私たち金融機関に対して、もっとこういうサービスを作ってくれ、もっとこういう金融機関であってほしいという声はどこかでまとめてほしい。それが、アシードがあったり、その他の団体があったりするのかもしれません。このフォーラムは、まさにその一人ひとりの声を大きくする場なのだと思います。それは、預金者が金融機関と対話するときの声の伝え方、というものがあると思います。預金者として、金融機関としてこうあってほしいという意見を積極的に伝えていただければと思います。


2) サイバーシルクロード八王子推進協議会 原田親一氏

八王子をはじめとする東京の多摩地域、北の埼玉の一部、南は神奈川の相模原、新熱海を合わせますと、南北長いエリアになりまして、東京都と同じくらいの面積になります。GDPを比べましたら、東京よりずっと大きなエリアになります。産業で一番有名なシリコンバレーの2倍のGDPがあるのですが、十分に生かされていない地域であります。まずはその八王子および周辺地域から、産業を助けていきたい、こんな思いで立ち上げたのがこの推進協議会です。経済産業省と地元の八王子市から2分の1づつの扶助によって運営されています。4年目以降は財源をどうしていくか、いろいろ苦心しながら、産業界、地域の皆さまを巻き込んで一体となった町を作ろうとしています。場合によってはNPOにしていこうとも思っています。やろうとしていること自体、収益性から見まして収益の取れるものとは思っていません。ただ、何でやらなきゃいけないんだというところで、多分皆さまと同じだと思うのです。

これだけすごい中小企業の宝庫でありながらしっかりした評価がされていない。どこに問題があるのかと考えたときに、ネットワーク化を計っていこうというところに着目しました。

金融機関も大分物事の見方が変わってきました。中央信用金庫さんが地域にいかに貢献していくかということを模索していく中で、自前でやるよりもサイバーシルクロードに活動の拠点を提供しよう、と持ちかけてくださいました。かなり広い場所を使わせていただく中で、地域に熱い思いを持つ方が集まる場所なってきてました。八王子信用金庫さん、西武信用金庫さんや、みずほ銀行、UFJ銀行も、どうしたら地域に貢献できるかを模索されている状態です。皆さまの預金によって成り立っている金融機関が、地域に目を向けてきていることは、一世代前には考えられなかったことです。


3)日本政策投資銀行 藤田寛氏 
日本政策投資銀行は、いわゆる政府系金融機関です。日本政策投資銀行という名前は知らなくても、日本開発銀行という名前を聞いたことがある人は、いるかも知れませんね。4年と少し前に、いわゆる行政改革の一環で新しい銀行になりました。
新しい銀行になった時に、三つ理念を掲げました。一つは経済活力の拡張で、新しい技術の開発や、専門技術の入手などです。最近ですと、企業のリストラも入ります。経済を元気にするためにやらなきゃいけないこともある訳です。もう一つの理念は、豊かな国民生活の実現です。その一つの要素が環境でして、環境への取り組みをしている企業の格付を試みています。CSRとかSRIが話題になっている中で、企業と環境、あるいは地域社会などに対してどういうことができるかということが、非常に重要になってきます。三つ目の理念は自立型の地域の創造です。日本の地域というのは、国からいわゆる財政トランスファーによってお金をもらうことによってしか自立できない地域が在り過ぎるといえます。北海道、四国、九州など、数多くの地域があてはまります。国にも地方政府にもお金がありませんし、民間にもありません。そういうところがどうやったら自立できるのか、そこを考えるのが我々の仕事です。原発や不動産を扱いますし、六本木ヒルズなんかも相当我々の金が入ってます。日本経済というものは、高いところにある世界と地域に密着したところにある世界の両方があって、我々は1300人しかいませんが、その全てを何とかしようとしている訳です。

地域の問題を考えた時、お金の流れというものが非常に大事です。我々の原資は、自分たちで債券出して一般から集めることもしてますけれども、いわゆる財政投融資という国のお金が主です。我々はその意味では、自分で集めてない。「入り口」をほとんどやっていない。国が集めたお金を出す方、「出口」だけを専門にやっている。ある意味では金融機関としては、完全な機能を備えていない金融機関です。出口の方が、色々問題あります。エコ貯金というのは、多分入り口の問題なんですね。我々は出口をどうするか、儲かるかどうかが大事になってきます。NPOにはお金が回らないという発言がありました。皆さんに良く理解していただきたいのは、動機が非営利であるという点です。我々も政府系金融機関ですから別に営利を目的としません。しかし、やることは基本的に融資です。融資とは、お金を使ってもらうために、金利をもらいながら元本を返してもらうことです。あげてしまうのは融資じゃない、それは寄付です。「非営利の融資」とは、「帰ってこなくてもいい融資」とは全く違います。ここをまず理解してほしい。良いことをやっていれば、帰ってこなくてもしょうがないというわけでは決してない。それは絶対に組織として、金融機関として、持続できません。この判断をどうするかが、最大の問題です。NPOというのは小さいというのもある。情報が十分に伝える能力もない。労金さんのように地域に密着して、こうしたネットワークを持っている組織ですら難しい。

偉そうなことを言っても、我々は1300人しかいません。1300人で北海道から鹿児島までカバーできる訳が無い。普通の人は、わからなかったらお金貸しません。信頼感があるから貸すのです。もちろん銀行はデータを見ますが、でもまずそれ以前に信用できるかどうかが全ての基本です。「神戸コミュニティークレジット」という事例があります。神戸の震災でひどい目にあった企業の皆さまが集まってできた仕組みです。お互いにわからないから、貸せないという問題は、なかなか解決しにくい問題です。特に小さな会社は、わかるようにするためにお金もかかるし、ノウハウも要るし、人も要ります。そこで、その人たちでグループを作りましょう、まずお金を出し合いましょうと決めました。ここでは、震災にあった会社さんが15社集まってみんなで5千万円づつ出し合っています。信託勘定という「金庫」のようなものだと思ってください。この中に5千万を入れます。で、15社ですが、このうち6社だけがお金を今、必要としています。6社合計で1億円必要でした。

そこでまず、日本政策投資銀行と地元の銀行2行で、合計1億円の資金を用意し、この信託勘定に1億円を入れます。そして融資を必要とする6社に、この信託勘定が金を出すという形を取りました。ここで貸す・貸さないという判断を誰がするかというと、この15社がするのです。15社が自分たちでする。この15社は当然同じ神戸でひどい目にあって商売をしてきた人たちですから、お互いがお互いを知っている訳です。この15社はお互いに決算を見せ合ってるんです。このような信頼関係つかって、この信託勘定に利益が戻ってくるって仕組みができました。

もう一つ大事なことは、融資後のサポートです。やっぱり小さな会社っていうのは駄目なところもある訳ですよ。だから色々サポートしなければいけない。そのサポートをこの15社の中で考えざるを得ない。それは自分達の5千万を無くしたくないからです。自分のお金を守るためには6社にしっかり事業をやってもらって返してもらわなければいけない。それができるように、お互いに支え合うような、ただ甘いことだけではなく厳しいことも言いながら、なんとかお金を返せるような仕組みを作って、最終的には銀行にお金が返ってくるのです。当然金利を銀行に払いますから、資金を出した側には、利息がちゃんとついて戻ってきます。奇麗事だけじゃなくて、お金の話でもあるということです。

【第二部】フロアディスカッション
司会:残りの時間では二つの話がしたいと思います。一つは融資先に(行くお金を)増やす、出口を広げるためには何が必要か。もう一つは預金者の信頼を増やし、入り口を広げること。まあ、分けなくても良いかもしれませんが、この入り口と出口との二つを広げるためにアイデアなどがあったらお願いします。

藤田氏:あまり入り口の話をしてないのかなと思います。エコ貯金とは、自分の預金がどういうものに使われるかを考えることでしょう。自分のお金の行き場に対して皆興味を持ち始めている。最近はミニ公募債やエコファンドというものがあります。要するに、皆が自分のお金の行き先に興味を持ち始めている。今日はその中でかなり関心の高い人たちが集まっているのだと思います。間違ってほしくないのは、誰もそのお金が無くなっていいと思ってないということです。無くなっていいというのは、寄付です。そのお金って個々人の問題ですね。税金だって個々人のお金であって、国から出ている訳ではないです。そのお金はどこに行けばよいのでしょうか?エコ貯金をする人が、良い事だからとどんどん流してしまうと、無くなってしまう訳です。

司会:良い事だからと、無くなってしまった例があるのでしょうか?

