SDGsカンファレンス「誰一人取り残さない」ための気候変動対策①

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2018年2月3日(土)に東京都目黒区Impact HUB Tokyoにて
SDGsカンファレンス「誰一人取り残さない」ための気候変動対策
~気候被害をこれ以上助長しないために市民セクターが実践できることとは?~
と題したシンポジウムを行いました。 NPO/NGOの関係者、そして学生を中心に、30名以上の方にお越しいただき、SDGsと気候変動について考えました。

以下で当日の詳細をお伝えします。

■プログラム
14:05 オープニング-SDGsと気候変動問題~次世代を担う若者より~-
(コーディネーター)
一般社団法人環境パートナーシップ会議 星野 智子 氏
(パネリスト)
一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク 新田 英理子 氏
Japan Youth Platform for Sustainability 運営委員会政策局 松井 晴香 氏
国際青年環境NGO A SEED JAPAN 山本 悠久
14:45 休憩
14:55 第1部 講演 気候変動問題の「現状」と「対策」
<パリ協定のルールと日本の政策>
WWFジャパン 山岸 尚之 氏
<気候難民問題の影響と責任>
国際環境NGO FoE Japan  深草 亜悠美 氏
<民間金融機関の石炭火力投融資の実態>
国際青年環境NGO A SEED JAPAN理事 田川 道子
<ESG投資の指標と気候変動対策を踏まえた今後の深化について>
三井住友信託銀行 経営企画部 金井 司 氏
15:55 休憩
16:10 第2部 パネルディスカッション
テーマ:「誰一人取り残さないための気候変動対策」とは?

■講演内容

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク 新田英理子氏
[SDGsとは]
Sustainable Development Goalsの略語。直訳すると、『持続可能な開発目標』という意味で、17の大きな目標が、2015年の9月の国連サミットで採択された。なぜSDGsがそのタイミングで採択される必要があったのか、そこに問題点があると新田氏は話す。今までは環境問題に関連するものであればCOPで対処していたが、このままの状況が維持されていけば地球が危機的な状況になると各国首脳をもが合意するほどに至ってしまった。その状況こそ問題であると語る。また、貧困のない持続可能な世界を次の世代に受け継いでいくために達成すべき目標が、持続可能な開発のための2030アジェンダである。その中で、新田氏が重要にしたい目標が『多様な主体の参加により、オープンなプロセスを経て作成すること』である。つまり、少数民族や企業、ジェンダーなど、主体を問わずオープンなプロセスを経て意見を取り込むということである。SDGsは世界中の人が注目するため、これをビジネスチャンスだと捉える企業も増え、社会的に認知が広がっている。その中心が持続可能な開発目標のSDGsである。環境と開発が統合されて、SDGsが成り立ったと思ってもらえれば、と新田氏は語る。

[SDGsの精神『誰一人取り残さない』とは]
この精神はSDGsの目標の中にはなく、文書の序文で明記されている。目標の部分ではなく、序文や宣言の部分にも目を通すと『誰一人取り残さない』精神がより理解できる。『誰一人取り残さない』精神を文字にすると、 『人類には皆等しく尊厳が与えられる権利を保有し、その点で取り残されている人々に権利が得られるように最大限の努力を行うこと』である。

[SDGsに対する取り組み]
日本では、2016年5月20日に『SDGs実施指針』の策定を目的としたSDGs推進本部を設置した。また、2017年12月には『Japan SDGs Award』を設置し、日本でSDGsに積極的に取り組んでいる自治体や個人を表彰したり、ピコ太郎さんをSDGsの広報大使に任命し、SDGsの推進を表現した。このように様々な取り組みを行っているが、事務局が外務省にあるため、国内では若干の距離感が生じている。ただ、内閣官房にもあり、SDGs市民社会ネットワークがSDGs推進円卓会議という様々な人と対話する機会を多く設けているので、政府と対話しながらSDGsをより推進するよう働きかけている。企業の取り組みとして、『Society 5.0 co-SDGs』という取り組みがある。内容として、経団連が課題解決と未来創造の視点を兼ね備えた視点を持って活動しているというものだ。NPO/NGOの取り組みとして、SDGs市民社会ネットワークの活動を例にあげた。札幌では地域版SDGsを勉強して冊子を作るコンテストを開いたり、人口減少が著しい愛媛県のある町ではSDGsを使って街の活性化を行なっている。

