
このページでは、オンライン署名「私たちの「年金」で気候危機を進めないで!温暖化を止めるための運用を求めます。」の中から、主要な用語について解説します。
【オンライン署名の用語】
GPIFとは
年金積立金管理運用独立行政法人の略称で、日本の公的年金(厚生年金・国民年金)の積立金を運用する公的な機関です。日本の公的年金は、現役世代が納付する保険料を、その時々の高齢者世代に給付する「賦課方式」を取っています。そのため将来、少子高齢化が進み、現役世代の保険料だけでは賄えなくなることが想定されるため、GPIFは保険料の余剰分を積み立て、運用し増やす役割を担っています。
資産運用会社(アセットマネージャー)
個人や年金基金、保険会社などから預かったお金を、株式や債券などに投資して運用する専門の会社です。
脱炭素
再生可能エネルギーの導入、省エネ、技術革新などによって、二酸化炭素などの温室効果ガス排出を大幅に減らし、最終的には実質ゼロにすることを目指す考え方。
(温室効果ガスの排出量)ネットゼロ
「ネット」とは、正味で、つまり、排出量と吸収量を差し引いた状態でゼロにするという意味です。世界の気温上昇は、人間の産業活動による温室効果ガスの累積排出量と比例の関係にあるとされます。そこで、気温上昇を止めるために、世界全体で2050年までに温室効果ガス排出がネットゼロにすることが国際的な目標になっています。
エンゲージメント
投資家が投資先企業と対話を行い、経営や環境・社会面の改善を促すこと。株式を売却する代わりに、継続的な話し合いを通じて企業行動を変えようとする点が特徴です。例えば、気候変動については、排出削減目標の設定や情報開示を求めるエンゲージメントが行われています。
【その他(資産運用会社の気候変動の取り組み調査について)】
投融資のケース調査とは、具体的に何を行っていますか?
A SEED JAPANは、大手銀行の投融資方針を環境・社会面で評価する取り組み「Fair Finance Guide Japan」の設立に関わりました(現在は協力団体)。世界の個別の環境・社会問題と日本の金融機関の関わりについて、継続的にケース調査を行っています。
多排出事業者とは、具体的にどのような企業ですか?
事業活動によって大量の温室効果ガスを排出している企業のことです。具体的には、火力発電会社、鉄鋼、セメント、化学、石油・ガス、航空、海運、自動車製造などの企業を指します。
ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ(NZAMI)
資産運用会社(アセットマネジャー)が参加する国際的なイニシアチブ。2050年までに自社の運用資産に関する温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを目指しています。
(金融機関の)ポートフォリオ排出削減目標
金融機関が融資や投資を行っている企業、金融資産全体(ポートフォリオ)から発生している温室効果ガス排出量を、将来どの程度減らすかを示す目標のこと。投融資を行う先の企業の排出量について、資金の提供度合いに応じて金融機関による間接的な排出とみなされます。
パッシブ運用
株価指数(日経平均株価やTOPIXなど)と連動させて株式・債券を保有・売買することで、市場全体の値動きと同じ成果を狙う投資手法です。「パッシブ」は「受け身」の意味で、指数を上回る成果を狙う投資手法(アクティブ運用)と対比されます。指数に含まれる企業は基本的に保有し続けることになるため、ESG課題の解決に向けては、議決権行使や企業との対話が重要とされます。
議決権行使
株主が、株主総会の議案について賛成・反対の意思表示を行うこと。取締役選任や環境関連の株主提案への賛否は、企業に対する重要なメッセージとなります。
スチュワードシップレポート
企業価値の向上やESG課題の改善にどう関わったかを説明する目的で、年金基金や運用会社などの投資家が、投資先企業とどのように対話し、議決権をどのように行使したかをまとめた報告書。
株主総会
株式会社が、株主に対して経営状況を報告し、重要な決定について承認を得るために開く会議。取締役の選任や報酬、定款変更などが議題になります。株主は会社の「所有者」として、ここで議決権(議案に対する賛否)を行使できます。ESGの観点では、投資家やNGOから、環境や人権に関する株主提案が出されることも増えています。
株主提案
一定割合以上の株式を保有する株主が、会社に対して株主総会で議論すべき議題を提案すること。気候変動対策の強化、情報開示の改善、人権方針の策定などが提案されることがあります。ステークホルダーの利害を企業経営に反映させる手段の一つです。