藤田氏:NPOでホームレスの支援をしている「ふるさとの会」という、すごくしっかりとした組織と、奈良の「たんぽぽの会」という障害者の支援をしてらっしゃるところを例に出します。ふるさとの会は市民債券、たんぽぽの会はたんぽぽ債という10年ものの債券の形で、お金を集めました。10年経ってちゃんとお金を返せたかというと、そんなにお金になる活動ではありませんから、詳しく覚えていませんが、たんぽぽの会は6割ぐらいは返しましたが、4割は返さなくて良い、寄付になりました。これが返ってこないと困るお金なのか、そうではないのか非常に曖昧な領域のお金だったんだと思います。

司会:お金を必要とする人に、信頼が無い状態をどうしていけるのかについてご意見をお願いします。神戸の話は経済的、経営的に信頼を作る仕組みだったと思います。そういった人情に訴えない信頼の作り方って他にあるのでしょうか。

山口氏:良いところに貸しているから労金は良い、というのは違いますよね。労金がNPOに融資しているのは全体のごく小額の融資しかしていないのです。具体的にいうと、13兆円中の30件です。本当に数字にならない数字でして、私たちはそれで良いことをしているとは思っていません。新しい地域のニーズに答えていくお金の流れを作るためにNPO融資がある訳ですが、逆に住宅ローンとか車を買うためのローンなどこそが、人が生活していく上で絶対必要なお金の流れだと思います。ですから、NPO融資だけがSRIではなくて、働く人のための家を建てるお金だって私たちにとってはSRIだと思っています。こちらは良い仕事、こちらはそうでもない仕事というボーダーを引いていません。

最近私たちが着目しているのは、高齢社会というキーワードです。高齢者が地域に対して働ける場所としてNPOはあると思います。高齢者になって自分が住みやすい地域で、住みながら働ける町づくりに労金も応援したい。そのための金融力と職業能力を高めていくための社会貢献が、何かできないかなと考えています。

大企業がやる大きなビジネスだけではなく、コミュニティービジネス、SOHOとか、いわゆる市民事業などの要求に答えて、自分の生活に、あるいは人にとって必要なソーシャルサービスを自分で作っていくという社会を応援する金融機関でありたいと思います。

原田氏:エコ貯金は良いことだけれども、良いことで終わってしまってはいけないのでしょう。一歩一歩着実に進んでほしい。それにはATMなどの利便性も必要ではないでしょうか。脆弱だからお金を貸そうじゃなくて、脆弱なNPOを例えば法律で支持していくとか。小さなNPOも大きな企業も社会を良くしようという思いは全く変わらないと思います。ただ、思いはあってもお金がない、人がいない、といった理由で、出来ないいというのが、中小の現状です。 

入り口も大きくし、出口も大きくしなくてはいけないと思います。出口を大きくするためには、二つあると思います。一つは、金融機関が目を利く体制を持つ。宝の山は一杯あるのですが、貸す先がわからないのでお金が回らない。また、例えばSONYのウォークマンは、ほとんどが中小企業が作っていますが、SONYの名前で売らないと売れないからSONYとして出している訳です。それが先ほど言われた、信頼です。ところが技術を持っているのは、実は名も無い中小企業なんですね。それを金融機関にわかってもらえるために大事なのがネットワークです。

藤田氏:エコファンドもかなり売れましたが、対象となっている会社はほとんど大きい会社です。でもそれは、余裕があるからできるのです。日々の資金繰りに追いやられている中小企業に環境配慮なんて言っても、「それよりもまず明日の金が」というのが世の中です。できる人がやればいい、できる人が始めていって、それをみんなに広げていけばいい、というのが非常に大事なのです。

目次へ戻る


2:出資型分科会

【田中優氏(未来バンク事業組合理事長)】

みなさん、こんにちは。未来バンクの田中と申します。みなさん、あちこちからお越しいただいているし、おそらくこのような機会は日本で初です。非常に貴重な機会になると思いますし、お越しいただいた人たちになるべくお話をしていただきたいので、さくさく進めていこうと思います。
最初に、出資型の共通点をおさらいしてみたいと思います。まず言えるのは、我々の中には、基本的に「金の中央集権が悪い」と考えている人が多いということです。お金が集められて、それが勝手に一部の人だけで使われてしまう。東京に集められたお金は地方に公共事業として配られていくが、地方の人が貯金した額は多いにも関わらず、その使い道は東京が決めてしまう。将来のために貯金したお金であなたのところに原子力発電所を作ったり、ダムを作るから立ち退きを要請するというような、未来を粉々にする形で使われている。この集権的な金の使い方がそもそもおかしい、というように考えているメンバーが多いということです。今のお金の使われ方はまずいし、社会的責任投資と同じように、こんなところに使わせたくないという思いがあります。一方で、こういうところに使いたいという思いもあります。この思いはそれぞれの団体ごとに異なりますが、それぞれの団体が思うニーズがあり、それに対して、それぞれの団体が実施しているように思います。そのニーズは必ずしもエコロジーでなくてもいい。反戦であってもいいし、中小企業を守るためでも、地域の商店街を活性化させるためでもいい。大事なのは、目的を持って、そのニーズに対応するためにやっている、ということです。もうひとつ面白いのは、地域性を重んじる、ということが非常に多いということです。地域分散型のものとして、それぞれの地域の中でやっていこうと考えている場合が多い。しかし、日本の銀行は護送船団方式をとっているため、その中に入らないと銀行が作れません。そういう中でどうやっていこうか、苦心惨憺をしているわけです。普通、出資には配当がありますが、我々が考えているところではありません。金利を下げていこうという形でやっている場合が多いからです。その方向性として、NPO/NGOに融資しようと考えている場合が多いですね。組合員制度を作り、その中で、出資・融資をする閉じた形をとることが多い。だから、なるべく情報公開をやっていこうと思っています。
私の未来バンクは10年前、自他共にすぐつぶれるだろうなと予想しつつ、20人400万円、しかもそのうち3人が100万円ずつ出したという超みみっちいところから始めました。今は1億3,000万くらいの出資金があって、貸し倒れはなし、貸出金合計は5億4,000万くらい、金利は3%の固定でやっています。私たちは専従をおかないという方針でやっています。1億円を1年中回したって、貸倒引当金を差し引いたら収益は100万円にしかならず、人件費すらままならないからです。人件費のいらない中で、最大限の出資を目指すという形で進めています。日本で一番大きなバンクになろうという気持ちはさらさらなく、小さなバンクがたくさんできるのが一番望ましい構造だと思って進めています。地域ごとに、地域のために生まれていってほしいですね。まもなく、坂本龍一さん、ミスチルの桜井さんらが出資して、自然エネルギーを普及させることを目的とするAPバンクができますが、お手伝いする予定です。彼らは石油依存がなくなれば石油を目的とする戦争もなくなると考えています。それぞれのニーズや考え方に見合ったバンクを各地域の人たちが考えて作っていく、これがもっとも望ましいことではないでしょうか?
いまの話を最大公約数的に考えてもらって、何を目的にどこに融資するのか、特徴的な部分に対する考え方を今日いらっしゃったみなさんに述べていただきたいと思います。

