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◆医薬品とWTO 
 

医薬品と知的所有権

    医学が大いに進歩した現在でも、多くの人々が病気によって命を落とし続けている。そして、その被害者の大半は途上国の人々であり、その原因は結核、マラリアといった先進国なら予防出来るものやエイズのように治療薬が手に入れば生き延びることの出来る病気である。しかし、彼等にとって治療薬を入手することは容易な事ではない。先進国で製造されている医療薬のほとんどは高価で、途上国の人々の手には届かない。
多くの製薬会社は自分たちが開発した薬品の製法に対して特許権(知的所有権)を持っている。特許とは、ある新しい技術を開発した発明者に対価として与えられる独占権である。その目的は、さらなる技術の進歩を奨励し、産業の発達を促進しようというものだ。最近音楽業界で話題になっているコピーコントロールCDも、デジタル情報のコピーから音楽家の著作権を守るために導入されたものである。
   
特許に左右されるエイズ患者の命
   薬品に対する特許制度に世界中が注目するようになった大きなきっかけは、20世紀後半に爆発的な流行を見せたエイズだろう。今なお世界中で猛威をふるい続けているこの病に、多くの途上国の人々は苦しめられ続けてきた。エイズの症状を抑えることが可能な薬が開発されても、その薬は非常に高価で、彼等の手には届かなかったからだ。そして、政府が薬を製造して安価で販売しようとしても、高額な特許料という壁に阻まれた。この知的所有権を守る特許制度を国際的に認め、推進していたのがWTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)」である。
   
知的所有権を守るTRIPs協定
 

  RIPs協定において、特にジェネリック薬の製造が許されるようになった成果は大きい。このジェネリック薬とは、特許の期限が切れた場合に製薬会社に対して特許料を支払うことなく、しかし、模倣品ではない、全く同じ効能を持った状態で生産し、安価で販売することの出来る、非ブランド薬のことである。タイやブラジルでは政府がこのジェネリック薬を製造して国民に配給した結果、大きな改善が見られたし、インドでは安価な治療薬が大量に生産、輸出され、多くの途上国の人々を救っている。
しかしTRIPs協定においては、エイズやマラリア、結核の3種類の病気に対する特別措置は考えられていても、その他の病気に対する薬品には何の対応もなされていない。特に貧困層にのみ蔓延し、世界経済に対する影響の少ない病気への取り組みはほとんど無いといっても過言ではないだろう。例えば、途上国であるためにエイズのジェネリック薬の製造を事実上黙認されていたインドなどのジェネリック薬生産国も、2005年のTRIPs協定のスタートを機に、その許可を取り下げられてしまう。その結果、例えばインドなどで生産されていたジェネリック薬に助けられてきたエイズ患者が苦しむことが予想される。最悪の場合、強力な競争相手がいなくなった製薬会社が一斉に治療薬の価格を上げることも考えられるのだ。

   
□医薬品へのアクセスを改善するために
 


 この他にも様々な問題を抱えているTRIPs協定に対する反論の声は、非常に大きい。世界中の全ての人々には健康的に生きる権利があり、そのためにはどんな病気に対する治療方法にも平等にアクセス出来る必要がある。しかし、人命以上に巨大多国籍企業の利益が優先される現在のTRIPs協定のままでは、改善は難しいだろう。人類が天然痘を克服し、医学の勝利を宣言した直後にエイズが現れ、その後もエボラ出血熱、クロイツフェルトヤコブ病、そして今回のSARSと未知の病気は次々と現れており、それはこれからも変わらないのだから。

   
【参考資料】
スーザン・ジョージ,『WTO徹底批判!』,作品社,2002年
『特集:HIV/AIDSと貧困』,Oxfam,
http://www2.odn.ne.jp/oxfam/topics/hivaids/hiv-aidstppg.html
アフリカ日本協議会,
http://www.ajf.gr.jp/index.html
 

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