気候変動対策の重要な側面「公正な移行」について考える~ポーランドの事例から

お話:東洋大学 国際学部教授 市川顕先生
聞き手:国際青年環境NGO A SEED JAPANメンバー 

2015年にパリ協定が採択されて以降、各国は化石燃料の段階的な削減に向け、再生可能エネルギーへの転換を進めています。こうした中、石炭産業を始め、従来の化石燃料産業に従事している人々が受ける負の影響をいかに緩和するかという文脈で「公正な移行」という概念が注目を集めています。

A SEED JAPAN ESGウォッチプロジェクトでは、2023年度から資産運用会社の気候変動の取組を調査しスコアリングをしてきました。今後は「公正な移行」についての観点も取り入れた議論が必要であると考えており、理解を深めるために、脱石炭に伴う公正な移行の好事例であるポーランドEUの環境政策がご専門の市川顕先生(東洋大学国際学部教授)にお話を伺いました。

<インタビューで判明したこと>

目次

ーランドにおける石炭産業の立ち位置について教えてください

・日本人にとって米が単なる消費財でなく、心の支え、伝統文化であることと同様に、ポーランド人にとっての石炭は自分達の祖父、父が炭鉱労働者として国家に貢献してきたという誇りの源です。ポーランドは1989年に体制転換を経験するが、それまでの社会主義経済にとって炭鉱労働者は労働者の鑑でした。

従来のポーランドのエネルギー政策は石炭一本足打法であり、2010年代に入るとロシア産の石炭を輸入していましたが、2014年のクリミア侵攻を受け、政策の転換を余儀なくされました。その政策の成果がバルティック・パイプ(ノルウェー~デンマーク~ポーランドを繋ぐ地下パイプライン)とシフィノウイシチェのLNGターミナルであり、ここでエネルギー供給の多様化の流れを作り出しました。それと並行して、原子力を推進し、2050年までのエネルギーは原子力でまかない、それ以降は洋上風力や他の電源にシフトする想定がなされています。

・このほか、ポーランドとバルト三国間ではガスパイプライン、送電線を敷設し、西ヨーロッパ~ポーランド~ウクライナという東西のライン、それからバルト海からポーランド、中東欧諸国(ブルガリア、ルーマニア)を繋ぐ縦のルートを構築し、東西と南北のエネルギーの十字路になることを目指しています。

鉱跡地のポテンシャルとはどのようなものでしょうか?

カトヴィツェはかつてポーランドの中でも石炭で栄えていた都市ですが、現在は国際会議の開催を始め、産業の情報集積地として機能しています。経済合理性の観点から石炭で儲けるのではなく、後進国に対して石炭採掘技術やその道具を売る意識が強くなってきているのではないかと思います。

・カトヴィツェを始め、炭鉱や石炭火力発電所が所在する都市は基本的に大規模な鉄道網が敷設されています。工場直結の鉄道網が整備されており、単純労働者が多い国は製造業にとって非常に魅力的な環境であるため、炭鉱跡地の利用は非常に有望です。

ーランドのエネルギー転換にあたっての課題はありますか?

炭鉱産業は産業として採算が取れないため、自然消滅していくでしょう。ただ、これまで教育レベルの低いポーランド人労働者に仕事を与えてきたのが炭鉱であったため、今後彼らがどのように生計を立てていくべきかは議論する必要があります。

教育レベルの低い労働者の雇用先として農業が挙げられます。ポーランドは旧共産圏の中でも珍しく小農中心であり、この部分をより強い農業にしていく方向もあるのではないかと思います。そのほか、今まで人手不足でウクライナ人が従事していた物流分野、それからエネルギー面では太陽光発電や風力発電の保守管理分野に従事してもらうのも選択肢の1つであると言えます。

インタビュー全文はこちらをご覧ください。

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