<事例紹介>
1)横沢善夫氏(岩手県消費者信用生活協同組合専務理事)
銀行が貸す方と高金利業者から借りる方との間を詰めることを目的としてやっています。なかなか実現できなくて、当時の出資金は230万円、貸付残高は2,000万円でした。現在は出資金が8億5,000万円、貸付残高が73億円で、すべて多重債務者救済のために使っています。ミッションが大事です。高金利で払えないともわかっていながら自らの責任で借りた人たちにどうして救済するのかと、ものすごい批判を受けたこともありました。対立責任論といいますか、だからといってその人たちをほっといていいものなのでしょうか。当初は、消費者金融会社がものすごく対抗しました。武富士は1兆6,000億円貸し出して、2,000億円をもうけています。人の弱みにつけこんだ金融がはびこっている中で、われわれはやってきました。平成元年に自治体提携消費者金融救済金貸付制度を発案しまして、自治体のお金を金融機関に委託して、協調融資を信用生協の方から受けています。現在、県内の58市町村中53市町村が、このために11億円を拠出しております。44臆円で救済活動の原資を確保しています。それに8億円の出資金をプラスしてこの活動を行っています。
この中から運動が発展して参りまして、金利をつけないで貸さなければいけない方々も出てきました。暴力から逃れたり、あるいは、リストラその他によって生活保護が受けられない方々です。こういった方々につなぎの資金が必要なので、NPOをもうひとつ作ってシェルターも作りました。住居の斡旋、就農、生活保護や児童福祉手当てを受けるまでのつなぎの資金を無利子で出そうという取り組みも始めています。あとは資料をご覧ください。

【田中優氏】
以前、横沢さんとお話したときにすごく印象に残ったのが、岩手には借金200万で自殺してしまう人がいるんだ、ということです。彼らに手をこまねいているだけでいいのか、という考え方がひとつの発端になっているような気がします。「ひとつの大きな命」という価値観をもった形での、出資型としての自分たちのお金の使い方があるということをご承知いただきたいなと思いまして、横沢さんの方から紹介いただきました。 
次に、北海道NPOバンクの杉岡さんにお話を伺います。杉岡さんの方からは、オーソライズされること、そしてまた、サポートを受けることの必要性についても紹介していただければと思います。

2)杉岡直人氏(北海道NPOバンク)
北海道NPOバンクはNPO事業組合とセットになっておりまして、出資を明確に確保できるような受け皿をまず作って、事業組合から融資を受ける形でNPOが貸付事業を行っています。貸し均等(NPOがお金を貸し付けること)という制約が働いています。行政が設立当時から出資金4,000万円のうち半分を出してくれていまして、内訳は北海道が1,500万、札幌市が500万です。出資の内容ですが、第3セクターにお金を出して、第3セクター経由で出資をする、あるいは、別なローンを組んで行政が信用組合に出資を行うような形態をとっています。お金を受け取るときに税金のかけ方を回避しないといけないので、みなさんが組織を作る際には検討する必要があるかと思います。さて、出資金の残りの2,000万は市民から出資をうけていまして、それを元に、年4回貸し付けを行っています。貸し付ける際には新聞社に広報をお願いしたり、HPに載せたりします。また、バンク便りを出して、事業がどのくらいうまくいっているか、借りた方はどう受け止められているのか、といった情報を伝えています。HP上でも公開しています。
貸し付けについてですが、募集から審査(書類・面接・外出審査がある)の順で行っていまして、1年中審査業務が続いています。最終的には理事会で決まるのですが、審査委員会の負担が大きいのが特徴だと思います。NPOにお金を貸し出しているところは少ないので、小口金融的にお金を貸せる仕組みはないかと考えています。NPOの事業に行政から資金の入るケースが増えつつありますが、つなぎ融資がむしろ不可欠で、そういう意味では、行政にとってもNPOに融資が行われるのは、行政がNPOに事業をまかせていくには都合の良い仕組みになっているのが見えるかと思います。
どのように協働の成果をあげていくかが課題なのです。私どもは、20万から200万までの幅で資金を貸しております。1年間で返していただくということで、金利は2%です。うちも専従はおいていなくて、事務員はNPOサポートセンターの仕事をしながらこちらを手伝ってもらうことにしていて、1年に10万しか謝礼を出しておりません。お金を貸していながら、自分たちは自律できないという状況にあります。当面はパートを雇うのが難しい状況でやっていくしかないですね。こういう事情の中で、行政や政策投資銀行、労金スタッフの方々に協力してもらっています。公認会計士の方や大学の経営学の先生、一般事業家の方に審査委員となってもらったり理事会に参加していただいたりして、専門家の立場からNPO融資の計画性・社会性みたいなものを評価して、理事会で最終的に決定します。信頼できる評価の仕組みをもっていて、信用度についても公開していますので、お金を貸すことができるのは、NPOとしての事業活動が評価されていくというNPO側のひとつのメリットになっているかと思います。オーソライズという点では、確実にお金を返すというのが大切ですが、私たちの方は20万、30万のお金を返して、計画書も作れるというのは、ひとつのステップだと思います。NPOが健全な事業体としてできているということを保障できるとも言えますし、NPOそのものが適切な運営をやるものとして、行政もNPOを支援するのは、NPOの力がないと難しいことなので、NPOの機能を高めていくという面では、行政の出資を集めやすくすることは重要だと思っています。北海道は広いので、遠地のNPO活動に対しては、電話やFAXしたり、来て説明してもらったり(お金がなくて来られない団体は電話で)、予備審査をしたりします。
そのため、私どもは道内にいくつか拠点を設けて、ネットワークを組んでいく必要性を感じています。行政の協力をうまくリードしながら資金を高めて、一般の市民の方にもわかりやすいメッセージを発信していきたいですね。私たちの一番の問題ですが、NPOをする方が出資者として登録して事業組合に出資をするというのが非常に少ないので、事業をやろうと思っている方が出資者としてどのくらい自分たちに投資をしていけるかということが、バンク事業に対する信頼を高めるためには重要だと思います。以上です。

【田中優氏】
NGOを始めると、いいことをするのに金まで出すのかと言われるんですね。自分たちが社会を作る側になると、リスクも一緒に背負わなきゃいけないけれど、ここまでの覚悟はないという人が多くいて、そこを越えられないと感じることが多いです。
次に、信用組合レベルは整っているけれど、認めてもらえなかったり、壁があったりすることについても含めて、向田さんの方からご紹介をお願いします。

