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「種取りはロマンだ!」林 重孝さん(千葉県佐倉市) 2005年 1/19


今回 お世話になったのは、林 重孝さん(千葉県 佐倉市)。林さんは日本有機農業研究会 種苗部に所属しています。農家の間での種の交換について精力的に活動していらっしゃいます。林さんは、現在、林さんと奥さん、そして研修生(2〜3人)で約150a(アール)の畑で、約70種類(品目)もの野菜をすべて無農薬・無化学肥料で栽培しています。(写真中央が林さん)

その内、自家採取した種で栽培されている作物の割合は作付け面積で言えば半分ぐらいだそうです。品種で言えば、60品種ぐらい。(ex 大豆であれば4品種:黒豆、青豆、かたい、普通) この日は、まず15:00〜日没まで、林さんと一緒に参加メンバー(こう、のり、けろ、まっきー、こめ、さとっち)全員で、畑の雑草取りをした後、

2時間かけてじっくり「種取り」に関するお話を伺いました。その話し合いには佐倉市のご近所 栗源在住 Peace Seed という団体を主宰されている荒井真理子さんも参加してくださいました。

以下、その内容です。ご覧下さい。


「種取りはロマンだ!」林 重孝さん(千葉県佐倉市) 2005年 1/19

食農チームメンバー(以下、食農)、 林重孝さん(以下 林さん)

食農:
「林さんが自家採取にこだわるようになったきっかけは何なのですか?」
林さん:
「僕が若い頃の1970年〜80年の農業は、ヤマイモに漂白剤をつけたり、サツマイモに発色剤につけたりしていた。売れれば何してもいいっていう価値観が当たり前だった。僕はこの価値観がいやで、有機農業をやろうと思った。
 今から26年前、埼玉県小川町の金子美登さん宅で1年間の研修生を終えから、3年後の1982年(22年前)くらいから、金子さんから種苗交換会をしようという提案があった。なぜかというと、在来種、つまり化学肥料のなかった100年くらい前から採りつづけてきた種を交換して普及することで、有機農業に適した作物がみつかるのではないかという期待と、代々採っている種はその家の宝であり、門外不出ではあるが、いろいろな事情で大切な種がなくなってしまうことがないようにという理由で。そこで有機農業研究会の生産者部会のメンバーの中から、種をもう少し深く勉強しようということになり、種苗部会が出来た。その後、ジーンバンク(千葉)や野口種苗さんなどの種取りのプロを呼び、種苗研究会をあちこちでやった。こうして、種苗部会が出来、勉強をしていく中で、ちゃんと自家採取をやろうということになった。」

食農:
「自家採取する農業の良さはどこにあるのでしょうか。」
林さん:
「いろいろ作っていると、その中で、白いサツマイモができることがある。自分だけの種であるという面白さがある。おいしさの追求もできる。自分のこだわりがだせるところかな。」
食農:
「今の時代に、自家採取しながら農業をやっている方は少数派だと思います。林さんが、自家採取の農業は、佐倉市近郊の消費者の方と、直接、提携してらっしゃる事が重要な点かと思うのですが、消費者の方の反応はどうですか?」
林さん:
「『おいしい』という反応が多い。自家採取からの農業は味にこだわることができるからね。例えば、市場では甘味の少ないコクのないみかんが出回っているが、私のところのみかんはむかしからのコクのある甘味の多いみかんなんだ。」
食農:
「種にこだわると、おいしさを追求できるんですね。消費者にとっておいしさって重要ですよね。」
林さん:
「おいしさに関して言えば、品種も大切だけれども、有機農法(無農薬・無化学肥料)である事も重要だね。例えば、元来、西洋ほうれん草よりも日本ほうれん草の方がおいしい。でも有機農法で西洋ほうれん草を作り、農薬を使って日本ほうれん草を作るとその味は逆転するんだよ。」
食農:
「消費者にはどのような層の方が多いのですか?」
林さん:
「おいしさ・安全性を大切にする人が多いね。それに年配の方が多い。逆に若い人は少ないね。」
食農:
「その方達の中に『種を守りたいから』っていう方は、いるのですか?」

林さん:
「種を守りたいから(その農業を支えるという意味で)って言う人ねぇ。そういう人はほとんどいないかな。さっきも言ったけど多くの人は、おいしさや安全性を求めて、僕の農産物を買ってくれる。」