SDGsジャパンホームページ:https://www.sdgs-japan.net/

 

Japan Youth Platform for Sustainability

運営委員会政策局 松井晴香氏

JYPSはJapan Youth Platform for Sustainabilityの略称で活動している。アフリカで行われた国連環境総会などに参加し若者の代表として発言をしている。
松井氏は、この総会自体あまり知られていないことや若者の参加が少ないことに危機感を抱き、SDGsに対する国内での意識の向上を目指している。

松井氏はJYPSの活動の目的を語った。ヨーロッパなどでは若者が国際会議に参加した事例があるが、日本では依然として若者の参画が進んでいない。JYPSは、持続可能な開発や関連する会議などの、意思決定の場で若者の意見を反映させることや、JYPSを団体ではなくスペースやネットワークとして理解してもらうことを進めていきたいと述べた。遠い国のことに思えてしまうことをもっと身近に感じてもらいたい、もっと日本の若者に関わってもらいたいという思いで活動を続けてきたそうだ。

JYPSの加盟員は以下のように分けられる。
・加盟団体 ここには学生団体など30の団体が所属している。
・加盟個人 ここではSDGsに興味のある300人くらいの個人のことを指す。
・運営委員会 広報などを行うが、あまり大きな線引きはないという。
・分野別アドバイザー 専門的に活動している分野別アドバイザーがいることで専門的な知識を共有してもらう狙いがあるそうだ。

JYPSはSDGs Japan とTICAD のYouthユニットに所属しているが、なぜ、どのように国連の会議に出席しているのかを松井氏は説明を加えた。
政府の話し合いである国連で国会外の主体を取り入れる考えが1922年地球サミットから生まれた。それにより、メジャーグループ制度という9つの国会外の主体(女性、子供と若者、NGO、地方自治、労働者、労働組合、ビジネスと産業、科学技術者コミュニティ、農業従事者)に加えて4つの団体が追加で参加することになったという。(コミュニティ、ボランティア財団、移民、お年寄りと障がい者)JYPSはメジャーグループの内のChildren and Youthの団体として国連会議に参加している。

JYPSの主な活動としてはハイレベル政治フォーラムというSDGsが各国でどこまで進んでいるかを議論する会議において日本から10名ほどが参加し会議の様子をライブ映像で流し、SNSで発信した。また、ワールドユースフォーラムという2017年12月にエジプトで行われた若者のための会議では、世界で若者や開発がどうあるべきかという意見を正式な場で述べることに成功した。2016年ナイロビで行われたTICAD Ⅵの前後に日本でfollow upのイベントを行った。また、日本とアフリカの若者と提携して、会議の中心であった3つの話題について若者がどういう考えを持っているかという内容で、Youth宣言文を外務省に提出したという。UHCフォーラム (universal youth coverage forum)では、保健関係に興味のあるメンバーが参加し、日本ユース声明をその場にいた政府関係者に提出した。
国内向けイベントやキャンペーンとしては、twitter やfacebookで自分たちの活動の様子を発信し、SDGs関連の国際記念日についての解説を加えながらSDGsとは何かを発信している。また、SDGsと日本や私たちの生活との関りは何かという解説も行い、SDGsに興味を持ってもらえるようなSNSの更新を目指している。UNDP主催イベント 「SDGs×Youth」では自分たちの活動を紹介し、広く興味を持てもらえるような活動を行っている。また、日本ユネスコ協会との環境問題に関する勉強会やJYPS総会でのアドボカシートレーニングなどを行った。