3)向田映子氏(女性・市民信用組合準備会代表)
私は女性市民信用組合の設立準備をしています。生活クラブ生協で活動していた人達が中心になって、ワーカーズ・コレクティブ(働き手であり、経営者である働き方)という形でいろいろな市民事業をしてきました。20年前から、その人々が起業しようとするときに、自分たちのお金だけじゃ足りなくて、銀行に融資を申し込んだところ断られたということが98年までに20件あったんですね。そこでその人達は債券を発行し、生協にお金を借りたりと、苦労しながら来たわけです。バブルが崩壊した後、銀行に預金を預けっぱなしにしてはいけないという反省から、自分たちで信用組合を作りたいとも考えました。信用組合を作るには、認可が必要で、300人以上の賛同者と2,000万以上の出資金(横浜に事務所がある場合)が必要です。そこから始めようということで、賛同者を募り出資金を集めました。しかし、出資金が集まり始めたときに、それを銀行に預けたら何もならないと考え、出資したもの同士が助け合うという形で、未来バンクの例を参考に動き始めました。
現在は、個人賛同者500人、団体は50団体で、出資金は1億1,500万円となっています。個人も出資してくれている(金額の8割が個人)ので、個人にも還元することにし、教育ローンなどの融資を行っています。出資金は元本保証はしませんし、配当金も約束していません。情報はニュースレターや総会の議案書で公開しています。それから、法人・非法人を分けないでお貸ししています。融資条件は、会員であることと、地域社会への貢献度や採算性や継続性が担保されること、などです。審査委員には、金融機関の関係者はひとりもおらず、市民事業や会計関係のNPOの人びとが審査委員になっています。貸出の最高限度額は1,000万円です。これまでに約60件、2億7,000万円くらいの融資をしまして、現在、融資残高が1億2,000万円となっています。
出資金が1億1,500万円なのにどうして1億2,000万円貸せるのか、ということですが、出資金とともに借り入れ希望も伸びて、また、地域の中にも起業希望者が増えてきたので、彼らの活動が地域をよくするなら貸していこうという方針にしました。融資資金の借り入れを地域の金融機関に頼んでみたのですが、どこからも断られました。それで、仲間や生協に声をかけて、金利0.5%、合計5,300万円の借り入れを行いました。また、銀行になれれば、預金の形で市民からお金を集められるので、もっと事業を拡大していけると考えています。そのため、財務省の関東財務局と折衝を続けてきていますが、3年間単年度黒字を達成できるような健全性が確保できること、必ず融資先があるということの照明をもらいたいなどいろんな困難な要件ことがありまして、すぐ達成できる状況ではありませんし、現在のような、超低金利のなかで黒字達成は困難だと考えています。今後、実績を積み上げていきつつ、経済情勢が好転を見せたときが銀行にチャレンジするときかなと考えています。

【田中優氏】
預金は元本保証しますが、我々がやる出資は元本保証してはいけないんです。元本保証すると言った途端に、出資法違反で逮捕になります。もうひとつ気になるのは、金融庁が健全性を立証せよといったのは腹が立ちますね。銀行マンは、いま1,000万くらいの収入を稼いでいます。銀行員数×1,000万とっているということは、彼らが利ざやで1%稼いでいるとしても、一人当たり10億円回してなければなりません。そこの行員数に10億円をかけたものが、その銀行にとっての健全な預金額になるはずですが、それを達成している銀行なんてあるはずがない。実は構造的には全部つぶれちゃうような構造でやっているんです。そんなところが私たちに健全性を求めるとは笑ってしまいますね。

4)田中秀一郎氏(NPO夢バンク理事)
私どもの夢バンクは現在設立中でございまして、みなさんの成功事例のように、いま貸付してるということはありません。制度は北海道の制度に似ていますね。2階建ての方式になっているのは一緒です。行政からの出資は実際に活動し始める来年度以降に予定されています。長野なので、知事・副知事とも前向きで状況としてはよいですね。事業組合に出資の要請をしていますがかなり協力的です。あと、借り入れをしたいので、そろそろ予備審査に入りたいですね。そこは専門家がボランティアとして審査を行っていく予定です。あと、特徴としては、お金を貸し出すだけではなく「将来性」を意識している点が挙げられるかと思います。人材の紹介やNPO間のリソースの提供の促進、ネットワークの構築、情報の代替機能などを現在は考えています。
個人的には「NPOは出資を受けられない」というNPO法の欠陥に問題を感じています。他にも現在の非営利団体の仕組みは変な所がたくさんあって、しばりは多いし、やれない領域が多すぎると思います。例えば、がんじがらめの金融がいまの問題点です。2階建ての仕組みによって、銀行になることや新規参入を難しくしています。これからはその制度を変えていくことが必要となるでしょう。市民のために法人格を取り、市民のために活動する法人を作れるようにしていきたいですね。ちょうどいま、公益法人改革オンブズマンが現在の非営利制度を転換しようと取り組んでいます。

【田中優氏】
サラ金規正法の存在もありますよね。また、海外には市民が作る銀行が存在しますが、日本にはありません。だから郵貯に流れてしまうのだと思います。

5)坪井眞里氏(東京コミュニティパワーバンク理事長)
 そもそものきっかけは、いまの世の中には主婦が再就職をする場がないんだということでした。それでは起業しようと思っても、今度はお金がありません。私たちはここに自分たちのイニシアチブをもちたいと考えました。これまで、仲間や専門家の助言を受けながら3年間かけて準備を進めてきました。
 他団体と同じように、2階建ての仕組みで融資を行おうとしています。「コミュニティファンド・まち未来」と協力して、2つの組織で融資を行う感じですね。いまは事務所をもつことはできていないのだけれど、将来はぜひもちたいなぁと考えています。また、いまは組合員になった人だけに融資をする、いわば「閉ざされた組織」ですが、一般の市民が事業内容に理解をして協力していくシステムを作っていきたいです。「友だち融資団」のようなイメージですね。

【田中優氏】
 これまでのお話を伺ってきて、出資型に共通する課題として(1)審査(2)法(3)返済があるのだなぁと思いました。

<質疑応答>
●質問1
勉強不足で恐縮ですが、私募債という形で資金を調達することはできないのですか?

【田中秀一郎氏】
そもそも債権というのは他人資本であり、NPO法人ではそれはできません。債券を発行するというのは、有価証券法の規制にもひっかかってしまうので、いまは関係ないのかなと思います。

【フロア参加者〜浜辺哲也氏(公益法人改革オンブズマン)〜】
実は公益法人改革案の提出期限が今年の3月末になっています。今日のお話を伺って、出資型非営利法人に関しても、そこに盛り込んでもいいのかなぁと思いました。現状では中間法人というものもあるが、今後「オルタナティブ研究所」という別組織で考えていきたいです。

【田中優氏】
現在のお金の集め方ですが、簡単に言うと3つで、自分たちで出資を集めるか、融資を受けるか、寄付金をもらうか、どれをどう組み合わせて自分たちがやりたいことにつなげていくかです。法律にひっかからないために、どのようなときにどうするかを田中秀一郎さんに聞くのが一番よいのでは?

