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原子力推進PRとその問題点
〜原発プロパガンダを読み解く〜
 
■「日本の電力の3分の1は原子力発電です」

日本の電力の3分の1は原発であると語られ、原発を止めたら、電力が不足するような印象を与えている。ここで、分けて考えるべきは「発電電力量 (kWh)」と「発電設備容量(kW)」である。発電電力量 (実際の発電量)を見るならば、34.5%を占めていて、確かに3分の1である。しかし、発電設備容量 (発電できる最大能力)を見てみると、原子力は4590万kWで、17.5%を占めるに過ぎない。火力は1億6873万kWの設備で、全体の64.5%を占める。同様に水力は4632万kWで17.7%を占める。

実際にはベースロード電源として、フル稼働している原発は設備稼働率が80.2%である一方、火力は44.5%、水力は23.1%ときわめて低い稼働率である。結果 として、原発の発電に占める割合が多くなる。

仮に、原子力発電の設備を全て停止した場合に、しばしば語られるように大停電になるかを数字の上で見てみたい。真夏の年間最大電力消費の時を考えると、2001年の最大電力は1億8094万kWhであったが、原発を除く火力や水力、地熱などの発電設備容量 は2億1648万kWであった。燃料調達の増加や、水力発電の運転を左右する降水量 などを考慮しても、十分に余力はある。

*数字の出所 日本エネルギー経済研究所編 『エネルギー・経済統計要覧(2003年度版)』  

■「CO2を排出しない原子力はクリーンエネルギー」

確かに、原子力発電は発電の過程においてはCO2を全く排出しない。その点では地球温暖化防止に一定の貢献をしていることは事実である。しかし、CO2を排出しないことが、クリーンで環境に優しいというのは物事の側面 の一部を強調しているにすぎず、詭弁である。原発の場合CO2は排出しないが、かわりに大量 の放射性廃棄物を作り出す。この大きな環境負荷に言及せず、一部だけを取り上げることは正しい評価ではないだろう。逆に、放射性廃棄物は出さないが、CO2やNOX、SOXを排出する火力発電を「放射性廃棄物を出さないクリーンエネルギー」と何故言えないのか、となる

■「ウラン資源(核燃料)のリサイクル」

このリサイクルとは、使用済み核燃料に1%含有するプルトニウムを再処理で取り出し高速増殖炉で発電しながら、同時にプルトニウムを増殖し、一部しか利用できないウラン資源を約60〜100倍に増殖するという夢のエネルギー計画のことで、50年も前に盛んに語られた技術である。現在、これは以下の理由で破綻している。

発電に使用した核燃料と同じ量 だけ増殖するまでの時間を「増殖時間」と言うが、「もんじゅ」ではそれが90年という試算結果 がある。また、中性子の損失があらゆる過程で起こり、効率的な変換は不可能である。再処理の危険性と莫大なコスト、増殖炉の運転の危険に見合うだけの魅力はあるとは言えない。

また、使用済み核燃料中の僅か1%しかリサイクルできない。身近なリサイクル、例えば缶 やビン、古新聞などを考えてみて欲しい。わずか1%だけをリサイクルするものが資源のリサイクルの名に値するだろうか。循環型社会の理念は廃棄物の抑制と資源の循環利用を理念としている。核燃料のリサイクルはその理念といかにかけ離れているかが分かる。 

■「放射線は自然界にも存在します」

自然界にも放射線は存在する。宇宙から降り注ぐ銀河宇宙線と、地球上に存在する放射性元素(ウラン、トリウム、ラドンなど数種類)からの放射線である。それにより1年間に2.4mSv(Sv:シーベルト。放射線の人体への影響を評価する単位 )の被曝をしている。

しかし、原子炉で核反応により生成される人工の放射性物質(核分裂生成物、超ウラン元素)の放射線量 に着目しなければならない。核反応により放射線量 は天然ウランの1億倍に上昇し、元のレベルに低下するのに10の4乗〜10の5乗年、つまり数万から数十万年かかる。核分裂生成物をガラス固化し、金属容器に入った状態でも線量 は容器表面で14000Sv/hである。国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する一般 人の1年間の被曝限度が1mSv、全死亡線量 が7Sv、広島原爆の爆心地での平均被曝線量 15Svと比べても桁違いな線量であることが分かる。自然界に存在する放射線を持ち出して、安全性を強調するのは詭弁であると言わざるを得ない。

2003.8.20 文:かーこ