なぜこのような活動を行っているのかについて松井氏は述べられた。アドボカシーやSDGsに対する若者の参加、興味が足りない危機感を感じており、アクションプランや実施指針の作成の中でもyouthをどれだけ巻き込んでいくかが重要だと考えている。そして政府もその重要性を理解しているため、どのような人をどう巻き込んでいくかを考えることがこれからは重要になると考えている。そのためには所属しているネットワークで存在感を出す必要があるので、会議などに顔を出し続けたいと述べた。まだ若者が一つの社会集団であるということの認識が薄いので、Youthユース=学生という考えに反対し、18歳から35歳をユースと捉え、就職したらやらないなどの固定概念に打ち勝つことが必要だとも考えているそうだ。

これからは、ハイレベル政治フォーラムで意識啓発、TICAD2019などのYouthサミットの企画運営を続けていき、G20が日本であるので、日本の若者が参加するチャンスと捉え、18歳から35歳の人誰にでもチャンスがあると訴えていきたいと意気込みを語った。

ホームページ:https://japanyouthplatform.wixsite.com/jyps

国際青年環境NGO A SEED JAPAN
山本 悠久

[A SEED JAPANとは]
『Action for Solidarity, Equality, Environment, and Development』の略語であり、直訳すると、『青年による環境と開発と協力と平等のための国際行動』という意味である。1991年に設立し、今年で27年目となる。A SEED JAPANができたきっかけとして、地球サミット、国連環境開発会議が1992年にリオデジャネイロで開催された際に、持続可能な開発という点で、環境問題を防止しなければならないという潮流がヨーロッパの若者を中心として広まり、日本もその影響を受けてA SEED JAPANが発足した。そのため、元々は国際キャンペーンだったが、現在は団体として活動している。ちなみに、ヨーロッパの影響を受けて発足した際に、他にも同じような影響を受けて『A SEED』という名を冠して活動していた団体が当時は多かったが、現在はA SEED JAPANのみとなっている。

[A SEED JAPANの理念]
先ほども述べたように、A SEED JAPANができた大元は、1992年に開催された地球サミットにおける持続可能な開発という点にあるため、環境問題というものを考えていくのだが、環境問題はあくまで結果に過ぎず、それを引き起こす原因である経済や社会構造そのものを変えないと環境問題は解決しないため、経済や社会構造を見据えることで環境問題にアプローチしていくことがA SEED JAPANの根本的な理念である。また、国際青年環境NGOという名を冠しているので、将来世代である青年の立場から、自分たちが生きたい未来を創造できるように環境問題を分かりやすく伝えることが二つ目の理念である。そして、長期的な視野を持って社会を変えるというのが三つ目に挙げられた理念である。地球サミットが開催されてから20年近く経って、より環境問題が顕在化しつつある中で、SDGsでは2030年を見据えて計画されているように、今現在から将来を見据えて行動することが将来的な問題の解決につながると山本氏は述べる。また、経済や社会構造を見据えるという理念の具体例として、熱帯雨林の伐採を考えると、それを食い止めるために植林という解決方法が存在するが、それだけではなく、そもそも木が切られないような状況を作るために、熱帯雨林を伐採する企業に木を切らないよう提言したり、政府に木を切らないよう提案するような活動を行うのである。ただ、1団体だけの力だけでは政府や企業に対して影響力が少ないので、似た団体で集まって活動をすることが政府や企業に圧力をかける上で重要である。同時に、市民や消費者に環境問題に関する啓発を行い、団体と市民・消費者が団結することでより大きな力をもって環境問題を防ぐことができる。

[A SEED JAPANのプロジェクト]
A SEED JAPANが発足して27年経ち、様々なプロジェクトを実施してきた。具体的には、先ほどの例で挙げたように、政府や、環境に悪影響を及ぼすような企業に提言したり、特定の水や生物多様性に関する問題や、私たちが使う家電の中に含まれる鉱物資源の問題について取り扱ってきた。ちなみに、どのような問題を解決するかは構成員で話し合って、こういった問題を解決したいといった要望を元に決められている。現行のプロジェクトとして、主に3つのプロジェクトが存在する。一つ目はエコ貯金プロジェクトである。エコ貯金プロジェクトとは、私たちの貯金が環境破壊をもたらす企業に融資しないよう、利用者に啓発したりしてそういったお金の流れを断ち切る活動である。二つ目はひまごみらいプロジェクトというものだ。このプロジェクトの中には主たる活動が二つ存在する。一つは結イレブンというもので、東日本大震災で発生した福島原発の事故によって多くの帰宅困難者や福島の地域が壊されているという状況が発生している。そのような状況を解決して、事態の再発防止を目指す活動である。また、福島のNPO団体や有機農家さんと会合や食事などを通して、将来あるべき姿を話し合い、その未来への実現を目指す。また、未だ原発を利用する傾向のある政府に原発の危険性などを訴えることで、第二の福島を生まないような活動を行っている。そして三つめの活動がエネルギーとまちづくりプロジェクトだ。SDGsの目標の一つとして、安全なエネルギーを利用するということが掲げられているように、化石燃料など環境破壊に通じるものはなるべく使わずに、よりクリーンな再生可能エネルギーを利用するよう促す活動を行っている。