●質問2
出資型には、お金が使われる先を明確にして市民からお金を集める、というやり方がありますが、それは出資型のひとつの形態としてお金集めやすい上に実績があります。先にプロジェクトを見せてお金を集めるというやり方に、何かご意見があればお願いします。

【田中優氏】
青森でも、北海道の「はまかぜちゃん」でもケースがあります。やはり先にプロジェクトを行います。はまかぜちゃんは3億円かかりまして、助成金がそのうちの半分を賄って、残りの1億5,000万円は市民が出資するというやり方で行われました。青森のケースは、東京から出資した場合は配当率1%、青森県民は2%、というように、地域の人を厚遇するという仕組みを作っていましたが、それは実に正しいことです。アドホック(品物があったときにやる)な仕組みとして、とてもいいですね。ただ、経常的に回していくときに、お金が常に集まるとは限らないので(市民風車などのプロジェクトがお金集めに頭を悩ませている)、この点が厳しいかもしれません。

【フロア参加者】
市民風車一本だと、お金を求めない時期が極端に集中してしまいます。この場合は風車だけですが、同じように、意義のあるものを10とか20とかプランニングする人がいたら、それを還元して、投資信託の形で設定することを考える、と新聞社の人が話していました。運用の話を出した理由ですが、投資クラブを作る条件が厳しいのと、パッケージ型のものであれば、コストとお金が大丈夫ですが、そこがお金の窓口になって、NPOバンクに貸付をするとかできますが、その前段階で、金融庁の壁が厚いというのがあるのですね。

<実践者から最後に一言>
【杉岡氏】
出資型のエコ貯金についていろいろ考えてみると、出資を返してほしいときには返すことを想定していますが、出資者に対して配当を出せることは期待できないので、寄付感覚でお金を集められるようなキャンペーンを打てないと、詐欺をやっているような感じがあります。一般の企業に行って出資してほしいと言えば一瞬にして断られますし、出資という言葉を強調したり、元本保証しないということをやるのは危ないのではないかと思います。寄付感覚で出資をしてもらって配当は何もない、というように思ってもらう方がよいかもしれません。あと、今年の7月に北海道でバンクフォーラムを、出資型を中心にして行いますので、HPを注目していてください。

【横沢氏】
私のところも出資金の積み立てなんかをやってきて、利用者が出資者だったのでなかなか進まなかったのですが、ここ4、5年になって、認知されたことで思いが通じてきて、急激に出資金が伸びています。法人の信用度が上がったと、事業をやってみて実感しています。金子勝氏の話を聞いてヒントを得ました。私もフォーラムを企画して、お金の流れを変えるような活動を展開してみたいと思います。

【坪井氏】
NPO法人のことがいろいろ言われていたようですが、NPOとかワーカーズコレクティブのような共同じゃないと行政も厳しいのではないか、という世の中になってきていると思います。仲間たちが行政に期待されていて、もっと事業展開してほしいと言われます。私たちが彼らにきちんと融資して、彼らが連帯できるような事業をやって地域を活性化してくれれば、と思います。これからも出資金を集めなければいけませんが、出資して責任をもつということは、大事なんじゃないかなと思います。

【向田氏】
私たちの特徴として、96%が女性からの出資でしたが、最近になって男性からの出資も増え始めたことがあげられます。団塊世代の男性が妻から言われて、10口とか大きい額を出資してくれるようになりました。家庭の中で刺激しあうのも大事なことだな、と思います。男性にも、もっと希望をもって働きかけたいですね。私たちの課題は、融資した先が事業計画通りうまくいっているかいまくいっていない場合、そこへの支援をどういった形でやるかということです。関連団体でワーカーズコレクティブ連合会というのがあります。そこに福祉部会だのいろいろあって、かなりの情報が入るのですが、5年を限度に貸し出すと、2年くらいでその事業をやめざるをえ場合があります。彼らにどのように助言していくかが私たちの課題です。

【田中優氏】
我々が口出ししすぎると、返済してもらうときに困ってしまう。そこが相反する部分です。一方、行政側は、NPOには全部指導しないとだめだ、という言い方をしている。これも偏見だと思いますし、そこのバランスが重要です。

【田中秀一郎氏】
その辺のバランスは長野県に関して言えば、かなり緩いですね。NPO夢バンクとしては、これから始めるところなので、暖かく見守っていただきたいのと、長野関係者に出資を呼びかけてもらいたいです。制度については、NPO法人格が危機的な状況にあることと、あと、正しい市民社会を目指すには、今のNPO法では不十分だと思うので、もっと形にしていきたいと思います。

<終わりの挨拶>
【田中優氏】
みなさん、今日の話はいかがでしたか?作れそう、作りたい、と思われた方が多くいればと有益だと思います。最後に2つよい話を紹介したいと思います。7年以上使っている冷蔵庫をお持ちの方、この7年で85%省エネが進んだおかげで、いま買い替えると5年間で冷蔵庫のお金が取り戻せる上、本人は一銭も払わずに、安くなった電気料金を払うだけで、完全に省エネ製品に取り替えられます。二酸化炭素排出量も電気料金も減ります。このようなことは、金融の仕組みと環境の仕組みをドッキングさせると可能なので、各地域でぜひやってほしいですね。いったいどこに資金があるのかということについてですが、マンションの管理資金は、5億円から10億円を超えるくらいのお金を貯めていますが、みな手つかずの状態なので、視野のなかに入れて話を進めていくことが可能です。

目次へ戻る


3:投資型分科会

速水禎氏(朝日ライフアセットマネジメント「あすのはね」ファンドマネージャー)
私共の会社はお客様から資金を頂いて、株式・債券・その他に資産運用する会社です。この業務をするにあたって3つの信条というものを持ってやっております。

1、事業を通して、世の中に価値偏差をつける
単純にお客様の資産を増やすということだけではなく、運用会社と投資家のお客様と投資先の企業とを、連鎖してつなげていこうというのが、本来の事業を超えたところの目標であります。
2、 品質の頂点を極める
最高の中の最高品質を極めていこうというのが私達の夢であります。
3、 投資家のために忠誠を尽くす

〈What’s SRI〉
 SRIの定義は色々なことを言われているけれども、一番大切なのは、投資家本人が決めることであるということです。そこが出発点になっておりまして、色々なスクリーニングをしている投資信託の多くは、実際に株主になって投資をしていこうとか、後は出資型いわゆるコミュニティ投資といわれるもの、まあ結局このような情報や知識を集められて勉強し、最後に決定し行動するのはご自身です、SRIの一番の基本中の基本というのは本人が決めるということだと思います。

〈朝日ライフアセットマネジメントの取り組み〉
 私共朝日ライフアセットマネジメントが考えるSRIのコンセプトとは、「つながる」ということです。理想と夢と現実の社会、そういうものと環境配慮と企業の利益、あるいは価値観とお金と投資、もしくは同じような価値観を共有されている人達、それらで人と人をつないでいく、それがSRIではないかと考えています。
 そのために私共は勉強をしているわけですが、具体的には、
1、 投資の流れ
 「探す」→「見つける」→「調べる」→「さらに調べる」→「投資する」→「チェック」→「明るい未来へ」→「探す」 ※「あすのはね」商品説明用資料参照
こういう循環を作っていきたいというのが私共の目標です。
2、NPOのサポート
 「あすのはね」の中の商品に組み入れられているのですが、会社の売上げの約10%をNPOへの寄付という形で支援しています。社会的な課題が世の中に山積している中で、企業に投資をするだけではなく寄付をすることで、そういった課題に対して取り組んでいこうということです。

