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◆企業の投資とWTO
 

ナイキの現場で・・・

   1997年、ナイキが委託するベトナムなど東南アジアの下請工場で、強制労働、児童労働、低賃金労働、長時間労働、セクシャルハラスメントの問題があることが暴露された。
こうしたスウェット・ショップ(搾取工場)と取引するナイキに対し、米国のNGOや学生グループなどは、インターネットや大学キャンパスを通じた反対キャンペーンを起こした。
ナイキ製品の不買運動や訴訟にまで発展した結果、翌年、ナイキは、海外工場での 労働をなくし(従業員年齢下限を16才から18才に引き上げ)、NGOによる工場内査を認めるなど、労働条件改善に向けた抜本的対策を約束する声明を発表した(※1)。しかし、未だにスポーツ靴を児童労働で生産しているとNGOから指摘されている(※2)。なぜこのような無責任な企業活動が展開されるのだろうか?
   
海外直接投資の社会的問題点;その1
 

 UNCTAD(国連貿易開発会議)の世界投資報告(2001)によると、世界の貿易の3割は多国籍企業の企業内貿易であり、多国籍企業が一方の当時者となっている貿易は、全貿易の6割を占めている。
 企業の本質的な目的は、少ないコストで多大な利益を得ることだ。その目的を達成する手段の1つとして、多国籍企業は海外で事業を行うために子会社を立ち上げたり、工場を建設するために、海外直接投資を行う。企業は、海外直接投資をする事によって企業内国際分業を促進させ、コストを削減することができる。しかし、多国籍企業の進出先が発展途上国の場合、環境破壊や人権侵害などが起こりやすい。
 多くの発展途上国は、雇用創出、輸出増加、技術移転、インフラ整備などを期待して、外国企業の投資を積極的に誘致している。そのために、労働規制の緩和や免税措置を設けた「輸出加工区」を設定したり、労働組合運動を国内法で禁止している国もある。これらの国は、多国籍企業の新規投資を拡大させたり、工場が他の国へ逃避しないようにするために、社会・環境的規制を緩和させる。NGOはこの現象を「底辺への競争」と呼んでいる(※3)。このような構造的サイクルがある中で、多国籍企業による深刻な環境破壊や人権侵害の事例が各国から報告されている。

   
海外直接投資の社会的問題点;その2
   
   海外直接投資は上記のような社会的な問題だけでなく、途上国の経済にとっても悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。企業は利益を配当という形で株主に還元するために、株主のほとんどが先進国の投資家や銀行である多国籍企業の場合、途上国で産み出された利益の多くが、途上国内に再投資されずに、先進国へ流出してしまう。このため、途上国の中小企業の発展を阻害する可能性がある。
   
受け入れ国の態度は・・・?
   日本政府やEUなどの先進国は、2003年9月にメキシコで開かれるカンクン閣僚級会合に向けて、WTO投資協定の交渉開始を求めている。しかし、インドやマレーシア、アフリカ諸国などの途上国は政策の選択肢を狭めるものであるとして、交渉の立ち上げそのものに反対している(※4)。
   
多国籍企業を規制するルール作りが先決
 

 現在、多国籍企業の活動を規制する国際的な法的枠組みは十分に機能していない。OECDの多国籍企業ガイドラインや国連のグローバルコンパクトは自主的なイニシアティブであり、多国籍企業の透明性や説明責任を高めるための法的拘束力を持っていない。このように、国際的な枠組みが不十分であるにもかかわらず、WTO投資協定によって海外直接投資における多国籍企業の権利を強化することは、環境破壊や人権侵害をさらに拡大させる恐れがある。
2002年9月に南アフリカ共和国において開催された持続可能な開発のための世界サ ミット(ヨハネスブルグサミット)では、多くの国際NGOが多国籍企業をの社会的責任を強化する国際的な枠組みの設立を訴え、枠組みを発展させることが合意された。また、2003年6月に開催されたG8エビアンサミットでは、社会的責任を果たそうとする企業の取り組みをG8支持する方針を示し、経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業ガイドラインの順守などを呼びかけた。
 WTO投資協定を立ち上げる前に、これら多国籍企業の透明性や説明責任を高めるための法的拘束力をもった枠組みが必要である。その上で、海外直接投資に関する多国間のルールが必要であれば、国連などWTO以外の場所で議論するべきだ。なぜなら、WTOの交渉プロセスや紛争解決メカニズムが先進国にあまりにも有利であり、WTOで投資協定を立ち上げる限り、途上国における持続可能な発展を促進させるような投資協定は期待できないからである。

   
   

【参考資料】
(※1)CorporateWatch http://www.corpwatch.org/trac/nike/ernst/audit.html
(※2)Global March
http://www.globalmarch.org/world-cup-campaign/presskit/english/2-Reports/Indonesia.php3
(※3)利潤か人間か 北沢洋子 コモンズ出版
(※4)TWN Info on WTO 25th May 2003  Third World Network

 

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