[A SEED JAPANの役割]
・未来世代である青年としての立場として、今自分たちに何ができるのか考え、そして実行することが一つの大きな役割である。また、営利的な、短期的な利益ではなく、長期的な利益を中心に考えていくことも重要な役割である。また、A SEED JAPANが発足してから多くの人がA SEED JAPANと関わり、そして行政や企業、NPOへと飛び立っていった。そのような方たちとのパートナーシップを形成することでより大きなインパクトをもたらすことができるだろうと述べて、最後を締めくくった。

ホームページ:http://www.aseed.org/

オープニングディスカッション

Q : SDGsについてユース団体がどう捉えているか、またそれに関しての取り組みとしてどのようなことを行っているか?

A : 松井氏

SDGsは名前ばかりが先行し内実があまり知られていない。SNSでの広報を続けていきたい。同時にユースの参画が必要だと考えている。HLPF(ハイレベル政治フォーラム)で採択された閣僚宣言でもユースが一つのステークホルダーとして参画することが重要だと認められている。本来はユースとは18~35歳を指すが、ユース=学生という固定観念がユースの参加の壁になっているのではないか。まずSDGs自体を広め、ユースは学生だけにとどまらないことを訴えていかなくてはならない。

A : 山本

A SEED JAPANは持続可能な開発の実現に対しての活動を25年間続けている。SDGsはその活動に直結していると考えている。SDGsで掲げられているゴールはこれまでの活動の中で存在し、そのゴールは決して新しいものではなく以前からずっと扱われている問題である。A SEED JAPANは自分たちの活動を続けていくことでSDGsのゴールを達成することができると考えている。

A : 新田氏

企業ユニット制度というものがあり、ここでは開発、環境、国内貧困、社会的責任など13のユニットで活動している。SDGsの文章には障がい者という文章はあまり出てこない。しかし、NPO/NGOが取り残されている人を取り残さないという理念で活動するのであれば、取り残されがちな、取り残されそうになっている人に寄り添う必要があると考えている。そのため、障がいユニットやユースユニットなどを特別に設けて活動している。

 

Q : 何をしたらもっとユースが参画しやすくなると考えているか?こんなことをやってほしい、頑張っていることは?

A: 松井氏

アドボカシーなど呼びかける先は政府などが多い。本当に若者の参画に繋がっているのか議論の余地はあるものの、HLPFでヨーロッパの派遣団はユースとして若い人たちを巻き込み、そのユースの人たちが会合などの正式な場で発言しているという例がある。また、国際会議が地理的に遠いところにあるという難点もあるが、政府からより日本の若者に向けて、参画するチャンスがあるということを呼び掛けていくべきだ。またメジャーグループ制度もまだまだ知られていない。多くの人がユースという言葉を聞くと年齢を気にしてしまうが、ユースは35歳までを指す。それ以上の人もyoung at heart でSDGsの問題に取り組んでほしい。

A : 山本

A SEED JAPANの活動をする中でもっとたくさんの人に活動を知ってもらいたい。まだまだ広報媒体や、宣伝の改善をすることができるのではないかと考えている。また、イベントなどに来られなかった人もSDGsに対しての意見は持っているはずなので、その人たちとの架け橋のような存在になりたい。

 

(レポートの続き)

SDGsカンファレンス「誰一人取り残さない」ための気候変動対策②

2018-03-08