〈「あすのはね」ファンドの特徴〉
1、 経験

2、 ボトムアップ&グラスルーツ(草の根)型
 SRIというのは本当に経験が必要なファンドであり、3年間通して私共はたくさん勉強してきました。様々な企業、今まで300社ほどを調査してきたわけですけれども、年間70〜80の工場などに見学もしくは訪問し、生産現場の方数百人とお話をしたりして進めてきました。企業の調査というのはひとつひとつ丁寧に調べていかないと結局何もわからない。その中で私共の調査では、トップダウンではなくてボトムアップで調べなくてはならない、1社1社歴史から理念から沿革から、どこに工場があって何人くらいの従業員が働いているのか、そういうことを丁寧に調べていくのが私達のスタイルです。
 会社に色々聞いても本当のことはわからない。第三者的な草の根的な声を入れていく、具体的には、環境問題であれば環境関連のNGO、雇用であれば日本の場合は労働組合、そこらへんを考慮しながら調査しています。他にも消費者団体など、企業だけではなくて第三者の声を入れていく、そういうことによって企業の実態をみていくというのが私達のやり方です。SRI・CSRの世界では色々な規格化基準化というのが進んでいっていますが、あすのはねはこれに180度反対の方向に進んでいます。

3、「責任」よりもリーダーシップ
 最近「社会責任」という言葉が非常に取り沙汰されていますが、我々は「責任」ということよりも「リーダーシップ」ということに注目しています。責任というと、言う方も言われる方もあまりいい気持はしないんですけれども、リーダーシップというのを見つけ出そうとしています。これについては後で詳しく説明いたします。

4、ダイレクト・コミュニケーション
 こういった運営をしていくのに一番大切なことは直接対話、「ダイレクトコミュニケーション」をしていくことです。過去は調査の上で企業へのアンケートをしていましたが、そういうのは一切やめまして、直接企業に電話で問合せをする、ダイレクトコミュニケーションというふうにしています。またお客さんともなるべく直接コミュニケーションをとるようにしています。通常投信の販売会社は証券会社を通じてやっておりまして、私共のように直接販売という形は取っていません。インターネットのオンライン証券をご利用頂きながらいろんな情報は私共がお客様に直接お渡しするという形になります。
 SRIのお金を運営していく上で、どうしてそういう投資行動を取るのか、環境配慮をしながらもしくはその従業員の雇用を維持しながら、どうやって利益を上げていくのかその相反する世界をどうやって渡り歩いていくのか、普段調査をしていると非常に迷うことがあります。非常に利益を上げている会社に魅力を感じる時があるのですが、そういう時は必ず次の4つの哲学に立ち返ります。これは全てのSRIに共通するものだと思っています。
 今まで色々な方とお会いして、日本だけではなくヨーロッパ・アメリカ・アジアの色々なSRI実業家のかたとお話して浮かび上がってきたのがこの4カ条です。

〈SRIの哲学(4か条)〉
1、ビジネスを通じて、社会的課題へ積極的に取り組む(ビジョンのある)企業に、長期的投資を行います。
 企業は今まで製品やサービスについて社会に広く恩恵を与えてきたという、非常に大きな役割を担ってきました。製品サービスだけではなくて、従業員を雇用し育て、鍛え訓練し技術を習得させ、生活レベルを向上させてきたという実績があります。
 その一方で、最近注目されているのは、環境の面で言えば地球の温暖化問題・環境汚染・企業のリストラ・地域経済の荒廃、いろんな課題を企業が作り出してきたということも一つの事実なのです。

2、社会的責任と優れた競争戦略とのリンクが収益ドライバーになると考えます。
 SRIの哲学では、だからこそ企業がそういった問題解決の主役になるんじゃないか、原因を作っている企業が解決の主役になるという発想の転換がSRIの哲学です。だからこそ我々は企業に投資をする。優れた企業を投資によって応援していこうというのが基本ベースです。通常企業というのは社会責任を負っている義務がある、ということが会社のトップ、経営者のメッセージから出てきていますが、SRI側の立場としては企業が取り組むことによって人材とか資本とか今後のスケールをアップして、そして問題解決へのスピードを速めることができるというのがSRIの哲学です。ですから責任よりもリーダーシップを求めていくのです。まあそうは言っても、実際は企業に利益が出ないと存続していかないので、我々は企業の収益性というものを重視しています。SRIといっても、投資をして企業の収益、リターンを上げていくのが我々の仕事なわけですから。
 その場合企業の収益性っていうのは、単純な構造で考えると、ひとつはその企業が企業であるという業界の収益性の肥沃度、もうひとつは業界内での競争のどういうポジションにいるか、非常に有利なポジションにいるのか今にもつぶれてしまいそうなのか、この2つによって決定されるのが企業の収益性であります。ここでは企業の収益性は後者を問題にしています。
 社会責任に取り組むここと、実際のビジネスの競争戦略がきっちりしていて人気があるところは、非常に大きな収益があるというのが今まで見てきた経験です。わかりやすい例でいうと、複写機メーカーでリサイクル事業というのがもうまもなく黒字化しまして、この会社では以前から取り組んできていますが、リサイクルすればするほど赤字が出るという状態だった。それが製品の設計を変えたり、生産工程の色々なものを変えるによってだんだん収益性が上がるようになった、実はこれが黒字になるということはこうした戦略上企業の1部門の利益が上がるということ以上のインパクトがありまして、つまり製品回収することによって収益が上がるということで、リサイクル部門のモチベーションが非常に高まるのです。
 自分達の会社の新しい製品、環境に配慮されたリサイクルしやすい設計になっているので非常に品質の高い製品ができてきて、それが数年後に戻ってくる、そして戻ってくる頃には、設計上リサイクル性は非常に高く、また周期性も高くなっているので、その循環を繰り返すことによってますます利益が高まる、そういう仕組みを作ろうとしています。こうすることによって戦略トップに立つことができます。こうしたことで、単純に社会責任を問うということではなく、会社の生き残りをかけた競争戦略として非常に大きな意味があると思います。

3、「成長の限界」を乗り越えて行く事業を発掘します。
 次は成長の限界という話ですが、1972年にアメリカの環境学者のドネラ・メドウズという方が『成長の限界―人類の危機レポート』という著書を書きました。ここでは食糧の問題、人口の問題、環境汚染、そういった様々な要因によって地球は限界に達する、21世紀中に制御しきれない状況になり、人口が減り成長は止まるという警告を発しています。SRIの世界ではこういった成長の限界を乗越える事業を、今一生懸命探しているところです。
 今日本は非常に景気が低迷していまして世の中真っ暗に見えるけれども、例えば風力発電、もしくは燃料電池、また宇宙開発も含めて、こういった非常に大きな産業が立ち上がっているのが今の状態です。あんまり不況だ不況だといってそういう芽をつぶしてしまうのは非常に大きな損失になる、そこで我々は今一生懸命模索しています。

4、自然環境の保全、社会的公平、新しい雇用を生み出す活力のある経済を同時に実現する社会を目指します。
 最後に、これが一番の基本哲学になるかと思いますが、生態系の保存、社会的な正義・公平性、そして新しい雇用をどんどん生み出す活力ある経済を同時に実現するという社会を目指しています。今まではバランスをとるんだというという話だったと思うのですが、そうでなく同時に実現していく、環境をやることで利益が増していく、それでいて新しいビジネスを生んで雇用を生み出す、そういうようなサイクルを作り出していくSRIの大きな課題です。まあ事例はたくさんあるのですが、風力発電とうのは非常にわかりやすい例かもしれません。風力発電を普及させることによって二酸化炭素の排出量が地球の温暖化をおさえ、それにと同時に風さえ吹けばどこにだってエネルギーはありますので、地域の活性化にもつながります。なおかつ化石燃料を重視している現在、化石燃料は紛争の火種となっているので、世界の平和にも貢献する。これからこうした雇用と市場は10倍にふえていき2020年には100〜190万人を超える、こうした状況を探してきてどんどん作り出していく、それがSRIの哲学です。