(株主総会における)取締役選任議案
株主総会で、誰を取締役に選ぶかを決める議案。取締役は会社の経営を監督・意思決定する立場にあるため、その選任は企業の方向性を左右します。近年は、「気候変動等の課題への対応が不十分な場合に、取締役再任に反対する」とする投資家も増えています。
Net-Zero Asset Owners Alliance
年金基金や保険会社などの「資産保有者(アセットオーナー)」が参加する国際的な連合。投資ポートフォリオ全体の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指しています。
Principles for Responsible Investment(PRI、責任投資原則)
国連が支援する、責任投資(サステナブル投資)に関する6つの原則及びその促進を目的に活動している国際ネットワーク。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
企業や金融機関に対し、気候変動が経営や財務に与える影響を開示することを求める国際的枠組みで、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目で情報開示が求められます。
SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく排出削減目標)
パリ協定の目標(気温上昇を1.5℃または2℃未満に抑える)と整合するように設定された、企業の排出削減目標のこと。第三者機関が目標の妥当性を評価し、認定します。
スコープ1・2・3
企業の温室効果ガス排出量を分類する考え方。スコープ1は自社の直接排出、スコープ2は購入した電力などによる間接排出、スコープ3は原材料調達や製品使用・廃棄など、サプライチェーン全体の排出を指します。
【その他】
ネットゼロ宣言を行っている年金基金はあるのですか?
海外ではネットゼロ宣言を行っている公的年金基金が数多くある。カナダのNGO MakeWayがまとめたページを参照されたい。日本ではGPIF含め、ネットゼロ宣言をしている年金基金は未だない。
【具体例】
- ニューヨーク市年金基金(アメリカ)
ニューヨーク市では、同市の3つの年金基金が、2040年までに運用ポートフォリオのCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。また、気候変動への対応が不十分な運用会社(ブラックロックなど)に対して、運用の見直しや契約終了を推奨するなどの厳しい姿勢を示している。https://esgjournaljapan.com/world-news/49837
- オーストラリアン・リタイヤメント・トラスト(オーストラリア)
同国第2位の年金基金で、2050年までのネットゼロ達成計画の一環として、2024年7月に一般炭(発電用石炭)会社への投資を停止する措置を講じた。https://jp.reuters.com/markets/japan/YTORRS77PVL7LF366NO3T3YS7Q-2024-05-02/
受託者責任
年金基金や資産運用会社など、他人のお金を預かって運用する「受託者」が負う責任のこと。受益者(年金加入者など)の利益を最優先に考え、誠実かつ公正に行動する義務があるとされます。ESGに関しては、かつては「ESG要素を考慮することは受託者責任に反するのではないか?」「受託者責任に反しない範囲でESG投資を行うことは許容されるのではないか?」という議論が展開されました。今では「ESGを考慮しないことが受託者責任に反する」という見解が主流になってきています。
ネガティブスクリーニング
投資対象から、特定の業種や行為を行う企業を除外する方法。例として、石炭火力発電、武器製造、児童労働に関与する企業などを投資対象から外すケースがあります。
ポジティブスクリーニング
環境対策や社会的取り組みが優れている企業を積極的に選んで投資する方法。「良い企業を選ぶ」考え方で、例えば、気候変動対策では、再生可能エネルギーの導入が進んでいる企業や、明確な排出削減目標を持つ企業などが評価されます。
サプライチェーン
原材料の調達から製造、輸送、販売、使用、廃棄までの一連の流れのこと。企業の排出量や人権問題等の社会課題の多くは、自社が直接かかわる事業所ではなく、サプライチェーン上で発生します。そのため、取引先にも排出削減や人権への対応を求めるといった行動が求められます。