食農:
「消費者の方との信頼をどのように築いたのですか?」
林さん:
「自家採取にこだわる前から有機農業を始めていた。その頃、消費者と提携していたある生産者が船橋にいた。その方の消費者が増え、生産が間に合わなくなったので、その消費者を紹介してもらった。また、学生の時から日本有機農業研究会に入っており、そこでも消費者のところへ行き、関係を築いた。今もその関係が続いている。」
食農:
「今もその関係が続いているんですか。すごいですね! 」

食農:
「ちょっと話が変わるのですが、現在 私達は、自宅のプランターで、在来種を育てています。『日本ほうれん草』と『みやまコカブ』という品目を育てているのですが、保存する種をどう選べばいのかアドバイスいただきたいのですが。」
林さん:
「まずある程度抜いてみて、どういう特徴の種を残したいか決めるのが大切。どんな大根の種を残したいのか。同じ大根でも表面の皮が真っ赤なものからから白っぽいものまである。」
食農:
「林さんはどのような基準で選抜するのですか?」
林さん:
「病虫害のないものや形や色のいいものかな。でも選抜の基準は同じ品目でも品種により違うんだ。例えばさつまいもならば、紅東という品種ならば 沢山芋がつくのを選ぶけれど、関東83号という品種は細いのがいっぱいなる傾向があるから、あまり芋がつかないのを選ぶようにしている。」
食農:
「種を選抜する基準をどこに置くかが大切なんですね。他に何か注意する点はありますか?」
林さん:
「どの作物の種を選抜するかを決めたら、その作物が他の作物と交雑しないように、種採りする大根を植え替えたり、網をかけたりする事が必要かもしれないね。」

食農:
「次に種を採った後、種を保存する時に林さんが気をつけていらっしゃることは何ですか?

林さん:
「種を取ったら乾燥させることがまず大切かな。なぜかというと種取りは6月に行う事が多いんだ。6月は梅雨の時期なので、種を乾燥させないと保存できないんだ。種は湿気に弱いからね。それに何年持たせるかによって保存の方法が違う。常温で保存するなら持って一年。冷蔵庫なら5年、冷凍庫なら20年かな。
湿気のはいらないようにする事が大切なので、何年も持たせたい時には、缶ならばテープを巻くなど工夫をすることも考えないとね。」
食農:
「どうも、ありがとうございます。湿気には気をつけないといけませんねー。」
林さん:
「それともう一つ、種を冷凍庫から出すときは気をつけること。温度差で種がダメになってしまう。冷凍から冷蔵へ移して一日ならすこと。それからならOK。」
食農:
「人間と一緒で、急に寒いところから熱い所にいくと体調を崩してしまうんですね。」
林さん:
「そうだね。種も生き物だからね。」
食農:
「林さんが種取りで注意されていることは何ですか?」
林さん:
「形だけにこだわらない事かな。不思議な事に、いい形だけを掛け合わせて行くと種の発芽が悪くなるんだ。純粋に形のいいものと形のいいものを掛け合わせいても近親交配になり、思い通りにいかない事も多い。違った形を持つ種を掛け合わせると、案外いい種が生まれたりする。」
食農:
「へぇ〜。おもしろいですね〜。多様な個性が合わさってこそいい種が生まれるんですね!」
食農:
「林さん。今まで貴重なお話ありがとうございました。最後に青年へのメッセージがありましたらお願いします。」

林さん:
「 農民は農民の哲学をもたなければだめなんだ。僕がよくする例え話にトムソーヤの話がある。ある時、トムソーヤは、ペンキ塗りの仕事をやることになった。周囲の友達は、トムソーヤを見てバカにした。『やーい、トムは、あんな仕事やってるよ。バカじゃないの。』ところがペンキを塗っているトムはとても楽しそうだ。トムがあまりにも楽しそうにやっているから、最初バカにしていた友達もトムのやっているペンキ塗りをやってみたくなって、しまいにはトムを手伝っていた。という話だ。」
食農

「あまりにも人が楽しそうにしているとつられてやってみたくなるものですよね。」
林さん:
「農業もそれと同じ。例えば、田植えの話。機械で田植えせずに、手で田植えしていたらバカにされるだろう。でもそれを楽しくやる姿勢を見せていきたい。楽しんでいれば、バカにしていた周囲の人の価値観も変わっていくものだと思う。」
食農 :
「楽しむ姿勢かぁ。」
林さん:
「毎日、とてもわくわくしながら自家採取を続けている。さっきも言ったけれど、突然、白いさつまいもができることがあるんだ。世界に一つだけの作物ができるんだよ。種取りはロマンなんだ。」

(完)

 

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