〈企業を評価する〉
 ではこのような哲学に対して企業はどういう評価をしているかというのがこのマトリックスです。私共は自社で企業の調査をすると共に、ストックアットステイク(→以下SaS)という会社と同時に調査を進めています。彼らは企業を評価する指標を持っていまして、その指標にそってABCのランクをつける。我々はどういう評価をしているかといいますと、グッドカンパニー、リーダー、カタリストの3部門に分かれています。グッドカンパニーのキーは文字通り良い会社ということで、基本的に企業がどういう会社であってもほとんどの会社がこれにあたります。リーダーというのは何かといいますと、社会責任を追及することによってますます競合会社よりもっと利益が上がる、例えばその会社が環境問題や従業員の教育に取り組むことによってどんどん格差を広げていく、そういう仕組みを作り上げた企業がリーダーです。カタリストというのはさらに上の、自分達の事業の変革をしていこう、業界の変革者になるという姿勢があらわれているのがカタリストです。カタリストは非常に少ないです。リーダーも非常に少ないですが、ここ過去3年間の企業の動きをみていて、いろんな企業がグットカンパニーからリーダーに上がろうとしています。そういった企業をくまなく探し出してきて投資するというのが私共の投資姿勢です。ちなみに今現在300社ほどの調査を終えた状態で、今年はさらに110社ほど調査する予定です。今年は大型ではない小さい企業を取り上げて、できるだけ調査していく予定です。
 現在の300社を分類していきますと、SaSの指標でAのランクが25社、Bというのが52社、Cが200社以上で、私達の評価というのは非常に厳しいです。私共は、カタリストでありSaSでA・Bランク、またリーダーでありAランクという企業に、重点的に投資をしていっています。カタリストのCランク、リーダーのBCランクの企業にも投資しますが、グッドカンパニーには株価が非常に割安な時に投資し業績が上がってきたら売却するという感じで、基本的には投資しません。

〈協力調査機関〉
 最後に、私共に協力して頂いている調査機関の話になります。私共はスタート当時から調査体制を変えていっていますが、これからも品質の向上を目指して調査の体制というものはどんどん変えていきます。基本的にはSRIの哲学を守っていくための手段である調査方法というのはどんどん変えていくつもりであります。
 SaSというのはベルギーのエティベル社というNGOの参加にある調査会社です。パブリックリソースセンターというのは、昨年モーニングスター社のインデックスで業界では有名になりましたけれども、ファンド設立当初からお世話になっています。
 こういった調査機関と企業と私共運用会社と、投資家のお客様と、全員で1つの力を持って価値偏差を作っていくというのが私共の取り組みであります。

・ゲスト発表
[未来証券ソーシャルアントレプレナーファンド 小椋広太郎氏]
 私の担当は審査ですので、私の方で最終的な決定をしています。
 始めにソーシャルアントレプレナーファンドというのはどういうものかという話をさせて頂きます。通常のSRIファンドとかエコファンドというのは、証券会社の指定団体(日本の5つの証券取引所とJASDAQ)に登録されている会社が3600社(株式公開企業)あるのですが、その中から社会的側面とか環境側面及び経済的側面等のスクリーングを実施して、だいたい100社くらいを投資対象としてピックアップして投資しています。私共のファンドは投資対象が違いまして、ここの下に控えている未公開企業100万社以上を対象としています。そこに対して私共の判断として社会にとって意味のある必要とされている、もしくは将来的に社会責任を負える会社に成り得るのかということを当社で判断して投資を行っています。
 ここの判断をどうやっているのかというのが皆さんの関心の集まるところだと思います。今まで色々なステークホルダーに対応して社会的に信頼できるところを色々な側面から見て投資をしていく、などと言われていますが、もっとストレートに私達が主観的にその会社を信頼できるかという基準はあると思います。そういうものをまず大事にしています。色々な問題で、他の人から見てもしかしたらそれが本当に社会性なのか社会的責任なのか問うような会社であるかもしれない、それでも私共の会社としてそれが社会に必要なんだ、必要になってくるんだという判断をしたら投資をします。
 では投資をしたら後は終わりなのか、証券市場で値段がついているというものではないので、なかなか状態が良くわからないという問題があると思います。ただし、ポイントしては原則として会社に新規に株式を発行して頂くということになるので、発行してもらった株式に対してファンドが購入するということになります。それはどういうことかといいますと、直接うちのファンドから発行会社にお金が入るということです。ふつうのエコファンドやSRIファンドですと証券市場から買っているので、その段階では会社に直接お金は入っていないんです。どこかの投資家がその株を売りたいというものを買っているということなので。当社のファンドは違って、企業にしっかりお金が入る、しかも金額もけっこうな額で数千万、多ければ億単位のお金がはいります。もちろんその企業のシェアの分、私共の持ち株は多いわけですから、一緒に成長していこうという作業をしております。会社に対して株主としての支援、モニタリングを行なっております。
 SRIの分類に、スクリーニング・株主行動・コミュニティ投資というのがありますが、当社のスタンスとしては、株主行動を重要視しています。というかここをしっかりしないとファンドとしてのパフォーマンスがあげられない。そして投資をするだけでは私共のファンドではもうかるというか何かを生み出すというのはありませんので、じゃあどうするかというと、未公開企業から株式公開企業に上がってもらう、上がってそこで初めて証券市場で売却ができる、そういう形を取っています。
 なぜそういうことができるのかというと、ファンドのコンセプトの問題があります。通常のSRIファンドのように目に見えない大人数の投資家を集めてファンドを形成しているのではなく、投資先をピックアップして、100万社をすべて調査することは物理的に不可能ですから、この中から私共のコンタクトしているところ、知っている会社、拾い上げて出てくる会社というふうになります。そこに対してコンタクトをまずしていくのですが、この時点では社会的責任を果たせるかというのはちょっとよくわからない。ですから継続的にアプローチを続けていくということと、こちらのファンドから、支援したいという出資者もお連れしていって、一緒になって会社の技術がいいのかとか信頼できるのかということをみんなで見つめていく。さらに投資した後にどうやってここを成長させていき、なおかつ社会的なインパクトをどんどん与えていけるのかということを実践していって、最終的には株式の公開という手段をもって私共のファンドに対してのリターンを受け取る、というふうにやっております。

[損保ジャパン環境財団 山中千花氏]
 普段の私の仕事は、環境分野のNPOを支援したり、活動する若い世代の方を支援しています。
 安田火災であった99年にうちの会社は「ぶなの森」という愛称のエコファンドを出しました。なぜ出したかといいますと、安田火災の時代から環境問題に取り組んではいたのですが、社会貢献のつづきでやっているという面が大きかった。金融機関としての本業の機能を生かして環境側面を促進するようなことができないかとずっと考えておりました。
 欧米ではエコファンドやSRIの歴史は長いようですが、それを日本にもってきて本当に売れるのかないう判断が、いつ発売するかを決定する最大のネックだったと聞いています。
 多くの投資家の方から資金を集めて、そのお金を積極的に環境経営をしている企業に投資をし、その成果を持ち分に応じて投資家の方に還元する投資信託がエコファンドです。これの仮説としては、環境問題に積極的に取り組んでいる会社というのは、中長期的に成長する可能性が高い、企業の価値が上がってくる可能性が高いということです。このような仮説を立ててエコファンドの選定をしています。どういう風に銘柄を選定しているかというプロセスですが、最初に環境分析というのをやります。環境という側面からどこの会社さんが頑張って環境経営をやっているかということを最初にあげられます。そしてそれを財務分析、財務的な観点でみて助成がある場合ですとか、選択肢としては100銘柄くらいを手元に持ってきます。その中から60〜70社をその時々の割安銘柄などを中心として、投資信託を構成しています。
 では「ぶなの森」の環境評価というのはどうやっているかということですが、方法3つあります。広く色々な会社の情報収集をする、その時の大きな手段というのが環境報告書です。最初は環境のみを出している企業が多かったのですが、最近は社会性ですとか、もっと幅広く情報開示をされている傾向にあります。こういった環境報告書ですとか、各種新聞・雑誌などで情報を広く集めています。そしてその中で、頑張っているなと思われる企業にアンケートをお願いしています。回答はインターネットで行なっているのですが、だいたい300社の会社から回答が返ってきます。その中から年間に50〜60社にヒアリングに出かけています。それから業種内での相対評価という風にしてやっております。
 では評価はどのようにやっているかというと、1番目に、環境マネジメントをどのくらいやっているのか、すなわち企業のトップが環境に対してどういう姿勢を持っているのかということが挙げられます。トップがしっかりしたものを持っていないと、どうしても社内で環境経営を進めていくのは難しいという現実があります。そして環境の方針を定めているか、実行するためのシステムが組まれているのか、というところを見ます。
 2番目の環境情報の開示・コミュニケーションというのは、環境レポートなどをちゃんと発行しているのか、これをもとにきちんとコミュニケーションを取ろうとしているのかというところを見ています。
 3番目の環境負荷・環境効率の改善というところですが、99年ファンド設立当時はこの3つのポイントを比較的同じウエイトで見ていました。しかし最近はこの1つ目の環境マネジメントは各社で取り組みが進んでいますので、当然の流れとなっていっています。ですから3番目の、これをやったことで本当に成果が出ているのか、ここに特にウエイトを置いて見ていっています。
 エコファンドを設定した時の仮説に、環境問題に積極的に取り組んでいる会社というのは、中長期的に成長する可能性が高いというのがありますが、そのロジックは何かというと2つ挙げられると思います。@環境経営をすると将来的に競争力が強くなる、Aそうすると企業の価値も上昇しますし、環境リスクを軽減しておくというのは予防の概念も働いて、価値の低下を防ぐのではないかというこの2つのロジックです。
 一つの事例としてキャノンの例があります。キャノンは環境憲章を改定しまして、「資源生産性を最大にする」ということを明記しています。これはどういうことかといいますと、資源効率の向上は無駄の排除に結びついて、生産活動全体にコストダウンになります。かつてはベルトコンベア―式だったものを、セル方式(1つの製品の組み立てを、数人のグループで完成まで受け持つ)にしたことで、需要に細かく対応できるようになり、需要を見越して生産した半製品の廃棄が少なくて済むようになりました。セル方式では、環境負荷の改善とコスト削減の両方で大きな成果が得られ、色々なものを少しずつほしいという社会のニーズにも応えられるようになりました。また在庫を持たなくてよい、つまり発注に対して応えればよい、そういうことによって無駄が省け、非常に効率が上がっています。
 こういう形で環境経営がなされていくということで、TOPIXに対してよいパフォーマンスを実際「ぶなの森」は見せているので、仮説が証明される途上にあると思います。
 しかし、ではこれだけいいものならさぞ売れているのだろうと思われるかもしれませんが、だいたい当社ですと80億円くらいが残高でして、株式投資信託の残高に占めるSRIファンドの割合は、全体でみましてもだいたい0.4〜0.5%です。例えばこれは日本の家計の資産構成ですけれども、資産合計が1385兆円、その中身の割合は、預貯金の方が大きくて株式の部分が非常に小さく157兆円です。ここに先程のSRIファンドの割合を当てはめるとすれば表の中の線一本分くらいしかなく、非常に少ないというのが現実です。エコファンドを当社がやった時に意義を皆でレビューしたのですが、投資家の方にとってのエコファンドの意義は、環境経営をやっている投資先であるということでした。当初私達は30億くらい売れればいいと思っていたのですが、実際はもうちょっと売れました。そういうところで、やっぱりグリーンインベストメント、環境に配慮する投資家がけっこういるんだな、ということがわかりました。企業にとっては、環境という尺度で評価されているんだ、ということを意識するチャンスになったと思います。金融機関である当社にとってはやはり本業を通して環境に取り組むことがやっとできたという思いです。あとは、SRIというものを日本に紹介できたことが大きいのではないかと思います。
 一方意義もあれば課題もありまして、SRI指標を積極的に活用してほしいと思いますし、企業はもっとちゃんと情報公開をしていくべきだと思います。
 昨年の秋頃に環境省がSRIについて日米欧の比較調査をしました。その中でSRIにたいへん興味があって投資をしてみたいという人は、70〜80%あったと思います。やりたいという人はいるんだ、じゃあその人達に情報が届いていないのではないか、ということが問題として挙げられると思います。金融機関として、投資家の方から支持されるような商品を開発していくべきだと思います。そして私達個人が明日からどうしたらいいんだろうか、ここは今日のフォーラムで、皆さんも考えて私達も考えていかなくてはならないと思います。

<フロアからの質疑応答>
Q,ゲストの方々の、プライベートのお金をどう運用されているのか、差し支えなければ教えて下さい
速水氏:自分の運用しているファンドに毎月投資しています。それはお客様と同じ船に乗る状況を作り出しています。ファンドの品質を上げていこうというのが私共の長期の目標ですが、実際のファンドのいい部分も悪い部分もお客様と一緒に経験しようという状況を作り出しています。

小椋氏:証券会社に務めている以上証券のことをもっとよく知る・勉強するという意味で、株式・外貨預金であるとか一通り金融機関も分散させて小額ずつ買っています。

山中氏:「ぶなの森」と自社株は買っております。その他どういう観点で選んでいるかというと、子どもの頃父の田舎でよく遊んでいまして、その地域を応援するという意味で地銀に預けております。

Q,SRIファンドの銘柄になることによって企業の価値があがり、それによって株価が上がるというようなケースはありますか。

速水氏:私の持論としては、そこはほとんど関係がないと思います。企業の株価はどうして変動するのかというと、1つは企業の業績、2つ目は、今まで低い成長しかしないと思われていたのが高い成長率を示した時、3つ目は需給、買い手より売り手が多ければ株価は下がるし逆なら上がる、という3つのパターンに分けられると思います。
 SRIに組み込まれて上がるというのは、確かに3つ目の部分では上がるかもしれませんが、例えば大きな年金基金などそういう市場に大きなインパクトを与えるようなところがSRIの投資哲学を組み入れて買い入れれば株価は上がるかもしれませんが、それは業績と対峙して上がるということではない。むしろ社会責任的な経営が企業の生き残りのための企業戦略に組み込まれて、業績としてあらわれてそれが最終的に長期的利益となると思います。直接的には関係がないと思います。

小椋氏:ソーシャルアントレプレナーファンドではありませんが、別のファンドでそのようなことはあるようです。我々が運用することによって、その企業にとって今までにない大きな資金が入り、そこで例えばフェアトレードですとか店舗展開というような体制が整えられ、結果的に上場するというプロセスになっています。

目次へ戻る

↑ページトップへ

Copyright (C) 2005 A SEED JAPAN. All Rights Reserved.